石川瑠果の1週間

雪花 涼麗

The First Day

雪がしんしんと降っています。

今日もいい天気ですね。

ウチの名前は石川いしかわ瑠果るか

24歳です。

今も事務作業に追われています。

ウチが所属するのは原田愛好はらだあいこう探偵事務所。

あっちでスマホゲームしてるロングヘアーの子は助手の大田おおたしおり

同い年で幼稚園時代からの幼馴染です。


「栞、暇なら手伝ってよ」

「面倒くさい、あ、電話」


逃げるようになる電話の方へ走っていく。

時代を感じさせるように黒電話。


「はい原田愛好探偵事務所。あ、原田っち」

「原田っち!?」


原田っちとは原田はらだ警部のこと。

原田っち、なんかこう、可愛いんだよね。

親近感が湧くっていうか。

ウチは駆け寄ると受話器に耳を近づける。


『あー突然で悪いんだが、来てもらっていいか?』

「なんで?」

『殺人事件だ。どうせ暇でしょ?』

「否定できない」


頼むから栞、否定して。

今書類の整理中なんだけど、原田っちが居るならしょうがない。


「行きますね」


ウチは栞の受話器をひったくってそう言う。


『うお、朝からうるさいな』

「で、何処ですか!?」

『落ち着け。2丁目の交差点だ。まぁ、その辺行けば騒ぎになってるから気付くだろ』

「は〜い」


電話が切れると、ウチらは即座にジャケットを腕を通さずに着ると向かう。

服装はワイシャツにネクタイ、それからズボンとジャケット。

流石に寒いな。


「殺人事件ねぇ・・・・・・」


栞は謎にワクワクしている。

久々の仕事だからだろうか。

もしくは原田っちに会えるという喜びからくるものだろうか。

ジャケットが飛ばされないように上から2番目のボタンを締めてポケットに手を突っ込みながらウチらは並んで向かった。


 ◇◇◇◇◇


「被害者は稲。数十年前と同じ被害者だ。驚くことに1回死んでいるんだ。そしてその事件を解いたのは安城閑華あんじょうしずかという元探偵だ。死亡推定時刻は今朝の2時〜4時の間。死因はナイフによる腹部損傷。何回も刺されたのを見ると相当恨みが有ったのは当然というべきでしょう」


原田っちは手帳を見ながら言う。

なんか可愛い。

なんかウチには安城閑華という響きを前に聴いたような気がする。

気のせいかな。


「瑠果ぁ、行こう」

「はいはい」


ウチは栞に連れられて現場に来る。

T字路の真ん中で殺られてて、2時間は放置されていたと聴き、驚いた。

確かにこの通りは人通りは少ないけど、それだけで2時間放置は聞いたこと無い。


「この人の最後の足取りは?」


栞、ウチも今訊こうとしたところ。

付き合いが長いから分かっちゃうもんだね。


「午後8時に孤児院に行ったのが最終視認だ」

「なるほど〜。原田t―――警部。任せてください」


おい、栞。

いま原田っちって言いかけただろ。


「任せた」


ウチらはそのまま現場から離れて聞き込みに。

まず行くのは勿論最終視認があった場所に行くのが筋かな。

一人暮らしらしいし家に行っても意味がないからね。


「栞、行くよ」


呼びかけると猫のようにコッチを振り向くとテテテとやってくる。

まず行くのは最終視認のあった孤児院だ。


 ◇◇◇◇◇


「稲さんですか?そうですね〜・・・・・・。今日も寄付に来てくれて・・・・・・。その後少し子供たちと遊んだ後に・・・・・・8時頃に帰りましたね。変わってたのは今日だけなんか寄付の額が多かったことでしょうか?顔も少し青かったですし」


孤児院のトップ、田島さんだ。


「今日も?」

「えぇ。毎日同じ時間帯、7時半ごろにに寄付に」

「へぇ。昨日、稲さんに変なところとかありました?」

「いえ、特には」


あれ?

最終視認って―――――。


「8時半。なにかあるはず」


栞がウチの耳元でこそっと言う。


「ねっ、ウチも思った」


一応一通り聞いたけど、何もつかめなかった。


「瑠果、なんか食べない?そろそろ昼だし」

「いいね。あ、でも安いところで」

「本当にお金にはシビアだね〜。じゃぁ、サイ◯リヤ」

「あ、いいね。いこいこ」


そういうわけでサイ◯リヤにて。


「ウチは半熟卵のミラノ風ドリアで」

「わーたーしーはー・・・・・・。バッファローモッツァレラのピザとー・・・・・・カリッとポテトで」


注文を済ませ、一度整理タイムに。


「まず、孤児院の話。最終視認が異なるも、居たのは確かと」

「それと、そのあと消息は未だ分かっていない。そして事件現場との距離は約1キロってところ?」

「そうだね」


ウチと栞でまとめてる間に頼んだ料理が運ばれてくる。


「「いただきます」」

「ねぇ、瑠果。私いくつか気付いた点があって」

「奇遇だね。ウチも」

「じゃぁ、先に。孤児院から少し北上したところに繁華街があって夜に出掛けるならそこに行ってないというのが不思議。それから、原田っちの死亡推定時刻を真とするなら6時間位誰も通らなかったことになる」

「それな。ウチも思った。特に繁華街」

「次に・・・・・・。仕事場とかに行く?」

「そうだね~・・・・・・。原田っちに訊かないと」


栞はそう言うとスマホを取り出して電話をかけ始める。

じゃぁその間にウチはまとめとこう。


「あ、原田t・・・・・・警部?」


また危なかったね。


「稲被害者の仕事場はどこか聞ける?・・・・・・・・・・・・うん、ありがとー」


ウチは頭に”?”を浮かべながら栞の顔を見る。


「日本赤十字社所属らしいよ」

「へぇ。なんか段々キャラがしっかりしてきたな。貧しい人にお金をばら撒くって感じ」

「言い方よ」


栞は伝票を持って立ち上がる。


「あ、奢ってくれるの?」

「・・・・・・わかったよ。事件解決を健闘します。

「うぐ・・・・・・そこまで言われると悲しいまである」


私はジャケットを羽織ると日本赤十字社に向かって栞と共に歩き始めた。


 ◇◇◇◇◇



「あぁ、稲さんですね。私の同僚で、常に貧しい人を優先に考えるいい人でした。ですが・・・・・・ここ最近なんか落ち込んでいたのでなにかあったのかと」


同僚の田河さんだ。


「と、言いますと?」

「流石に理由までは分からないです。あんまり感情を出さない人でしたから」

「なるほど。ありがとうございます」


栞とウチは話を聞き終わると再度まとめる事に。


「えっと・・・・・・。貧しい人のことを優先に考える人で・・・・・・。あと、最近何かについて悩んでいた」

「後、感情を表に出さない人」

「そうそう」


記憶力はそこそこ自信あるけど、たまにど忘れするから栞がサポートに入ってくれて本当に助かる。

さて、ここらで一つまとめよう。

あ、アリバイとかも含めて。

孤児院の田島さん曰く、稲さんはその日は午後8時くらいまで孤児院に居た。

その後の田島さんのアリバイは子供たちの就寝の午後9時頃まで。

稲さんは普段と変わりないと。

そして同僚の田河さん曰く、優しい人で弱い人の味方を常にしていたらしい。

その日の田河さんのアリバイは会社を出たときが最後。そしてウチが考えるに、この2人の中に犯人がいる、と。

客観的に見るならウチは田河さんの方が怪しく見えている。

だけど変なトリックを使ったのを考えると、普通に田島さんが怪しく見えてくる。


「・・・・・・その顔、何か思いついたんだね?」

「うん。ちょっと栞、手伝ってくれない?」

「いいけど・・・・・・」


ウチは腕時計を構えた。


 ◇◇◇◇◇


「犯人が、分かっただと!?」


声をかけると原田っちがウチらの方に振り返る。


「うん。いま栞が走ってくると思うから・・・・・・」


走ってくるのを確認すると、ウチは簡単に説明した。


「まず、田河さんと田島さんのどちらかだとウチは考えています」

「なるほど」

「それで栞に今確認してきてもらったのは

「人使い荒いよぉ・・・・・・」


後でなんか奢ってあげようかな。


「それで確実にわかりました。田島さんが犯人だとね」

「証拠は?」

「まぁ、最終視認がズレているというのもあると思いますが、他にもいくつか。例えば、普段と変わりないと言っている割には顔が青いだのとボロを出していましたし」

「なるほど。任意同行の証拠には十分だな。サンキュー」


ウチは原田っちを見送った後、栞とともに探偵事務所に戻ることに。

探偵事務所には次の事件を知らせる来客が有るとも知らずに。




≪The First Day was Finishing, And To The Next Story...≫

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