第3話

「ゼン様!起きてください!!」

「んぁー?なにぃ?」


目を擦りながら起き上がると、服を持ったみぃが立っていた。


「今日は学校へ行き授業をする日ですよ!」


未だ働いてない頭で考え、ん?と首を傾げる。


「もう一週間経った?」

「はいっ!服は出しておいたので着替えて下さい!ご飯も作ってあります!meは今日大忙しなので食べたら机の上に置いといて下さいね!」


そう言ってパタパタ走っていくみぃの背中を見送り、固まった体を伸ばす。


「んぅーー!着替えてご飯食べに行こっと」


ベットから出てソファーに置かれた服に着替える。


「うげぇ、ネクタイ結び方わかんないよぉ。まぁ、いいや」


首からかけたままにして、部屋から出て、立て札や張り紙を見ながら食堂へと向かう。

食堂には既に料理が並べられていて、お腹を満たし眠くなってしまいそうになるのを堪えて、食堂を後にした。


「デスー!」

「はいはーい!呼んだdeath?」


ポヒュンッと僕の前に現れたデス。


「ん、学校に連れてってー」

「お任せあれdeath!'転移'」


転移した先は作ったっきり来たことがない学校。

国民が居ないから来る用事なんて勿論なかったのだけど。


「そういえば、子供って何人いるの?」

「18人death

その内3属性持ちが2人。レアな属性持ちが1人。後は2属性持ちです」

「なるほどね。どこまで教えたの?」


校内へ向かいながら、首元を緩める。


「取り敢えず魔力関係はゼン様に任せる事になっていたので、字の書き方や読み方は教えたdeath」

「それじゃあ、練習場に集めといてー!」

「了解death。ゼン様先に転移させますね!'転移'」


デスが呼んで来てくれてる内に練習場を眺めれば、いくつか魔法陣が劣化しているのがわかった。

ここに来る前に拾った木の枝の先に魔力を纏わせ、魔法陣を直し、それとは別に地面に魔法陣をいくつか描く。


「ゼン様!呼んできたdeath」

「ありがとう!デス!

えーと、まず此処では一応教師だからゼン先生って呼んでね?

それじゃあ、デスさっきの順に分けてくれる?」


デスが生徒を分けてる内に収納からホワイトボードを引っ張りだした。


「よし、並んだね。それじゃあ、皆は魔法についてどれだけ知ってる?分かる人は手をあげて」


何人か恐る恐る手をあげる


「それじゃあ、そこの赤髪のキミ」

「魔法は魔力のコントロールが出来てないと暴走するって親父が言ってました」

「そうだね、魔力のコントロールはすぐ完璧に出来る様にはならない。毎日の積み重ねがとっても大事なんだ。

その代わりコントロールさえ極めてしまえば、このただのウォーターボールがこんな風に魚になったりするんだ」


手に浮かべたウォーターボールを操作し、手を離せばウォーターボールは魚の形に変わり、空中を泳ぎ始めた。

初めて見たのかざわざわしながらも喜々として泳ぐ魚を見る生徒達。


「皆この国に来た時、水晶に手をかざしたよね?」

あれは君達が何の属性を持っているのか、どれだけの魔力を持っているのかはかる物なんだ。属性は、火 水 雷 風 土が基本属性。

そして、闇や光は特殊属性って言われてるんだ。」


持っていたノートに書き込み、真剣に話を聞く生徒達を見て何か嬉しくなった。


「そして、たまに希少属性といわれる属性を持った人がいる。

人は産まれて来た瞬間から持つ属性は決まってるといわれてるんだけど、幼少期は魔力も不安定で属性をきちんと測る事が出来ない。だから基本的には10歳の日に測定をするんだ」


他の国の貴族とかだと5歳にやっちゃうらしいが、正確な数値は出ないのに何でフライングするのか疑問である。


「ただ希少属性はその名の通りとってもレアな属性だ。

未だ発見されてない属性が多く測定してもわからない事がある。

希少属性で一番よく知られているのが、時 重力だね」


因みにネネは全属性completeしたらしく、何でもわかるらしい。

それでもまだ世の中には沢山未知なものがあると探求し続けている。


「魔法は、パッと見るとカッコよく見えると思うけど、使い方次第で人を守る盾にも人を殺す剣にもなるんだ。

僕達は魔法について教えてあげられるけど、それを君達がどう使うかは君達次第だ。だからよく考えて使ってね。」


頷く彼らの中に紛れる存在にこの言葉は届くかなと思いながら、ゼンは空気を入れ替える為パンっと手を叩く。


「とりあえず今日は使い魔召喚をしようと思う。

やり方は、魔法陣に入って血を垂らす。それだけ。

今から絶対やっちゃいけない事を言うから守ってね?

その一、魔法陣には必ず一人で入る事。

召喚時に他の人の血が混ざるとキメラがでてきてしまう。

キメラっていうのはとても強い魔物だけど、誰も使い魔には出来ない。だから、強い相手がいいからとやっても無駄だからね。」


一度試したことがあるんだけど、使い魔同士が同時に一つの魔法陣を通ることになってしまい、使い魔同士が融合しキメラとなる。

僕は使い魔同士を剥がす事ができるけど、普通に面倒だし出来るだけやらない方がいいしね。それに理性が消えて暴れるだけだし、いい事なんて1個もない。


「それじゃあ順番に並んでやってってねぇ」

「そういえば、ゼン様は使い魔いないdeathか?」


実質みぃ達が使い魔の様な存在だけど、実際はゼンに使い魔は居ない。みぃ達は実験から出来た存在だったが、使い魔の様な役割もこなす為、ゼン自身必要性を感じなかった。


「んー?必要性を感じなかったんだよねぇ。

ほら、デス達が使い魔みたいなもんだし。

まぁ、人手がいるなら召喚してもいいけど、前の実験の時も自分の血は使ってないから何が出るかわかんないよぉ?」

「確かにゼン様の魔力は、特別deathからね」


難しい顔をするデスの頭を撫で、生徒達が使い魔召喚するのを見ていたが、とても頭が弱い子はいない様で、皆順調に召喚していき、あっという間に全員召喚し終わった。


「使い魔は決して道具じゃない。

これから彼らは君たちの友あり、家族であり、戦友となる。

だから、今からじっくり交流を深めてねぇ」


使い魔になった面々を見ていると、各々特性が出ているのが良く分かる。


「いやぁ、将来が楽しみだねぇ。」


ビービービー


微笑ましい光景にほのぼのとしていると、突然警報が鳴り響いた。大きなサイレンは明らかに異常事態を知らせており、生徒達の顔に恐怖が浮かぶ。


「はい、落ち着いて。僕を見て。

取り敢えず一旦使い魔を帰して、そこの扉の中に入ってね。

中にはネネが居るからネネの指示に従って良い子にしてたら、お父さん達もすぐ来るから安心してね。」


慌てる生徒達を全員扉の中に入れて、ゼンはデスに転移してもらった。

今のは緊急警報だ。この国にはゼンが貼った大きな結界がある。侵入者や攻撃を受けた時に鳴る様に設定されているのだけど、果たして今回はどっちだろうか。


「みぃ、何があったの?」

「龍国からの使者という人が来たみたいで警報がなったんです!

本物かはmeにはわかりません!」


みぃに案内してもらい、それっぽい服に着替えさせてもらい、玉座まで行けば頭を下げる人物の姿が視界に入る。体のあちこちにある鱗から龍人だろう。

ゼンが座れば、ゆっくりと頭を上げる。


「龍王様より、こちらを預かってまいりました。」


みぃが受け取り、安全を確認してからゼンに渡したが、長い回りくどい文章に嫌気が差し、即みぃへと返した。


「どうやら、同盟を組みたいとの事です。」


速読したのか、長い文をとても簡単に教えてくれた。


「何で同盟なんか組むの?

俺は君達の王の事なんて知らないし、君達の王も俺のことは何も知らないでしょ?何よりもそれって僕に何のメリットがあるの?

みぃ、今言った事書いてそこの人に渡して帰して。

あ、次から無断でバリア越えたら責任は取らないからね」


もう話すこともないので、玉座から降りてデスを連れて部屋から出た。


「何で突然同盟なんか来たんだろうねぇ」


今までこんな接触はなかったのに、突然過ぎる。


「ゼン様はあまり興味はないと思いますが、この国は世界一の大国death。

国民は殆ど居りませんが、今まで人間達が開拓できなかった土地を全て開拓して世界の半分占めているのがこの国。

周りからしたら突然現れた大国に恐れをなしてるんでしょう。

何分、此処は元々人が踏み入る事を許されなかった禁忌の土地なのdeathから。」

「そうだったっけ?」

「ゼン様は、実験の為どんどんいろんな土地に手を出してはポイ捨てしてたdeathからね。それをデス達で拾って集めていって出来たのがこの国death。今迄はゼン様のバリアの外にある迷いの森が機能していた為入ってこれなかった様deathが、どうやら誰かが迷いの森を破壊したみたいdeath」


そう言われてみれば、ゼンは確かに気づいたら国王になっていた。なりたくてやった訳ではないので威厳のカケラも存在しないが、この国には厳しく言う者もいないのでそれでも許されるのである。


「ネネが徹底的に情報を握っていたので、あちらからすればこの国は未知death。

武力がどれくらいなのか、総人口はどれくらないなのか、国王はどんな性格なのか、全てがわからないdeath。

取り敢えず同盟になっておけば、あちらは今後脅威はないdeathからね。」

「別に今同盟が無くても困ってないし、あっちが俺にメリットを提示するなら…少しは考えるよ。」


ゼンがメリットもなく動くのはみぃ達にだけである。

それ以外の為に時間をさく必要性がゼンには分からなかったし、理解するつもり無かったのだ。


「デス達はどこまでもゼン様について行くdeathよ」


ニヒッと笑ってゼンの肩に乗るデスの頭を撫でて寝室へ向かった。


国民の事はネネがやってくれてるだろうし。

また少しの間…眠りにつこう…。

いつもよりもジワリと温かい胸に少し嬉しくなったゼンは微笑みながら眠りについた。


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