第4話
その日いつも温厚なゼンはとても不機嫌だった。
何故超絶不機嫌かというと…
「ゼン様!また使者がきてます!」
この使者ラッシュのせいで睡眠妨害されているからである。
その為ストレス発散も含め、魔力放出させる為に更に土地を拡張したり、畑や家を作ったりペット達に魔力を食わせたりと色々しているが、それでも苛々するものはするのである。
「却下、帰れ」
長ったらしい文をチラリと見てから、使者へ投げつけて使者を帰す。
何故自分の娘をゼンにあげるのがゼンのメリットになるのかゼンにはさっぱりわからなかった。
あの日以来龍王はゼンに対して色んなものを提示しては同盟をしようと申してくるが、どれもゼンが既に所持していたり欲しいとは思わない物ばかりだった。
その上、どこからか話を聞きつけたのか他の国までもが使者を送りつけて来ている
「ゼン様!me特製オムライス食べて元気出してください!」
ぶぅたれながらもみぃからオムライスを受け取る。みぃのオムライスはやっぱり美味しくて不機嫌になっていたのが少し恥ずかしくなってくる。
「ありがとう、みぃ」
顔を逸しながら、ボソッと言えばみぃはニッコリと嬉しそうに笑う。この使者ラッシュのせいでみぃ達も大忙しだった。
休憩する間もなく働く小さな家族を見て、呑気に寝てられる程呑気ではないゼンはオムライスを食べながら、目の前で書類を捌くみぃに声をかける。
「もう一体居たらみぃ達も楽になる?」
「んー、そうですねぇ。休憩取れるくらいにはなりますかねぇ」
「ん、わかった」
ピィー
指笛を吹けばどこからか真っ黒の狼が入ってきてゼンの手に擦り寄る。この子は一番最初にゼンが拾った子である。
「シンラ、君に人化できるようにしてあげる。みぃ達を手伝ってあげて。」
そう言ってシンラにカプセルを見せれば、文句も言わずにパクリと食べた。その瞬間まるでスライムの様にシンラの体が蠢き始めた。
「服はこれでいっか。」
収納から適当に服を出した頃には、普通の人と大して変わらないシンラがキョトンとした顔で立っていた。
自分の手足を見るシンラに服を渡し、着方を教えながら服を着せる。
「シンラはみぃ達のそばによくいたから、仕事もなんとなくわかるだろ?」
「俺!できる!」
やる気満々の様子のシンラは首をブンブン縦に振って言った
「頼んだよ、シンラ。みぃ、シンラは頭もいいからすぐ覚えるだろう。仕事リスト見せればやってくれるはずだよ」
ーー…
人手も増えた事で少しは楽になるかと思っていたが、それから数週間経っても未だ続く使者ラッシュ
「……チッ……もう我慢の限界!!!毎日毎日飽きもせずに来やがって!!お前ら!よーく聞け!この国は誰とも同盟は組まない!今は!!
お前らが持ってくる物はどれも欲しくないし、睡眠時間を削られてはっきり言って不愉快だ!
それで、もし戦争でもしようってんなら受けてたってやる。
俺はお前達なんかには負けない。わかったらさっさと帰って自分たちの主にそう伝えろ。金輪際この国に入るな!」
シッシッと手でやって、膝に乗せてた子狐を抱いて部屋に戻りベットに寝転がればみぃがコソッと部屋に入ってきた。
「あんな事言ってよかったんですか?」
「あぁでも言わなきゃずっと来るでしょ、あいつら。
それにさ、みぃは俺達が負けると思う?」
ニヤッと笑ってみぃを見れば
「確かに、負けはしませんけど…まぁ、どんな決定をしてもme達はゼン様に着いていくだけです。」
ヤレヤレと言いながらも、みぃの顔はどこか晴れやかだった。
「さーてとっ!お昼寝の再開だ!」
「ちょっと!ゼン様!!まだ仕事が…っ!!」
「おやすみー!みぃー!」
みぃの言葉も聞かずゼンは小狐を抱きしめ目を瞑る
「お前も僕と寝ようか」
僕の頬に擦り寄る子狐を撫でて僕は今度こそ眠りについた。
大国の国王様は今日も眠る。 葉叶 @ht_25
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大国の国王様は今日も眠る。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます