三十五話
永正二年五月、
阿波守護家は讃岐も支配しており、京兆家を除くと細川家では最大の勢力であったが、攻められる立場ともなると阿波から讃岐までの広い海岸線を常に監視する必要性があり、現在動員できる限界の人数を撫養の之長に与えたのである。
撫養城は海岸近くの
更に撫養川を渡って鳴門から大河川程度の広さの小鳴門海峡を渡ると、その先の
鳴門海峡は
之長は敵が阿波へ直接攻撃を加えた場合は鳴門と大毛島にまたがる
敵を大毛島に上陸させると撫養城近くの小鳴門海峡まで引き込んで対峙し、別働隊を大毛島の北にある
撫養城の櫓で眼の前に広がる大毛島や島田島を指で指しながら之長と長秀は作戦を練っていた。
「父上、上手く行きましょうや?」
長秀が心配そうに之長にそう聞くと
「解らぬわ。敵も別働隊を島田島に送るやも知れぬが、その場合は別働隊が小鳴門海峡を挟んで引き付けてくれる事ともなる。互いに兵を分散した形となるが、その場合は長期戦となるやも知れぬな。だが長期の戦となれば我らの勝ちだ。京兆家も側背に畠山を抱える身。長期戦ともなれば
と之長は言ってはみたものの、長期の戦は之長も望んではいなかった。
できれば上手く迂回作戦が成功すればそれが一番最善なのだ。
だが、之長はもっと別の展開になることを心のなかで望んでいた。
それは敵が大毛島に上陸せず、遠く讃岐の浜から十河城に攻撃を仕掛けることだった。
その場合は長秀にもまだ明かしていない作戦で一気に敵を叩くつもりであった。
だが、鳴門海峡を挟んで指呼の間である大毛島に上陸しないという選択肢を捨ててまで敵は讃岐まで軍勢を向けるであろうか?
之長は海の向こうの淡路を望むと作戦に頭を巡らせるのであった。
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