二度目

 オレはあの日以来あの道は通っていない。

 

 なんか…なんか思い出しちゃって…色々と。

 

 そして、もうバイクも壊れてしまって乗っていない。

 

 

 

 

 たまにパンダのパンツの夢を見る。

 

 どんどんオレに迫り来るパンダ…そしてびっくりして飛び起きるのだ。

 

 

 パ…パンダ

 

 なんだかパンダパンツ恐怖症になりつつあるぞ?

 あぁ、オレってなんて繊細なんだろう。

 

 普通女の人のパンツみたらラッキーってなるんじゃね⁉︎

 

 なのに…なのにオレってば…

 

 全く…

 

 あ、もしかしたら犯人いたし緊迫した状態でみたからトラウマになったか⁇

 

 

 そんなこんなでパンダパンツ恐怖症になりつつあるが、今は何事もなく平和に暮らしている。

 

 いや、暮らしていたんだ…

 

 数ヶ月前までは…

 

 

 しかーし‼︎

 いきなり平和な日常が崩されつつあるとある四月。

 

 オレは進級して二年生となった。

 

 そこでプチトラブル発生…

 

 

 一年生から同じクラスの向井が、新入生に抜群にかわいい美人がいるからいこうぜと誘ってきたのだ。

 名前は、三野川みのかわレナさんという名前らしい。

 

 まぁ、美人なら行ってみて損はないだろうと断る理由もなくむしろ喜んでついていくことにした。

 

 お散歩に連れて行ってもらえるワンチャンのようにね。

 

 もう、しっぽが生えてたらブンブンだっただろう。

 

 よかった。

 しっぽ生えてなくて。

 

 なんてくだらないことを一人で考えていると、向井が

「あ、ほら!あの黒髪のロングの子」

 と指差す方をみてオレはドキッとした。

 

 …あの黒髪 そしてあの後ろ姿… 

 

 なんか…なんかあの時助けた子に似てる…けど、まさかそんなわけナイナイ…と思っていた。

 

 いや、むしろそうでないことを強く願った。

 

 …しかし、友達と話している彼女の横顔は…まさにあの子だった。

 

 ずいぶんと大人っぽくなっていたが、まだ少しだけあどけなさが残っていた。

 

 まだ、パンダを装着しているのだろうか…

 

 いや、ダメだ‼︎

 

 どうしてもあの子をみるとパンダを思い出してしまう…。

 

 ブンブンと首を振った。

 

「おー、どうしたー?顔真っ赤にして。まさか、惚れた?」

 なんて向井がオレの顔を覗き込んだ。

 

「ば、ばか言うなよ。んなわけねーだろ」

「ふーん。つまんなーい。でもさ、抜群にかわいいだろ?」

 と言いながら向井は、その子をみてウットリしていた。

 

 あぁ、たしかにかわいいよ。

 かわいいし、美人だし。

 

 かわいいも美人も兼ね備えているなんて最高だな…。

 おまけにピアノも上手いんだもんな。

 

 ま、でももうオレの人生にあの子が関わることは、ないだろうと思っていた。

 

 

 しかし…また関わってしまうこととなるのだった。

 

 さらに、自称占い師のおまけ付きで…

 

 

 事件は、すぐにやってきた。

 

 放課後、向井と下校中。

 

「なー、牧田ー喉乾いたから自販機寄ってから帰ろうぜー」

 と向井に言われ、オレたちは裏庭の自販機へと向かって歩いていた。

 

 牧田とは、オレの名前だ。

 

 そう、今さらだがオレは牧田まきた 慶太郎けいたろうという名前だ。

 

 何飲もっかなーとぼんやり考えていると、あの三野川さんが友達とキャピキャピと歩いていた。

 

 ドキッ

 

 きっと向こうは、オレの事知らないけど…なんか一瞬身構えてしまう。

 

 落ち着け…怪しまれないように普通に。普通に。

 

 とにかく冷静を装い歩いた。

 

 

 …

 

 ‼︎

 

「あぶない!」

 

 え⁈

 

 あ、アレは‼︎

 三野川さんに向かってボールがっ‼︎

 

 シュッパッ

 

 ふわぁん

 

 くっ………、まぁとりあえずよかった。

 

 

 

 

「「「「「「おー‼︎」」」」」」

 

 オレはこの一瞬で拍手喝采を浴びた。

 

 何が起こったかって…それは、あの三野川さんに向かって野球ボールが飛んできたので、すかさずオレがキャッチをしたのだ。

 

 したんだけどね…

 

 また三野川さんのスカートがね…ふわりとしてさ…オレうっかり一瞬またパンツが見えちゃったんだよね。

 

 ザ・コアラって文字をさ…。

 

 三野川さんって…

 

 …三野川さんのパンツのチョイスって…

 

 とあっけにとられていると、

 

「すんげーよ!」

 と向井は、言った。

 かと思うとあたかも自分のお手柄かのように、三野川さんに

「お怪我は、ありませんか?」

 なんて聞いていた。

 

 三野川さんは、大丈夫です。ありがとうございますと言い頭を下げた。

 

 なので、オレたちも頭を下げた。

 

 向井は、パンツ見てないみたいだ。

 

 それに、本人もオレがまたパンツを見てしまったことに気づいていないようだ。

 

 

 ホッ。

 

 バレなくてよかったー。

 あっかんべーもされなくてよかったーと一安心した。

 

 …でも、なんかずっとオレたちを見ている三野川さんとお友達。

 

 結構長いこと見られていた。

 

 …ん?

 やっぱりパンツ見ちゃったこと気づかれていた⁇

 

 

 

 でもその日は、それで終わった。

 

 しかし‼︎次の日学校で朝イチ昇降口で靴を脱いでいたらとある女の子がいきなり

「あなた、緑の髪飾りつけている女性に心当たりは?」

 なんて聞かれた。

 

 え?

 緑の髪飾り…って‼︎

 

 オレはその女の子を二度見した。

 

 だって…目の前のまさにあなたが緑の髪飾りつけてるじゃないっすか‼︎と。

 

「えと…オレ何かしちゃいました?心当たりなくて…その何かしてしまっていたならごめんなさい」

 と謝った。

 

 するとその女の子は、

「ふふ、あなた緑の髪飾りをつけている人から好意を持たれるでしょう」

 といいニヤリと微笑んだ。

 

 ⁉︎

 

 え?

 緑の髪飾りつけているって…自分じゃん⁉︎

 

 これって…えと…新しい告白の仕方なの⁇

 

 なんか…斬新な告白じゃね⁉︎なんて思いながらその子の上履きの色を見てピンときた。

 

 あ、この子一年生。

 しかも、三野川さんとこの前一緒にいた子だと思い出した。

 

 えと…何⁇

 

 続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る