第6話 妻への葛藤
結婚してから、新婚生活というのは、どれくらいまでをいうのだろうか? 二人はラブラブの家庭を築ければ、何年でも新婚生活であってもいいと思っていた。
梨花の方はどう考えているのか分からないが、洋二の方としては、
「三年くらいが妥当ではないかな?」
と思っていた。
そういえば、昭和の頃のデュエット曲に、
「三年目の浮気」
というのがあったっけ、
「三年目の浮気くらい大目にみろ」
という、そんな歌詞だったような気がした。
ということは、
「結婚して三年も経てば浮気もするくらいになる」
ということなのか、あるいは、
「三年も経てば、いいこと悪いこと、それぞれに、変化が出てくる時期だ」
ということなのかというのを考えさせられる。
まあ、まだ新婚の今考えることではないので、とりあえず、新婚生活を謳歌するのが一番だった。
それぞれの家庭にもちょくちょく顔を出していた。
特に、奥さんの実家にはよく顔を出していたのだが、相手のお父さんが、洋二のことを気に入ってくれていて、それが嬉しくて、
「ちょっと実家に行ってくる」
という妻にくっついて、
「じゃあ、俺も行こう。送って行ってやるよ」
と送り迎えを餌に、自分もノコノコついていったのだった。
実際に居心地はよかった。義母が、おいしいものをいつも用意してくれている。梨花が学生の頃には、料理教室に通っていたというだけあって、料理の腕前はすごいものだった。それを思うと、実に嬉しく感じ、
「お義母さんの料理は日本一ですね」
と、笑顔でお世辞を言ったが、嫌味に聞こえないのか、本当に喜んでいる義母が、羨ましくもあった。
「俺は、こんな家庭の暖かさを夢見ていたのかも知れないな。梨花と結婚できたのは、本当に幸せだ」
と感じていた。
何といっても、この父親と母親に育てられたのだ。おおらかに育ったのは間違いない。さらに彼女には相手に癒しを与える力がある。どのあたりが癒しなのかを口にするのは難しいが、一緒にいて楽しいと思えるのが最高だった。
今まで、楽しいと思っていても、心のどこかで不安の煙が見えていて、それが、どう自分を操るのか、それが不安をさらに膨らませる要因だったのだ。
「見えているようで見えないものが存在している」
この思いが絶えず、洋二にはあったのだ。
それがいつからだったのか、ハッキリとはしないが、少なくとも、恭子と付き合い始めた時には最初からあったような気がする。それを思うと、考えられるのは、大学生の三年生あたりからの、自分の人生が順風満帆ではないと感じた時だったのではないだろうか。それ以前のことはハッキリと覚えていない。きっとそのあたりに、自分の人生のターニングポイントがあったに違いない。
人生のターニングポイントというのは、一度や二度ではない、何度でもあるものであり、人によって、その数にかなりの差があるのではないだろうか?
そのことを考えてみると、確かに恭子との間には、最初から無理な空気が充満していたような気がする。
まわりからは、
「あいつらはどうせすぐに別れるさ」
と言われていたのかも知れない。
それを無理に押し通して、結果、玉砕する形になった。
しかし、自分としては、これ以上の努力はなかったと思う。本当であれば、一か月も持たずに別れていたのかも知れないが、一年近くも持ったというのは、二人の気持ちが繋がっていたといよりも、お互いに不安定で、誰かにすがりたいと思っていると、目の前にいるのがそのお互いということで、別れるに別れられないというそんな関係だったのかも知れない。
押し殺していた感情が最後には爆発することで、本当に立ち直ることができるのかと思うほどい悲惨な状態だった。
しかし、
「捨てる神あれば拾う神あり」
とはよく言ったもので、
「捨てる神が恭子であれば、拾う神が梨花だった」
ということだ。
別れた恭子の方も、風の噂に聞いたところによると、
「あれからすぐに婚約し、結婚した」
というではないか。
洋二はそれを聞いて、
「まさか、二股をかけていたのか?」
という怒りがこみあげてきた。
その噂を聞いたのは、別れてから半年後のことだった。恋愛であれば、普通なら考えられない。ただ、話としては見合いだということなので、
「よほど、まわりからも、結構を焦っているように見えたのか、俺と別れたことで、憔悴しきった恭子に、男をあてがったのか、どっちにしても、自然に表れた相手ではないような気がする」
と思った。
そういう意味では、自分と梨花の出会いのようなことではなかったのだろう。
自分が梨花との結婚にずっと戸惑っていたのは、恭子のこの話を聞いたからかも知れない。
「俺は、あの女のように、焦って結婚なんか、絶対にしないぞ」
という思いがあったからだろう。
もっとも、これは言い訳でしかなく、少しでもタイミングを逃し、結婚が後ろにずれていくと、次第に踏み切る勇気に躊躇いが残り、なかなか結婚に踏み切れなくなってしまうということを感じていたに違いない。
結婚をしたいという感情は、もう恭子の時に終わっていた。
まるで爆弾が爆発した時に、真っ黒な炭になってしまった自分の気持ちは、結婚という言葉を嫌悪するようになっていた。
「結婚とは人生の墓場と言われるが、まさにその通りだ」
と、結婚する前から悟ったというのは、そういう気持ちがあったからに違いない。
あれから、恭子がどうなったのかは誰からも聞いていない。
結婚したという話は。別に聞きたくもなかったが、おせっかいな人が話してくれたのだ。その人はただの興味から話したのだろう。洋二がどんな反応をするのかを楽しみにしていたのだろうが、案外、反応が薄かったので、肩透かしを食らった気になっていることだろう。
洋二としては、
「ざまあみろ」
という気分でいたに違いない。
「俺にそんなくだらないことを言った罰だ」
と言わんばかりであった。
そんなやつからのウワサを聞いたことで、
「もう、恭子のことはどうでもいいんだ」
という気持ちになった。
いや、それが本心だったのかどうか、きっと死ぬまで分からないと思っている。なぜなら、その後も、恭子のことを思い出すことがあったからだ。
ただ、その時は結婚してよかったと思っている。自分が結婚したことで、家族も喜んでくれている。それは、恨みとは別の次元の問題だと思っている。
看護婦の仕事は、続けていた。
「私、結婚したら、専業主婦になろうかしら?」
と言っていたが、病院はそんなに忙しくないところに変わり、
「子供ができてから、どうするか、また相談するね」
と言っていた。
洋二の方も、システムの仕事を忙しくこなしていたのだが、いよいよ彼の会社にも、吸収合併の問題が絡んできて、人員削減などのリストラが叫ばれるようになってきた。
実際に、こちらの会社が大きな会社に吸収されるということになったようで、そうなると、システムの仕事は、用済みということになる。
ただ、最初は、合併に向けてのシステム統合のため、忙しく立ち回っていた。
残業も余儀なくされたが、それでも残業手当はしっかりもらえるということで、皆張り切っていた。
実際に、向こうの本社とを行ったり来たりしていて。最後には、相手の本社にずっと常駐するようになった。
ほぼ半年間、向こうの会社にてのシステム統合のみの仕事に携わっていて、やっと終わって、出張から戻ってくると、一週間もしないうちに、自分よりも若手社員に、
「本部に転勤」
と言われたのだ。
やっと戻ってきたと思えば、今度は転勤。彼らがどうするのかと思っていると、
「さすがにやってられない」
と言って、皆辞めていった。
一気に四人くらいが退職していったことになる。
洋二もさすがに怒りがこみあげていた。しかし、自分も人のことは言っていられない。
「川崎君には、経理部に行ってもらう」
と言われたのだ。
最初に支店から、本部のシステムに配属になった時とは事情が違う。
あの時は、支店で泣かず飛ばずだった自分を本部で引き揚げてくれたのだ。
「支店の業務を知っている若手社員がほしかった」
というのが理由で、そういう意味で、協力店が瞑れたおかげで、自分があぶれてしまったことが功を奏したというべきであろう。
タイミングがよかったというべきか、幸運だったのだ。
しかし、今回は違う。
せっかく、システムで、やっと自分の実力を発揮できるようになり、
「プログラム開発が、三度の飯よりも好きだ」
と言っていた自分が、今度は経理部になどどういうことだと思ったのだった。
システム開発は、
「何もないところから自分で新たに作り出す」
ということが子供の頃から好きだった自分にとって、これほど嬉しい仕事はなかった。
「天職だよな」
と感じたほどで、今度の経理部というと、誰かが作った実績の数字を合わせるというだけの、後追いの仕事に思えて、嫌だったのだ。
何といっても、
「システムは専門職で、自分にしかできないが、経理なんて、誰にでもできる仕事だ」
と思い込んでいたことから、どうしても、経理部に馴染むことができなかった。
本当は、経理というと、
「数字が表しているのは、会社のこれからを暗示させるものなので、経費や損益を見て、先を企画することは経理の仕事でもある」
と言えるのだろうが、自分には、システムという天職から切り離されたという意識しかなかったので、真面目に仕事をする気はほとんどなかった。
しかも、最初の頃の自分に対しての教育は、女の子だったのだ。
「川崎さん、そんなことも分からないんですか?」
と言われたり、何も分からないので、トンチンカンなことを言ってしまうと、呆れられるという、正直、耐えられなかった。
しかし、何とか覚えることはできたのだが、それも、
「しょせんは、誰にだってできる仕事だからだよな」
と思ったことを証明しているようなものだった。
とりあえず、業務を覚えてから、実際にやってみて、
「自分に合う仕事なんだろうか?」
と考えたところで、再度、進退を決めようと思ったのだ。
実際に仕事をやっていると
「とりあえず、もう少しやってみるか?」
と思いながら、実は休みの日には、職安に出かけていた。
だが、なかなか職が見つかるわけもなかったので、今のところ、もう少しこのままと思っているうちに、一年半が過ぎたある日だった。
「川崎君、本部のシステムに転勤命令が出たよ」
と上司が言ってきた。
それこそ、
「何を今さら」
である。
どうやら、本部にあれから別の人が呼ばれたのだが、その人たちも辞めていったという。たぶんであるが、
「吸収された会社の社員として、冷遇されていたのではないか?」
というのが大きな理由で、そんな状態で、
「何を好き好んで、転勤してまでいなければいけないんだ?」
と感じたことで、辞めていったに違いない。
ただ、考えてみれば、システムの仕事を天職だと思っていた自分に、システムからお呼びが掛かったのである。
だが、考えてみれば、何人か優先順位があり、結果として残った自分にお鉢が回ってきたというだけではないか。
「こんなの、ハイハイって行ったとすれば、俺のプライドなんかないも同然だ」
と思ったのだ。
すでに、結婚して三年が経っていた夫婦に、最初の苦難が訪れたというところか。
三年目なので、
「そろそろ子どもがほしい」
ということで、梨花はすでに妊娠中であり、そろそろお腹も目立ってきた頃だった。
そんな状態の奥さんにどういえばいいのかと思ったが、言わないわけにもいかず、相談してみると、案外あっさりと、
「私、他の土地に行くなんて考えられないわ」
というのだった。
失業してしまうことが一番のリスクであったが、このまま転勤すると、自分のプライドがズタズタになり、吸収された会社の社員としての今までの前例者と同じになりかねないと思うと、
「どっちもどっち」
だったのだ。
「進も地獄、戻るも地獄」
という。いわゆる、
「つり橋の上での立ち往生」
のようだった。
結局、夫婦で話し合ったというか、嫁の結論として、
「転勤はしない」
ということになり、そのまま退職願を書いて、会社に提出したのだ。
あっけない終わり方だった。
次の会社が決まるまで半年ほど掛ったが、その時期に失業した人は、なかなか仕事がなくて、大変なようだった。
職安にも登録し、人材バンクのような会社にも登録し、紹介を待っていたが、半年間で一回も紹介が来なかったというのが、ほとんどのところで、条件がなかなか合わないというよりも、本当に職がないのだと感じた。
それでも、新聞記事を見て応募した会社に何とか入社できたのはよかっただろう。
その時に、
「も二度と就活はしたくない」
というのが本音だった。
まだその頃はギリギリ正社員防臭が多かったが、それ以降というと、正社員というよりも、非正規雇用が主流になってきて、人材バンク的な会社が、人材派遣会社となり、正社員の応募というのはなかなかなかった。
ちょうど、正社員募集の最後の時期くらいだったのではないだろうか。
再就職できた時には、すでに子供は生まれていた。
「やっとこれで、子育てに専念できるね?」
と言って、梨花をねぎらったものだった。
ただ、就活をしている時は、それどころではなかった。洋二は家にいるのがつらかった。何をしていても。気が休まることもない。テレビを見ていても、本を読んでいても、どうしても就活のこと、これからの人生を考えたうえで、梨花を見ると、まるで上から目線で見られているようで、それに対して、自分が委縮してしまっているのが情けなかったのだ。
何といっても、
「お前が、転勤は嫌って言ったんじゃないか」
と言いたくなる自分を抑えている。
自分としては、どちらでも地獄に変わりはなく、自分だけでは決めかねていたので、嫁としての梨花の意見を尊重することで、自分の決断力のなさを正当化しようと思ったのだ、
どっちに転んでも、決めたのは自分ではない。
そんな気持ちが強かった。
しかし、
「子供のためを考えると、転勤したくないという嫁の気持ちも分かるというものだ。ということは、俺は嫁が何をいうのか分かっていて、敢えて聞いたということか? これじゃあ、確信犯ではないか」
と感じたのだ。
あとから思えば、
「梨花に悪いことをした」
と思ったが、決めさせたことが、それ以降、ぎくしゃくし始めた二人の間の溝を、最後まで埋められなくなった原因になろうとは思いもしなかった。
結局、優柔不断な自分の決断のなさが、破局を迎えたのだった。
就職はなかなか決まらない。
分かってはいたが、これほどまでとは思わなかった。
ついつい弱音を吐きたくなる。
「俺の就職先が決まらなかった時は、お前に働いてもらわないといけないかもな」
と、少し低い声でつぶやいた。
これは完全に、恫喝に近かったのだろうが、梨花もさぞかしビックリしたことだろう。まさか、洋二がこんなことを、こんなに低い声でいうなんて、想像もつかなかったに違いない。
すると、梨花はあからさまに嫌な顔になり、
「そんなことできるはずないじゃない」
と、完全に敵対した態勢を取っていた。
それを聞いて、
「しまった」
と思った洋二だったが、梨花には自分の恫喝が相手をどれほどビビらせるのかという自覚はなかったのだ。
このあたりから二人はすれ違うようになった。会話がなくなっていったのだ。
気まずいのは分かっていたが、お互いに意地があるので、謝ることはしなかった。
そのうちに、会話のない状態が今に始まったことではなく、前からこんな状態だったような気がしてきた。普段であれば、幸せを感じるようなシチュエーションなのに、まさか負のスパイラルに陥る呪文のようになっているとは思ってもみなかったのだ。
そして考えたのは、
「梨花は、本当にまずいことになれば話をしてくるだろう。だから、会話がないのは、いい傾向ではないか」
と思うようになった。
完全に、
「便りがないのは良い知らせ」
ということを、自分なりに拡大解釈をしたのと同じことだった。
しかし、実はそうではなかった。相手が女性だからである。
女性というと、何かを決意する時、重要なことであればあるほど、一人で悩むものだ。そして、それを相手に告げた時には、もうどうすることもできないほどに固い決意をもって相手に話す。そんな生き物だというのだ。
卑怯といえば卑怯だが、こちらも、相手の気持ちを勝手にいい方に解釈して、話をしようとしなかったのだから、同罪である。
ということは、そんな状態になれば、夫婦間では赤信号一歩手前というとこrであろうか?
相手によって、その性格が頑なであればあるほど、もう収拾はつかなくなっていて、修復は難しいだろう。
それがm二人の別れを誘発したものであったのだ。
「あんなに楽しかったことを忘れてしまったのか?」
と男は考えるが、すでに決意を固めている女に対し、
「そんなことはもうとっくの昔に考えたことよ」
と言わんばかりの、冷めた目でしかこちらを見なくなる。
そうなってしまえば、
「今まで一番分かってくれていると思った相手が、何を考えているのか分からなくなると、自分も信じられなくなり、まるで病気のような精神状態に陥ってしまったようだ」
と思えてならない。
そんな風に考えると、話をすることが怖くなってくる。だから、洋二は自分から話しかけることができないのであって、それまでと完全に立場が逆になっていた。
付き合っている時は、すべての主導権が洋二にあった。梨花は黙って洋二のすることを見ているだけだったのだ。
決して逆らわない女、それが梨花だったのだ。
「きっと付き合っている時、他の人がみれば、まるで奴隷扱いにでもしているように見えたのかも知れないな」
と思ったが、そんな時、梨花はどう思っていたのだろう?
自分の献身さに、自分で驚いていたのだろうか? 驚きながら、自分が相手に従っているということを、まるで自分の意思でもあるかのように感じていたのだとすれば、洋二の存在が、自分をいつも否定している梨花を高めていったのかも知れない。
そう思っていたとすれば、
「私にはこの人しかいない」
とまで思っていたとしても、おかしくはないだろう。
ただ、それが梨花にとってよかったのかというと、何とも言えない。結婚して子供ができて、自分の身体の中から新しい命が芽生えたことで、それまで忘れていた自信がよみがえってきたのだとすると、梨花にとって、やっと自分を目覚めさせることができたのだと言えるだろう。
そんな時、目の前にいる洋二を見て、どう感じるだろうか?
「えっ? この人が私の夫?」
信じられない気分になっていることだろう。
ここまで自分に自信のない人だとは思っていなかったと感じ、梨花に対しての恫喝や圧力は、完全に見掛け倒しであったということに気づくだろう。
「こんな男に自分が今までしたがってきたなんて」
と思うと、これから将来のことは、自分がひとりで考えないといけないことに気づいた。そうなると、洋二に、自分が悩んでいることを知られたくないという思いが大きくなり、気が付けば、もう別れるということが頭の中で確定した事実になったのだ。
自分ひとりで決定してしまったことなので、感情が自分についてこれていない。
本当だったら、感情が先にあって、そこから事実がついてくるのだろうが、事実ではないが、決定事項が先にあって、そこから自分の感情が追い付いてくるという現象に、どうしていいのか戸惑っていた。
だから、余計なことを口にすると、何を言い出すかわからず、追い付いてこれていない感情が口から出てしまう可能性がある。
少なくとも好き合って結婚したのだし、しかも、もう子供もいるのだ。子供に対しての責任も考えると、迂闊なことはできない。しかし、別れるということは、すでに決定事項あることから、相手やまわりを説得しなければならない。どうしていいのか分からない状態で悩むのだから、確かに順番は逆だった。
しかし、まわりは、この訳の分からない状況に戸惑っている。
自分だけ先走ってしまった梨花も、自分で蒔いた種とはいえ、どうすることもできない。
だから、
「そもそもの原因を作ったのは、あなたじゃないの」
と思い、洋二を睨みつけている。
洋二は、なぜ睨まれるのか分かっていない。今までにそんなことなど一切なかったからだ。
そこでやっと今までと立場が逆転したことに気づかされる。
「こんな女と結婚してしまったのが、人生の間違いだった」
と気づかされてしまった。
しかし、洋二は、楽しかった頃の思い出を思い出すと、離婚など考えられなかった。
「梨花だって、楽しかった思い出があるはずだ。そんなに簡単に別れるなんてできるはずもない」
と思うのだが、まさか、すでに決定事項であるなど、洋二に想像もできることではなかった。
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