第40話 テスト用の夢砂は私が作る!?


「『Perfect Designパーフェクトデザイン』ですって? 懐かしいなぁ。萌恵先輩まだ持っていてくれたんだ……」


 お家に帰って、お母さんに萌恵さんから聞いた夢砂の名前を告げると、懐かしそうに呟いた。


「あれを作るのは自分でも……もう出来ないかなぁ。そのくらい難しかったし。ほんと、あの頃は我ながら無茶ばかりしていたわね。でも話は聞いたと思うけれど、あれは星空空間で自由自在っていう桜花祭の出し物イメージに特化させたものだから、風花たちが目指しているものとはまた違うわよ」


「うん。萌恵さんも『これが答えじゃなくてヒントになるのかも』って言ってた」


「そっか……。一種類の夢砂で、ゲストが思いたい物を自由に選べる……。それがヒントね。でもそんなハードなものでなくてもいい。それなら風花でも作れる……ってことかしらね。確かにあれを作るときの最初の発想はいくつかのコースに分岐すればいいってことだったのよ。自分でわがまま言ってあんなことになっちゃったんだけどね」


「その代わりものすごい反響だったって……」


「それはそうよ。宇宙に関してだったら何を想像してもいいんだからね。リピーターが絶えなかったのよ」


 萌恵さんも笑っていたっけ。あれだけの力を持つ生徒会が、マジカルサイエンス部とドリームエンタテインメント部の桜花祭対決はこれで終わりにしてくれと頼んできたって。


 それを今年度には復活させて思い切り自由にやらせた。生徒会長だけでなく生徒会の面々も覚悟を決めてのことだったんだと思う。結果的に私たちは場所をプールに移したし、遊園地と水族館にコンセプトが分かれたことで、特別教室棟の大混乱は避けられた。だから来年度もという声がとても多かったんだ。


「話を戻すけれど、いくつかのメニューを作ってみて、それをバーチャル経験ができるというなものなら、そこまで難しくないと思う。メニューは少しずつ追加していけばいいと思うから」


 後輩二人のコンセプトは、リフレッシュスポットを学校内に作り上げることだ。だからそこまで激しいメニューは用意しなくてもいいはず。


 週明けにはそのミーティングが理科室で行われることになっている。


 それまでに試作品を作ってみて、実際に経験してもらったほうがいいかもしれない。


 私もお母さんもその意見は同じだった。


「それなら、調合書を書いてまず見せてごらんなさい。それでいいとなったら試作品を作ってみるといいわ。効力なしの夢砂を用意しておくから」


 そこで、モノは試しなのだからと、三種類のシチュエーションを考えて、お母さんに見せてみる。


「うん、最初はこんなものでしょうね。時間としては三十分くらい?」


 夢砂は一欠片に込められる魔法の容量が決まっている。だからお母さんが昔作ったあの夢砂は分岐が複雑に組み込んであったから、ユーザーが自由に自分の世界に入っていられるのは約三分が上限だったという。それもあってみんなリピートが続出したのだけれど、夢砂を使わなければ魔法使いがその役目を果たさなければならない。二日間で三千人ものお客さんを捌くことは無理だ。



「風花のこのアイディアなら、三十分は余裕だと思うし、まだあと何種類かなら追加できるかもね。とりあえず持続時間は短くていいから、イメージを込めてごらんなさい」


 お母さんに教わりながら、夢砂試作用の小さなフライパンを温めて、そこに何も効力を入れていない透明な夢砂のもとを入れていく。


 そこに私の魔法でイメージを書き込んでいく。夢砂の調合書は必須ではないのだけれど、私みたいにまだ半人前だったり、お母さんでも集中したり間違えることがないように調合書を見ながら作ることが基本だと教えられている。


 効能分岐の少なさと、効果時間の短さもあって、出来上がった夢砂は、少し濃い目の青。それでも反対側が透けて見える。


 お母さんが手をかざしてそれをテストしてくれた。


「うん、こんなものかしらね。大丈夫。これを使ってアイディア提案してみなさいな」


 それを袋に入れて学校に持っていく荷物としてしまう。


 明日のミーティングでみんなはどんな反応してくれるだろう……。

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