再逢

 冷え切った心を抱いて、カサは邑を離れた。

 祭りの囃子から少しでも遠ざかろうと、おぼつかない足取りでたどり着いたのは、初めてラシェと出会った、あの丘である。

――ああ。

 嘆息する。

 自分はいつまでラシェを引きずらねばならぬのか。

 恋などしたくない、どうでもいいと切り捨てたいのだ。

 いつまでもラシェの事ばかり考えていては、他の人間に迷惑がかかる。

 戦士階級での失態は、そのまま誰かの死につながる。

 もう忘れてもよい頃だろうと、カサは何度も何度も己に言いきかせる。

 なのに、カサはまたここに来ている。


 大地。

 風。

 月。


 その全てがあの時のままにある。祭りの囃子を背中に聞きながらカサは目を閉じ、

 そして、

 そして信じられないものを見た。


 「ラシェ……!」


 そこにいたのは、カサがたえず望み、焦がれ、狂おしいほどに想った一人の少女。

「……カサ……」

 満月の下、堅い大地の上、優しい風が吹く中でカサが見つけたのは、まさしくラシェ、その少女であった。

 ラシェが、泣いていた。

 その涙に濡れた頬。

 嗚咽に握りつぶされた声。

 悲しみに震える指先。

 カサの足元にひれ伏して、ラシェが懇願する。

「お願いします……」

 カサは困惑する。

「……助けて……カサ、助けて……!」


 祭りの夜、ついに二人は再会する。

 傷だらけで立ちすくむ少年と、

 悲しみに打ちひしがれた少女が。

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