第四話
細川六郎が
謁見の間には当主の之持、その右手には祖父の
「この度は目出度き運びとなり、まこと
使者が
「我が細川家は南北朝の折より一族の結束が固く、応仁の折にもこの結束ゆえに乱れることなく乗り越えることが出来た。昨今は越前の朝倉のみならず、西は出雲、伯耆で
と若き当主である之持も弟の門出を喜んでいるようであった。
右手に座っていた成之も
「くれぐれも右京大夫殿には我が孫六郎をよろしく頼み申しますとお伝えくだされ。」
そう言って深々と頭を下げた。
このようにして和やかに会談が終わると之持は使者を
成之は六郎と側近の一人を残して上座に座ると六郎を手招きして横に座らせ側近も素早く下座に移ると成之は咳払いをしてから六郎に優しく
「愛しい六郎よ、これよりそなたは
そう言って三好筑前守之長と申す者に目を移すとそこには大きな体で必死に頭を下げる武士がいた。
六郎はまだ元服していないため政務に関わる人間を詳しく見知っているわけでは無いが少しは遠くで見かけたことがある気がする。
「拙者、京は苦手ではござるが六郎様をこの命にかけても守り通す所存にございます。」
之長は大きな声でそう言った後に頭を上げると、巨大な体に似合わぬつぶらな瞳を持つ壮年の武士が六郎にニコニコと笑いかけていた。
年の頃は四十四、五だろうか、先頃十二歳となったばかりの六郎と三十ばかりも歳が違うが如何にも気安そうな顔をしていて、なんとも側にいたくなるようなそんな人物だ。
六郎は之長を一目で気に入ると
「之長、今後ともよろしく頼む。儂は京のことは何も知らぬゆえ、そなたには頼り切りになるかもしれぬが、力になってくれよ。」
そう之長に声をかけた。
之長はその言葉に深々と頭を下げて
「なんともありがたきお言葉、必ずや六郎様の力となってみせましょう」
と力強く言ったが
(また京か・・・儂は京の者共は好かぬ。何かあれば連歌や茶の湯だと疎ましい、
之長の内心はその力強い言葉と裏腹に全く逆の事を考えているのだった。
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