第9話到着

近くの町まで歩いて行った。子供の足なので少し遠かった。


さて、着いたわね。リエルが腰に手を当てて言った。ちょっとカッコつけの女の子だと思った。外見は今はおばあさんだけれど。


なに? 私の顔に何か付いてる?

ミカ、そんなに見つめないでよ。ちょっと照れてる仕草が可愛い。


ううん付いてないよー。そう言って私は町を見た。少し寂れてる感じのある町。


国とはまた違うんだろうなと思った。


歩きながら私は首を振りながら町の景色を見た。バザーの様なテレビで見る、果物売りの野菜店の様だった。


ほら見なさいあれよ、あの乗り物に乗るの!

リエルが大きな声で指を差して言った。


私は驚きの声をあげた。何あれは、ゾウ!

だけれど身体がウマ。不思議な生き物がいっぱいいるなぁと感じた。


凄いねゾウとウマだよ。と私はリエルに伝えた。


ウマゾーの事? ゾウとウマってど言う事?とリエルに聞き返された。


私のいる世界だとああ言う動物いないの。ゾウとウマが合体してウマゾーか。私は少し笑みがこぼれた。


そうなのね。私あなたの世界知らないから、いつか行ってみたいかも。とリエルが笑顔で言った。


うん。リエルは私の世界行けないの? と疑問を口にした。


行けないわ。あなたの世界に行けるなんて凄い魔法使いね。とリエルが答えた。


そうなんだ。全員が行けたら、私の世界も、魔法使いだらけになっちゃうもんね。

と私は笑って言った。


それも面白そうね。とリエルが言って、すみません。

これに乗せてもらえますか?

セレンティスまで。とリエルが聞いた。


構わないよ。乗りな、とターバンをつけたおじさんが言った。


いくらぐらいかかるのかな?私お金ないよとリエルに説明した。


お金? 魔法でアイテム作れるから、お金の心配しなくて良いよ。いっぱい持ってる。とリエルは微笑みながら言った。魔法使える人は少ないから。


そうなんだ。お金の心配しなくて済むのは、助かる。息を吹いて胸を撫で下ろした。


よろしくな。といきなり何処からか声が聞こえた。驚き周りを見回したが、誰もいなかった。


お嬢ちゃん何驚いてんの? ここだよと声の主人を探して、耳を覚ましてその方向を見た。


ウマゾーだ。ゾウの顔が喋っている。私は驚きのあまり言葉を失った。さすが魔法の国、動物も言葉を喋れるのね。


なんだい挨拶ちゃんと出来ない子かな?

ゾウに言われてしまった。びっくりしつつも、快く返事をした。


よろしくお願いします! ウマゾーさん。顔を赤くして私は言った。


セレンティスに行くぞ、早く乗った。とターバンおじさんが急かした。


私は馬車の様なところに乗るんだよね?

とリエルに聞いて頷かれたので、安心した。ウマゾーには流石に乗らないで済んだことに安心した。



ウマゾーが動き出すと、その速さに圧倒された。一歩一歩の蹄の音と共に、土埃を撒き散らしながらも、風を切るような速度で進んで行く。

馬車はそれほど、揺れ動くことなく、まるで空を飛んでいるような感覚だった。


凄いねーこのウマゾー私は目をキラキラさせて早いけど、馬車が揺れないから、景色を楽しめるよ。


そんなに、はしゃがないの。ウマゾーよりこの馬車の作りが良いのよ。リエルが身も蓋もない事を言った。


大人だなリエルは。そう思い、私も大人の様に物思いに考えた。


町の景色が目の前を流れていく。遠くの山々が癒してくれる。緑だけじゃなく青っぽくも見えて、その山には、色々な動物達がいるんだろうなと、想像力を掻き立ててくれる。


近くの花々が香りを嗅ぎたくなるほど、綺麗に咲いていた。


5歳くらいの子供達が遊ぶ姿は、本当に楽しそうで、自分もその時の事を思い出す。


商人の元気な声が馬車の音にかき消されけど、それでも伝わってくる熱気。


私はこの景色を一瞬一瞬を胸に刻んだ。


蹄の音が止んだ。それはセレンティスに到着を知らせる事の様に思えた。

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