第2話 2日目
2日目。
同じ時間で、同じ場所で倒立をして、すごく目立っていたのですぐに見つかった。
「萌花さんのパンツは俺が守ります」
「会ってそうそう、また変態宣言なんてやめて」
「スカートの君が一生懸命、倒立しているんだ、俺がパンツを守るよ」
「うるさい、黙ってなさい」
大きな声で萌花さんに怒られた。
「だから、僕だけにそのパンツを見せてください」
俺も駅でパンツがどうかというのはおかしいことだけは分かっている。
「どうしてそうなるの? あなたは!」
「本気だからです」
「ただの変態じゃないの!」
「僕は変態じゃありません。あなたと同じ変人です!」
「どっちでもいいわよ! さりげなく、あたしまで巻き込まないで!」
「あなたは相当変わってると思います」
「そうそう、スカートしながら駅のホームで逆立ちして、パンツ見せる気満々で変わってるわね………って、やかましいわ!」
「まさかの乗りツッコミ!」
「ち、ち、ちがうわ」
少し頬を赤らめている。
「あんたといると少し変だと思われちゃうわ!」
「もう遅いですよ」
「うるさい、もうあたしもう帰るっ!」
そうして、くるっと正面に向き直った。
改めて、正面で見るととてつもない美少女だった。
「ちょっと、今日のパンツの色は………」
「セクハラで訴えてやるんだから」
「もう駅員が苦情を訴えてられていますよ」
「え?」
そう訴えると、面倒そうな目で訴えてくる。
人の視線のことを少し考えれば、当たり前なことだけど、あんまりそういうところに頭が回っていないらしい。
「え、そうなの?」
「いや、ふつー、目立ちますよ、ツイッターとかで、拡散されていましたよ」
「そんな、肖像権の侵害よ」
「パンツが見えない倒立が話にならない方が無理だと思います………ほら、見物人」
「うそっ! 私のファンなんなのかな! まぁ私可愛いからね………。いやいや、違うわ。見られたいわけじゃないのよ」
「見るなって方が無理ですよ」
「あれ? でも、今日は駅員来ないのね、意外ね」
駅は俺と萌花さんと一部の見学人以外はおらず、閑散としている。
「俺が頼みました」
「え、うそ。ずいぶん、気の利いたことしてくれるね、あなた何者?」
「あなたのパンツを守るモノです」
「違うでしょ、セクハラ野郎」
俺の素直な回答に対して、不満げに彼女は頬を膨らませる。
「いいですか、スカートの中にはロマンがあるんです。それに個性もある。純白な白は純潔さの中にあると同時に清楚でそれでいて若干エロティックな感じがあるから見ただけでも罪悪感があるが、それと同時に神秘を見つけた感じもする。そして、黒は妖艶さを感じ、その色は実は俺を誘っているんじゃないかという妄想を駆り立て、大人の色気を無意識に自己アピールしようとしていて、それを鉄壁のスカートの中に隠し持つことでより魅力を倍増させようとする策士的なずるがしこさも感じ、それを見ることで大人の階段へ上り未知の世界を開拓したような喜びを感じる。そして、赤は…」
「うるさいのよ、ド変態!」
彼女に自分の素直な思いを告げただけなのに、怒られてしまった。
まだしゃべり足りないよ、赤、青、熊さんパンツなどいろいろ思いがある。
「こんな様々な可能性を駆り立てるスカートに隠されたパンツのことを考えたら夜も眠れない」
「こいつ、やばいわ!」
萌香さんは目を大きくして、驚いた様子を見せる。
え? 俺やばいの? 単に男の持つ一般的な欲求に正直なだけだよ。
「そういや、駅員さん、なんで俺が必死に頼み込んでるとき、マジ白目だったなぁ、なんでだろう」
「だいたい想像できるわ」
今度は呆れたような目をしている。
ころころと表情が変わって面白い子だ、しかも可愛い。
「わざわざ柔らかマット完備で逆立ちしてたけど、疲れないですか?」
「私がこんなことで疲れるわけないじゃない!」
誇らしげに胸を張る。
倒立にはよっぽど自信があるようだ。
「萌花さんも大概だと思うけどなぁ、可愛すぎるから気にならないのですが」
「あら、どうも。今更ナンパのつもりかしら、あんたへの印象はマイナス100点だから何があろうとお断りだけど」
「萌花さんも第一印象、常識外れで普通マイナス100点ぐらいなんですが」
「うっさい!」
顔が真っ赤だ。
「俺は萌花さんが可愛いから逆に1億点はあげたいですね」
「うるさい!」
また、顔が真っ赤だ。
どっちも表情が怒ったままで照れてるのかも分からない。
「もうあんたとは話したくないわ」
「ちょっと今日は話があるんですよ」
「何よ」
腕を若干おもみのありそうな胸の下におき、こちらを横目でじっとにらんでくる。
「萌花さんのやっていることに協力したい気持ちは本気なんです」
「………」
口をむっとして、こちらを横目でにらみ続けている。
こちらの話の多少聞く意志はあるようである。
「だから、いつかは俺にだけパンツを見せて欲しい!」
「結局、あんたはエッチなのよ、あんた、本当言ってることはむちゃくちゃよ!」
「だから………」
「もう帰るっ!」
一瞬で駅を走り去られてしまった。
自分の決意を形にはしつつあったが、萌花さんに自分の一番言いたいことを告げることはできなかった。俺は仕方ないから、駅員さんと通じて知り合った人と話をしてから、自分のしたいことの準備を進めることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます