砂礫

 今日もラシェは、砂漠の遥か彼方に祈りをささげている。

 今日もそれを、後ろからエルが見ている。

 黄昏の中で、エルは自分以外の観察者に気づく。

――コールアも、ラシェを見ている……。

 不穏な展開を予感するが、コールアの眼には今までの険がない。

 それよりもあらわなのは困惑。

――あのサルコリの娘は、私よりも強い。

 本人はそれを認めまいが、コールアはラシェを恐れている。

 ふとエルの視線に気づく。

 コールアはいつものように忌々しげににらむ。

 エルはのぞき見がばれたような気分で、気まずくなって視線をそらす。

 多くの女がエルのようにするのは、コールアの方が優れているからだと、少し前までは思っていた——それはまるで、砂ネズミや赤ウサギがツノ蛇から逃れるように、そのようにするのだと。

 ならばラシェは、コールアよりも優れているのだろうか。

 ツノ蛇が、砂ギツネから逃れるように、コールアはラシェを避けている。

 だが、本当にそうなのだろうか。

 ラシェとの一件で、コールアの価値観は根底からくつがえされ、砕かれ、礫となって砂漠に粉々に散り落ちた。

 それをかき集めて再構築するには、ラシェとカサの物語がどのような唄になるのか、それを見届けなければならない。

 ラシェが祈る。

 エルとコールアがそれを見つめる。

 砂漠に陽が沈む。

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