二十三話
之長は
「
と不機嫌そうに之長に問うた。
単刀直入に政元が聞いたのは、嘘を付いても知っておるぞと威圧しているのだが、之長はここで正直に話せば澄元が阿波に返されてしまう可能性があると考え、敢えてとぼけて見せることとしようと、そう考えたのだ。
「噂には聞いておりますが・・・まさか薬師寺殿がそこまでの力の入れようとは、とんと思いも寄りませんでした。この様に己の身も
之長は白々しくそう言ってみせると
「正直に申せ。儂は眼はごまかせぬぞ・・・!阿波の成之が前公方に同情的なのも、世継ぎの件が曖昧で不満に思っておることも全部な。」
そう言って脇息から体を起こした政元は威儀を正すと
「澄元の件は、
政元は之長に
そもそも細川家代々の通字の『元』の字は京兆家当主の証のように思われているが、細川家初の管領は頼之であり、京兆家の初代当主も実質頼之であった。
その頼之に子が無く、弟の頼元が頼之の後を継いだために『元』の通字が代々の当主の字となったのだが、だからといって『之』の字が『元』の字に比べて当主の字に相応しくないわけではないのは細川家の係累なら誰もが知っていた。
だがそれを知っていたとしても、それを今は口にすることは許されないのである。
「ははっ!殿の御厚情は重々に承知しております。」
(くそ!烏天狗めが!要はお前の心持ち次第と言う事ではないか。)
之長は表向きには
体が大きい之長は平伏し続けるのが余り得意ではないが感情が表に出やすい性格のため、こんな時は平伏をしていて良かったと思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます