第2話

「ゼン様!!」

「ふにゅうー…なに…」


みぃの声と共にぬくぬくの布団が剥ぎ取られ、思わずブルリと体が震えた。


「もう一週間経ちましたよ!!そろそろ起きて国民に挨拶してください!」


そんな事は知らないと言いたげなみぃは、未だベットにへばりつくゼンをベットから引き剥がし、ソファーに座らせた。


「ふわぁあ、挨拶って…?」


眠い目を擦りながらみぃがいれてくれたお茶を飲み、やっとゼンは一息ついた。


「ゼン様からこの国での過ごし方や、やってはいけない事を伝えたりするんです!はい!起きて!」

「んぅー…わかったよみぃー。そのかわりお昼ご飯は俺の好物にしてよ」

「meにお任せあれ!」


ドンっと胸を叩き胸を張るみぃの頭を撫でてから、枕片手に部屋を出た。

ゼンの住んでいる所は大きなお城の中にある1室である。


「デスー…どこー…」


城というだけあって、中はとても広い。

その中から目当ての人物を自力で探すのはとても時間がかかるので、ゼンは諦めてすぐにデスの名を呼んだ。


「お呼びdeath?」

「新しい国民に挨拶いけってみぃが。だから連れてってー」


未だにゼンは城の中でも迷子になるのに、一人で街に行ったらもっと迷子になるのは間違いない。最近は城内にみぃが絨毯に矢印書いたり、わかりやすく立て札つけてくれたからゼンも大分迷子にはならなくなったが、街にはそこまで手が回っていないのだ。


「了解deathー!'転移'」


面倒だなと思いながらも枕片手に、街を歩く。


「あの時いた男の子は、ネネが魔法の使い方を教えてるdeath。

大人の方はそれぞれ自分に合った職業についてるdeath」


デスに街の状況を聞きながら歩いていると、動物達がどこからともなく現れる。


「へぇー…あ、僕寝間着のままだ…まぁいいか。」


動物達の頭を撫でようとして片手に枕を持っていることに気付いたゼンは、自分が寝間着のままだという事に気付いた。


「ん?お前達も行きたいの?いいよ、一生に行こうか」


擦り寄る動物達の頭を撫で、デスの案内に従い歩けば、人混みが目に入った。


「みぃが事前に集めてくれたみたいdeathね」

「わぁ、ちゃんと綺麗になってるー」


国民からは前の様に腐臭に近い臭いはしないし、あちこち破れたり汚れた衣服でもない。環境が変わると人はここまで変化するのかと感心していると、国民達が僕が来たことに気付きこちらを見た。


「えーと、俺はこの国の国王のゼン。

大体はみぃ達から聞いてると思うけど、このゆるーい国にも破っちゃいけない事がいくつかあるからちゃーんと聞いてね?」


そもそも本来はこんな大きな国を築くつもりはなく、ゼンとみぃ達、そして動物達以外が住む事なんて考えていなかった。

だけどもしもそんな時が来たらなんて夢物語の様に語っていた時にこれだけは譲れないとみぃ達と決めた約束事がこの国にはあるのだ。


「そのいちー、この国ではそこら辺に魔物とか色んな動物が居るけど、俺の許可無く触ったり殺したり家で飼ったりしたら駄目。

人を襲わない様教育はされてるし、作物とかを食べたりもしないけど、中には毒がある子や臆病な子も居るし、特定の物を食べると死んじゃう子もいる。だから可愛いからって無闇に触ったり餌をあげたりはしちゃ駄目。基本的にこちらが何かしなければ害はないから、彼らの好きな様にさせてあげてほしい。」


彼らは色んな所からゼンが集めたり、ゼンの実験で出来た動物達だ。

ゼンが主人なのだと理解しているのか、ゼンを見つけると擦り寄ってくるのがまた可愛いのである。


「そのにー、この国では殺しや泥棒は駄目。というかしても逃げ切る事は出来ないし、苦しんで死ぬだけだし誰も得しないからやめようね?」

「ゼン様、質問があるみたいdeath」


近寄ってきた狼を撫でていると、デスが挙手してる男の子を指さした。


「なーに?」

「苦しんで死ぬって…?」


少し怯えながら言う男の子は視線を彷徨わせながら聞いてきた。


「あー、そっか。当たり前じゃないのか。

んーと、この国って実質俺が作ったみたいなんだけど、それなりにこの土地事態色々と弄ってあるんだ。だから誰がどこにいて何をしてるのか、知ろうと思えば一発でわかるんだよ」


まぁ、この国広大過ぎて端の方は行き届いてなかったりするけれど、それは内緒だ。因みに主な監視はネネの担当である。

ゼンは基本的に寝てるか、ゴロゴロしてるかで、ネネ達からの要請が来た時以外関わる事はない。


「それじゃあ、そのさーん。これは当たり前だと思うけど、働かない者には何も与えない。

今はちゃんと働いてるから与えてるけど、働かない者には何もあげない。

とはいっても病気や怪我をした場合は、医者に行って医者が言う期間の休みは与えるし、例えば子供の授業参観とか、親の葬式とかそういう場合も休んでいい。だけど、面倒くさいからーとかの理由は認めない。」


ゼンはやっているが、それは話が変わるので敢えて触れずに話を進めた。


「とりあえずの注意事項はこんな感じかなぁ。

あ、後は事前説明にあったと思うけど、これから人種が違う人も住むことになるかもしれないけど、その場合は仲良くね」


もう言う事は言ったかなぁ?首を傾げて考えていると


「ゼン様…アノ話忘れてるdeath」

「あっ!分からない事は分からないままにせずに、お城まで聞きに来てね。扉の横のボタン押せば誰か必ず出るから。

後は、今家族が病気の人はネネかみぃに伝えてね。

それと子供達は学校に通う事。一応僕理事長でもあるからたまに授業するからね」


本当に気が向いた時だけど…


「あとはー…みぃから聞いたと思うけど、街を汚さないようにね?」



「「「「「はいっ!」」」」」



もうちょっと反発とかあると思ったが、思ったよりも素直に返事をされ、なんだが少し照れてしまう。 


「それじゃあ、俺は帰るから皆頑張ってねぇ」

「'転移'death!」

「デスーご飯食べに行こうかぁ」

「そうdeathね」


デスを肩に乗せて、ペタペタと歩いて食堂へ向かう。

デスが居るのですぐに食堂に辿り着いた。


バァンッ


「ごはーん!」


思いっきり扉を開けると、机の上にはゼンの好物のグラタンやトロールの目玉煮。豚魚の焼肉が並んでいた。即座に椅子に座りお皿を取る。


「あっ!ゼン様そのままで行ったんですか!?」

「しょうだよぉ」

「外に出るときはあれ程着替えて下さいと言っているでしょう!?」


肉を頬張りながら答えれば、みぃは眉を吊り上げ怒りながら、ゼンの足についた泥を温かいタオルで拭う。


「みぃのご飯はやっぱり美味しいなぁ、えへへ」

「もうっ!何で髪の毛にまで泥をつけてるんですか!せっかく綺麗な髪なんですから!!」


みぃはゼンの髪が好きらしく、いつも丁寧に手入れしては満足気に触っている事がある。ゆっくりと寝癖を直す手付きが優しくて、いつも眠くなってしまう。お肉を食べながらうとうとしていると、横で一緒にご飯を食べていたデスがゼンの手からフォークを優しく抜き取る。


「また睡眠に入るdeathか?」

「うんー。来週授業するからそのときは起こしてぇ」

「ちゃん歯磨きしてから寝て下さいね!!」

「ゼン様、おやすみなさいdeath」


椅子から下りて、抱き枕を抱え直せばデスが魔法でゼンを自室へ送ってくれた。


「ふわぁーあ、何の授業しようかなぁ…」




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