四十七話
永正三年二月中頃、
政元は二度も京兆家に不利益をもたらした之長が眼の前に現れると不満を
「之長、そなたの京兆家に対する
政元は悔し紛れに詰め寄ると、之長は
これにて京兆家と阿波家との争いは終わりを迎えたのだった。
この和議は
同年四月には澄元が再び上洛を果たし摂津守護となり、阿波家にとっても京兆家の関係は中途半端なものではなくなった。
六月には淡路の
京兆家は阿波家との関係を修復したことで、その支配に一時的な安定をさせることに成功したのだ。
この頃、上洛した澄元は摂津守護として現地に赴任し、之長を正式に家宰として政務を執行することとなる。
之長は武将としても優秀だが、執政官としても比較的優秀で、裁判などの訴状の処理などテキパキと手早く仕事をこなしていき、守護として仕事を学びたい澄元にその隙もないほどの速さだった。
この優秀な仕事ぶりに不満を持った男が居た。
守護代の
薬師寺家は京兆家に反発する運命にあるのだろうか?
自らが採決すべき仕事も之長が素早く処理をするものだから、徐々に長忠は役を奪われて行き、守護代としての存在価値を少しずつ失っていったのである。
その頃、不満を隠しきれない長忠に近づき
元長と長忠の関係は先年、兄元一が謀反を起こした際に共に戦った頃からであった。
元々澄元が世継ぎとなることに不満だった元長は澄元が摂津守護として赴任すると長忠に
「そなた守護代の職は大丈夫か?澄元様には三好之長という有能な家臣がおる。その之長は一族総出で澄元様を支え、その澄元様には之長の他に
そう言って不安を煽り、澄元が世継ぎとなることがいかに利がない事かを長忠に熱心に説いたのである。
長忠もはじめは耳を貸そうとしなかったが、現実に之長が力を及ぼすようになると、徐々に役を失っていった長忠は、元長の申すことは本当ではないかと考えるようになっていった。
このままで良い訳はない。
京兆家には阿波家の者を養子にとって世継ぎとすることは、阿波、讃岐と摂津、河内、山城、丹波を守護するのと同じで強くなるためには必要なことであった。
だが、家臣にとっては阿波の者が世継ぎとなれば、阿波から来た澄元の側近が権勢を握ることなり、自分たちは窓際に追いやられることになる。
今、長忠はまさにその憂き目に直面していたのである。
長忠は次第に
(元長が澄之様を選んだのは、こういうことが起きることを予期していたのだ・・・澄之様が家督を継げば後ろ盾がおらぬ故、我らでお支えすることとなる。元長が澄之様を家督としたがるのは今の儂のようにならぬための策だったのだ!)
長忠は次第に元長と頻繁に接触するようになり、すっかり澄之派に取り込まれてしまったのであった。
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