第9話 手持ち花火

花火寄せ絶やさぬよう火を移す

君から我へ我から君へ


夏の夜。君と2人で手持ち花火をしたね。

イタズラな風が、何度着けてもロウソクの火を吹き消すから。

笑いながら君は、煌々と輝く花火の先を私のまだ暗い花火の先へと寄せた。


しばらくの沈黙。


2人が見守る中、私の花火は少しづつ燃え始める。チラチラと赤い火花が散り出す。


勢いよく吹き出した花火を慌てて離すと、君の花火は終わりを迎えてしまう。

次の花火を、君は寄せてきて。今度は君の花火へ、私の火を移す。


まるで恋心のようだ。絶やさぬように。絶やさぬように。美しい花火を。恋心を。

それだけの事で、心の中まで赤々と光輝く。いつまでも。いつまでも。


たとえ花火のように、恋が終わりを迎えても。


この心の中の想い出は、消えないよ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

話と恋とそして日常の短歌 やまなみ @yama_nami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る