第6話 6日目
今日も同じ時間で、同じ場所で倒立をして、すごく目立っていたのですぐに見つかった。
「萌花さんのパンツは俺が守ります」
「で、今日は何なの?」
逆立ちの美少女が変態発言をする自分を前にフランクに会話している光景もシュールだなぁと一瞬感じたが、用事を済ますことにする。
「あ、こちらの服をお召しいただけたいです」
「いやよ」
「お父様からです」
「パパからなの!」
お父様からのご指示である。
家に帰ったらLineで用件が書いてあったので急いで実行して用意したモノである。
「この服を着れないのかって」
「仕方ないわね! やってやるわよ!」
「可愛いじゃないですか? 何が問題なんですか?」
「メイド服をなんで着なくちゃ行けないのよ!」
指示された用件は、メイド服を作るというものである。
ほぼ徹夜であり、昨日の残り1日がこれにほぼ費やされたが、ちょっと頑張った。
「無駄に可愛いわね」
「そうでしょう! ちなみに、俺が作りました!」
「そうなの、意外とセンスあるわね」
「俺が、作りました!」
「うるさいのよ、いちいちアピールしないでよ!」
はぁーと大きなため息をつく萌花さん。
逆立ちから正面に向き直る。
改めて清藤宮萌花が美少女だということを認識する。
瞳は透き通ってきれいで、コスプレ映えしそうなナイススタイル。風で揺れ動く黒上ロングヘアもきれいである。良いとこのお嬢様という雰囲気が体現されているなぁとその美貌に見ほれてしまう。
俺だけじゃなくて今日も点々と存在するギャラリーもそうである。
「お父様からのご命令で、しかもかわいい服だからね。もったいないし、しょうがないから着てあげるわ」
「お気に召したということで?」
「はぁ、このフリフリした可愛い服を着たいなんて思ってるわけないじゃない!」
「あ、どうもほめていただきありがとうございます」
「ふんっ」
もう俺と話をしてもしょうがないと思ったのか、トイレへと多くのギャラリーも気にせず、向かった。一応、SPさんが守っているのでもみくちゃになることはない。
かつかつ。
スカートを両手で持ちながら、恥ずかしがる様子はなく、こちらにまっすぐにむかってくる。全く観衆は気にせず、堂々と歩いてきた。
「で、今度こそスカートさらしで、パンツは見えないんですかね?」
「公衆の面前でそんなはしたないことをこの私がするわけないじゃない!」
さっ。
逆立ちする瞬間すら絶対領域は発動された。
「結局、スカートさらしは起らないのか! パンツは見えないのか!」
「全く、バカね、見えるわけないでしょ」
俺だけではなく、ギャラリーも俺と同じように嘆いているモノがいた。
男は皆、一心同体。
「さて、写真も何枚かとってと」
「ちょっ! 勝手にとらないで」
「では、これで! よろしく、にゃんすけ」
「にゃあ、にゃあ」
まるでにゃんすけは呼応するように鳴く。
「はぁ、あたしが何のために逆立ちしているのか分かってるの?」
「分かってますよ。でも、俺にだってやるべきことがあるんです」
「本当覚悟しなさい、メイド服着るぐらいなんてことないんだから!」
俺はその様子に少し満足して、今日も明日のために早めに退散することにした。
『萌え~』
ギャラリーは大盛り上がりで、駅の活気も上がっていた。
俺のスマホがピロリンと鳴った。
『次のも頼む』
お父様からLineの通知がまた一件入っていたのだ。
こんなこともあろうかと、俺は用意していた物があるので、それを取りに行くことにしたのだ。
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