第8話 伝説の始まりの始まり
『本番5分前ー!』スタッフの人がそう言う
「ハァ!、ーッ!、ハァ!ハ、ァ、っぁ」
やばいやばいあともう少しで放送が始まってしまう!生放送が始まっちゃう!
先程までのほのぼのとした雰囲気とはうってかわりスタジオ全体に緊張の渦が巻いていた。……そして俺は心を落ち着かせることができないでおりその渦に見事にもまれていた
現在この初配信の接続数は10万人を超えており、決して10万人というのはハローライブや先輩たちにとって決して軽い数字ではない。それは先輩たちが積み上げてきたものであり流石だと思い知らされる。
……ただそれと同時に頭によぎるのは「もし10万人もの前で失敗したら?」という疑問であった。もし失敗して大恥をかいてしまったら?もし失敗して後に来る仲間たちに影響が出てしまったら?
……もし失敗して憧れの先輩たちが築き上げてきたものを壊してしまったら?
そんな考えが不安になって恐怖になって焦りへと変わっていく。放送がもうそろそろ始まってしまうというのに俺はうまく呼吸ができずただ呻くことしかできなかった
どうしようか?今からでも真由さんに言って延長してもらおうか?
本来のトップバッターである佐藤さんの性格ならうまく視聴者を虜にできるはず
そうしよう、そうした方が良い……
でも…………
『本番3分前〜!』
ッ!まずいまずい!始まってしまう!は、はやく真由さんに……!
「ふむ……。響くん、こっちにおいで?」
!!?俺がずっとうつむいていたのが理由だろうか真由さんの方から声がかかってきた。放送直前にスタジオ裏に行っても良いかという疑問もあったが俺は迷わず真由さんの元へ向かった。
「響くん?大丈夫かい?」
「あ……はっ、あ、大、丈夫です」
「…………」
「響くん……」
「は、はい」
「延長……するかい?」
っ!?見抜かれていたのか……でも逆にチャンスだ……!ここで『お願いします』と言えば一番最初にならなくて済む……だから……
「……ぉ、お……。……?お………?」
―――?なんでだ?『お願いします』の一言が言えない。言おうとしても詰まって声に出せない……?なんで……?
「……ふむ。……響くん……君はやってみたいという気持ちがあるんじゃないかい?」
「え?」
「いきなりこんなことになったのは私の責任だ。だから響くんがやりたくないと言うのならば無理強いはしないよ。ただ……君はそれでいいのかい?」
「いいって……?」
「君は……そうだな、君は『ここ』で何をしたい?どうなりたいんだい?」
何をしたいか……?そう言えば俺がハローライブに入社できたのって同僚が勝手に資料を送ったからなのか。……なら俺は、俺はなんのためにここにいるんだ?俺は……
「ふむ、響くん!一回顔を上げてご覧?大丈夫、大丈夫だから……」
「ぇ…?」
真由さんに言われるがまま恐る恐るスタジオの方を見る。そこにいたのは
「遥さんに……おっ、おかざきさん!?」
「本番10秒前ー」
「ま、真由さん!な、なぜあの二人が!?というかもう撮影はじまっちゃ……!」
「ふむ、響くんがおかざきくんのことを知っているのは意外だが……」
「そ、それよりもは、早くしないと!」
『5ー!4ー!』
「響くん、別にすぐ新規生の発表が行われるわけではないんだ。」
『3ー!2ー!』
「えっ!?」
「だから……君の目でちゃんと見て……」
「もう一度さっきのことを考えてごらん?」
『スタート!!』
「はいどーも!こんはる〜!春歌アリッサちゃんだよ〜!」
「こんふゆー。天音冬歌だぞ〜」
「なぁ!?ま、真由さん!?あれって一体どういう!」
二人がいきなり話しだしたと思えば衝撃的なことを口にする
それもそうだ遥さんとおかざきさんの口から出たのは俺がよく知っているあの伝説の三人のうちの二人そのものの挨拶と声。「春歌アリッサちゃん」と「天音冬歌ちゃん」でなのだから……
「まぁまぁ響くんいったんボリューム下げて」
「あぁ!す、すみまモゴゴ」
配信が始まっているにも関わらず大声を出していたことに気が付き急いで俺は自分の口を手で塞ぐ
春「やぁやぁ冬歌ちゃん!今日はついに!あの日がやってきましたぁ〜!ワアー!ドンドンパフパフ~!」
冬「そうだね〜…………」
春「そうだねって感想そんだけ!?」
冬「……いやごめん……なんか……考え深くて、私達がVtuber始めたときにこんなこといい意味で想像できなかったから……ね?」
春「―――っ!!もぉー!冬歌ちゃんってばぁ!すぐ無自覚にそういううるっとくること言うんだから!……でもそんなとこが好きー!!」
ギュー! 真理さんがおかざきさんに抱きつく
:てぇてぇ
:てぇてぇ
:てぇてぇ(てぇてぇ)
:いきなり始まったと思ったら致死量のてぇてぇ成分を与えられたんやがどうすればええんや?悶えていいんか?
:自分の気持ちに素直になってええんやで
ハロージジィ:なるほどの
:一体何が「なるほど」なんでしょうかねぇ?
:そりゃぁあれよ。ナニよ
:まぁ俺は前々から理解してたけどな!(後方逆立ち彼氏面)
:逆立ちはただの変質者や
:あかん想像したらじわるw
:尊いのは最高だがこれ新規生の紹介配信では?
:はっ!?あまりの尊さに忘れていた!?
春「あ!そうだった!これかわいい後輩ちゃんたちの配信だった!?いやぁ〜いつものくせで〜あははぁー……」
冬「そうゆうちょっと気が抜けてる感じが可愛いんだから気にしないで?」
春「―――ッ///、話が進まないから冬ちゃんは黙ってて!」
冬「へーーい」
あぁ、これだ。今まで俺が見てきた「ハローライブ」が眼の前にあるんだ。
同期に進められてから見始めて心が折れてた俺を助けてくれた「ハローライブ」の
憧れのライバーが目の前にいるんだ……。
春「さて!今日はさっきも言った通り!ついに”あの日”がやって来ましたーー!!」
春「その日とは〜?冬ちゃん!何でしょぉ!?」
冬「かわいい後輩たちがやってくる日〜」
春「そう!!私達の後輩が増える日がやってきたぁぁ!」
冬「春ちゃん、いつにもまして元気だね〜」
春「そりゃぁそうじゃん!年に一回あるかののビックイベントだよ〜冬ちゃんは嬉しくないの!?」
冬「そりゃぁ嬉しいけどさ。正直私人と関わるのは苦手だからさー。」
春「ふぅーん?……!……まぁ?冬ちゃんは楽屋で「どうしよ春〜?私ちゃんと後輩たちと仲良くできるかな?うまくやれるかな?」って心配になって私に後輩との接し方を聞きに来てたもんね〜?」
冬「なぁ!?あ…!そ、それは……///だって本当に可愛い後輩との話し方わからないんだからしかたないじゃん……///」
春「冬ちゃんかわいい〜!けど、それ半年前の三期生たちが入ってきたときにも言ってたよね〜」
冬「うぅぅぅぅ……」
春「大丈夫!今回も私がきちんとレクチャーしてあげるから、ね?がんばろ?」
冬「うぅ。はるぅありがとぉ」
お手手ギュゥゥゥゥ!
:春ちゃん以外にはコミュ障になる冬ちゃんスコ
:春ちゃん以外のことになると雑魚になる冬ちゃんスコ
:さらっと恋人つなぎする春ちゃんもスコ
:それをあたかも自然に受け入れる冬ちゃんもスコ
:スコスコスコスコ
:通報しました
:なんでぇ!?
:てぇてぇ
:手ぇ手ぇ
:手ぇ手ぇ
:なんで被るねん
:手ぇ手ぇスコ
:スコ
:通報しました
:だからなんでぇ!?
いつも液晶越しに見ていた二人が目の前にいて……配信者側から見るたくさんの量のコメントを見える。とても新鮮でなんていうんだろうどうやって表現するのだろうか?俺は……俺は……?
「響くん。君は”これ”を見てどう思う?どう感じる?」
これを見て……?
「なん、か……楽しそ、う……?……!!」
!!!
そうか、そうだったんだ!俺は、今楽しんでるんだ!
二人の姿を見て俺はワクワクしてるんだ!
いや、二人の姿だけじゃなくてコメントを見るのが楽しいんだ!
いつも液晶越しに見てたコメントじゃなくて、自分たちの事でコメントが書かれる
というのがとてもワクワクするんだ!
最初は同期のいたずらで始まった4期生の応募。
本当はその時一瞬だとしても思ってたんだ「やってみたい」って!だから!
「真理さん!俺……!」
春「さて!場も温まって来たところで本題と行きますか!」
冬「ついに……!」
春「そう!私達の可愛い後輩達であり4期生の最初の一人目の発表と行こーう!!」
冬「おーーう」
春「それではまず紹介PVを〜どうぞ!」
「うん。ちょうどよかったね。さぁ!響くん!出番だよ!……いってらっしゃい」
「……はい!」
そう真理さんに言い残して俺はスタジオに上がっていく
上がりながらもうさっきまでの自分ではない
そう自分に言い聞かせてスタジオに登る
登る途中、猛スピードで流れていくコメ欄の中あるコメントに目が行った
『同期を売った奴』:これを見ているかどうかはわかんねぇけどなんというか……お前は俺の同期だ!ブラックな環境の中一緒に働いたおまえなら行ける!だから…きばれ!。
一瞬で流れていったがはっきりと見えたそのコメントで勇気づけられる
配信が終わったら感謝しといてやるか……!と今口に出せない分心で感謝する
なぜならそのおかげでその後押しによって……俺は……いまステージの上、カメラの前にたっているのだから。
あと数秒で俺の紹介PVが終わる
よし!やってやる!ここで一発決めてやる!まるで伝説を残そうと意気込んで俺は
……始めた
「こんナイト〜!4期生の新米吸血鬼『今宵ヒビキ」だ!」
よし!噛まずに言えた!セリフと名前はあらかじめ真由さんと話し合って決めたものだ。これでも妥協したほうなのだ。
最初は新米サキュバス設定ににとても女の子みたいななま……え……で。……?
なんか大事なことを忘れているような?ん?女の子?
:ファ!?まじの実写合法ロリやんけ!?
……ん?
俺はカメラ横においてある配信画面越しに自分の姿を見る
「ぁ……あ!?あぁ!?」
そこにいたのはゴスロリ服を着て羽と牙が着いた非常に可愛らしい実写で生身の美少女がいたのである
それは誰か?周りを見渡しても人はみあたらない。つまり……己自身である
「ああああぁぁぁぁあああああ!!!!?」
その事実に気づいた俺は頭がフリーズした
後に語られる「伝説の始まり」として語られていく配信が今こうして始まったのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回の話5分弱しか進んでないって……マ?
ついにVtuberとしての響くんが見れるのかと意気込んでいた人は申し訳ねぇ
ちょいとまってくれよぉ……
いや、本当にごめんなさい。投稿が遅い身分でほぼ誰もそれ以前の内容覚えてねぇ!
みたいな感じになってんのに引き伸ばしてごめんなさい。いや本当に!
なんでもはしないけど!
というわけで少し待ってておくれよぉ
ついでにしてない人はフォローしておいといてくれぇ
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