第4話
ジェイド・カスターニュにとって、ショコラとはなにか? と聞かれれば「血液」と答える。無論、血液があんなドロドロとした液体であるならとっくに息絶えているわけだが、彼女は許されるなら、歯磨きだってうがいだって薬だってショコラを使用したいと思っている。マリーアントワネットと思考回路が一緒。
ショコラの本場、ベルギーはブリュッセル出身。オランダ語・フランス語・ドイツ語が公用語のこの国。いつの間にか全部話せるようになっていた彼女は、聖ルカルトワイネ学園からの交換留学生として、姉妹校のパリ、モンフェルナ学園にこの秋からやってきた。目的はひとつ。
世界最高峰のパティシエ、およびショコラティエ集団『ルレ・デセール』に加入すること。そしてトップに立つこと。そして、最先端の店で働くこと。そして色々なイベントなどに呼ばれて、世界的に有名になり、自分の名前を冠した店を持つこと。そして、ショコラの流行は自分から世界に発信すること。全然ひとつじゃない。そのために、パリのショコラを堪能しに来た。
フランスにおいて、ショコラティエになるにはしっかりと、高校卒業の資格、バカロレアを取得しなければならない。交換留学ではあるが、パリで働くならばそのまま職業リセをこちらで卒業したい。そして職業適任証、CAPを取得。
ベルギーも悪くないのだが、やはり世界的な首都であるパリの情報には勝てない。最先端は、ここを根城にする一〇から一五の店が作り出す。ワンテンポ置いてからベルギーにやってくる。それじゃダメだ。ここで技術を盗み、さらに昇華させて、自分こそが最先端になる。
野心はある。努力もしている。だが、そんなのは当たり前で、その程度なら埋もれていく厳しい世界。ならなにか、自分はこうだ! というインパクトを残せる、そんななにかが欲しい。
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