第7話 7日目

7日目

今日も同じ時間で、同じ場所で倒立をして、すごく目立っていたのですぐに見つかった。


「萌花さんのパンツは俺が守ります」


「何か用?」


慣れ過ぎたのか、もう俺の発言はスルーのようである。


「あ、今日はこちらの服をお召しいただけたいです」


「またなの? できれば、いやよ」


「お父様からです」


「またパパからなの」


萌花さんは少し呆れた様子でこちらをにらみつけてくる。


「本日は浴衣です!」


「わぁー、可愛い!」


目を見開き、きらきらさせている。

よっぽど浴衣を気に入ってくれたようだ。


「そうでしょ、用意するの大変でしたよ!」


「は! つい浮かれてしまったわ、ちょっと剣介!」


「名前読んでいただきありがとうございます!」


まさか名前を覚えてもらえるだなんて嬉しい。


「まぁ着るわ」


また、正面に向き直り、その大変お美しい姿でトイレへと向かっていった。

ものの5分もすると、浴衣を着て、またしても堂々とした態度でやってきた。

物言わず、パンツも見せず、逆立ちをする。


「ねぇ、なんでパパはこんなことするの!」


「それは口止めされております」


それについては萌花さんのお父様から話したいだろうから俺は何も言わない。


「それは萌花がやるって言ったからだろう!」


「パパ!」


タキシードをきた恰幅はよく、見るからに金持ちでダンディなおじさんは萌花さんのお父様である。


「本当に逆立ちをしているようだな」


「どういうつもりなの! こんな男と手を組んだり、可愛いけどコスプレを着るようにリクエストしてきたり、何を企んでいるの!」


「おまえのためだ。私としては駅周りが活発になったりで思いもしないいいことが起ったりで嬉しいことばっかりだ。それに守るんだろう、約束」


「それは当然よ」


約束というのは1ヶ月逆立ちを続けるというもののことである。


「ふん、あたしは負けないわよ、邪魔する気があるんだろうけど」


萌花さんのお父様は不敵な笑みを浮かべている。


「あのお父様のご要求はなかなか大変だと思いますけど」


「かかってきなさい! あたしの凄さを思い知ることになるわ」


「楽しみにしている」


萌花様のお父様はとても満足そうに立ち去っていた。


「なんとしてもやり抜いてみせるんだから!」


「どうしてそこまでそこまでこだわるんですか?」


「それは………」


顔を赤くして、もじもじしている。


「大丈夫です、言わなくても」


「え、え、えっとね」


「はい」


萌花さんはこちらを上目遣いで恥ずかしそうに見ている。


「一応、逆立ちするっていきなり飛び出しちゃったし、突っ走って何も考えてなかったし、いつまでやるかは決めてなかったし、人様への影響も考えてなかったから、あんたがサポートしてくれて、少しぐらいは感謝してるわ」


「………」


「ありがと」


うれしさと驚きがこみ上げて、俺は呆然としていた。


「今日はもう気が乗らないわ、じゃあね」


萌花さんは一瞬で今日も走り去った。


お父様の用件は同じように服に関する者ばかりであったので、ツイッターの管理、写真集の第2版発行など自分のやるべきことをやるために家に帰ることにした。自分の計画の課題は少しずつクリアしていけば、焦らず、ゆっくりやることにしていくことにする。


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