二十七話
「
すると興味深げに先端の青銅の筒を眺めて
「これはどのように使うのだ。」
と問うと
「おう、それよそれ、今のままではただの棍棒ではないか。
貞正も興味を示して長忠から槍を受け取り先端の穴を覗き込んだ。
元長さっきまで自分の事を馬鹿にしていた二人が、興味深げに火竜槍を眺めているのを見ると、気を良くして二人から火竜槍を取り戻し、腰だめに構えて見せる。
「まず穴の奥に火薬を詰め込んで、その後、矢や石の球を穴の中に入れ込む、そして青銅の筒に取り付けられた縄に火を付けて時が来ると・・・ズドン!」
二人は『おお!』と歓声を上げた。
貞正は元長から火竜槍を取り上げて構えたり穴に指を突っ込んでみたり一頻り楽しんだ後
「肝心の威力はどうじゃ?」
と聞くと元長はニヤッと笑みを浮かべて
「弱い、弱すぎて使い道が無さすぎて細川邸の武器庫にずっと眠っておったのだ。それを援軍に行く際に無理言って貰ってきた。」
なぜ火竜槍が細川家の武器庫に眠っていたかと言うと、前管領細川勝元が応仁の大乱の際に西軍に対抗するために輸入した物だった。
ところが爆発音は大きいが、威力が低いため激しい戦闘に耐えられず、使われなくなったのだ。
澄之の下に通い詰めていた香西元長はひょんな事からこの火竜槍を発見し、出陣の際に二十本ほど火薬と共に譲って貰ったのである。
「弱いだと!?弱すぎて蔵にしまい込むような武器をそなた持ち出したのか?」
貞正はそう言うと興味を失ったのか長忠に火竜槍を投げ渡して再び床几に座った。
長忠は受け取った火竜槍を元長に投げ返してがっかりした様子で
「弱い武器を持ってきてどうするのじゃ。」
そう非難したが
「威力など、どうでも良いのじゃ。球を発射するのはおまけじゃ。」
元長は大きく
そして
長忠と貞正は火竜槍の実演を近くで見ようと、火縄の焼ける音が聞こえる距離まで近づくと、途端に火縄が焼けて火薬に発火したかと思うと『ズバン!』と激しい轟音とともに黒い煙が立ち上ったのである。
至近距離にいた二人は驚いて腰を抜かし耳を抑えると、遠くからは軍馬が
そして肝心の石の球は山なりに飛び立つと
「物凄い轟音だな・・・だが飛ばぬな、やはり弓が良いな。」
長忠と貞正は顔を見合わせて頷きあった。
「威力はおまけじゃと言ったろう。この轟音よ。耳を澄ましてみよ。軍馬が嘶いて怯えておる。弓だと正確に矢を撃って馬に当てねばなるまい、だが火竜槍が火を吹いて戦場でこの轟音が鳴り響けばどうなるかな。」
元長はニヤリと笑うと二人はようやく
「なるほどのお・・・これは勝ったな・・・」
長忠と貞正は元長の意図を察したのか早速城攻めに向けて作戦を練り始めたのであった。
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