第三話
元一は早速
どうやら元一の行動から察するに、阿波細川家とは既に話がついているようで、後は政元の決断を待つばかりとなっていたのであろう。
気分屋の政元が気を変える前に迅速に話を進めるためには、二手三手先を読んで行動する必要があるのだ。
細川家には政元が当主を務める
御相伴衆とは将軍の宴席などに相伴させて貰う役職なのだが有力な守護のみがつくことが出来る名誉職でもあり、御相伴衆に列することが出来るという事は阿波家の家格の高さを現れである。
管領である政元に釣り合う家格を持っていたのだ。
幸か不幸か阿波家では元当主
前当主義春は政元と幕府内で権力を争った事もあったが、義春が亡くなり既に過去の話、阿波家の男児が京兆家の当主の資格を得るのだ、先方としては断る理由のない話である。
むしろ阿波家にとってはその時が早く来ることが待ち遠しかったのだ。
堺から早馬ならぬ早船が阿波に到着すると、阿波家の居館である阿波屋形は上へ下への大騒ぎとなった。
「六郎様が京兆家の嫡子としてお呼ばれになるようだ。」
「六郎様が次期管領となるのだ。」
「阿波家と京兆家が一つになれば安泰よ。もはや畠山や佐々木も敵ではあるまい。」
家人共が口々に騒ぐのだ。
特に六郎を六歳の頃から養育してきた成之は話を聞くなり目に涙を浮かべ
屋形中の家人が居並ぶなか、訳の分からぬ六郎を無理やりを上座に座らせると自らは下座に座り
「我ら阿波守護家の者共は京兆家御当主細川六郎様に忠誠を誓い力を尽くす所存にござります。今後は何なりとお命じくだされ。」
と六郎がまだ当主どころか嫡子にもなっていないのに、まるで今すぐにも管領にもなったかのように家人共がズラリと頭を下げたのである。
六郎はしばらくポカンと呆気にとられていたが皆が頭を垂れたまま上げようともしないので
「じっ・・・爺様、どうか頭を上げてくだされ・・・」
そう発すると、成之を筆頭に家人共がズラズラと頭を上げ全員が喜びのあまり感極まった顔をしているので、流石に六郎もその光景つられたのかはあまりにも壮観過ぎて圧倒されたのか訳の分からぬまま涙を流して転がるように下座の成之に走り寄って抱きつくと二人はわんわんと声を上げて喜び泣き叫んだのであった。
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