二十二話
淀城は大きくカーブを描く淀川を北面から西面の自然の堀として、東側には
淀川や巨椋池をひっくるめた広い領域を完全に包囲するには多数の船団が必要だ。
元一は包囲される前に手近の山城の国衆に援軍の派遣を募るため早馬を走らせるのだった。
一方で長忠は芥川で逃げ遅れた郎党や雑人共を尋問し、大方この事件の背後関係を洗い出していた。
そしてその結果を
政元は
万が一長忠の夜襲が失敗したとしても内藤貞正の軍勢が元一の軍勢を撃退する手はずが整っていたのである。
政元は京に入って早速兵を招集すると
その際に援軍の将の一人として派遣されたのが香西元長であった。
長忠は二千の援軍と自らの後詰め五百と合わせておよそ二千八百の兵で淀城を囲むこととなり、元一と朝経の反乱軍は時が経つとともに追い込まれていったのである。
昼時となり長忠は早急に包囲体制を整えるが川と池が守りとなっている淀城に先発していた三百と後詰めの五百、合わせて八百の兵で完全に包囲するのは不可能であった。
そのため早馬により翌日明け方には到着する二千の援軍を待って攻撃することと決すると、夜襲で疲弊していた自らを含める兵三百に休息を取らせ、後詰めの五百を城の包囲に当てたのである。
その頃、京の
長忠は前公方
「まずいな。阿波からの指示や俺の自身が与えた指示は、全て朝経殿を介して命じていたため、恐らくは知られていないだろう。しかし元一が政元を廃して澄元様を擁立しようとしていたと言う事実を全てを無かったことにする事を許されぬだろうな。」
之長は腕を組んで考えるが、どうもこの件は分が悪いように思えた。
もしも淀城が陥落して元一や朝経が口を割れば終わりなのだ。
「いっそ一度阿波に帰るか?家族をせっかく呼び寄せたが、半月ほど阿波に隠れて時が解決するのを待つというのも手だな。もしも阿波征伐となれば、儂が先陣となって勝利すれば儂らに好機があろうよ。とは言え政元に参上を求められている以上はこれを無視することは出来ない。今日の参上次第では澄元様に暫しのお暇を貰うとしよう。」
之長はそう言って衣の皺を手で整えると覚悟の上で参上したのであった。
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