第3話 廃神

☆☆☆150年後、聖王国教会



 これが、150年前に起きた旧サウス王国魅了大災害のあらましです。

 サウス王国の実質的な指導者、王太子ヘンドリックの死を持って、王国は組織的な抵抗ができなくなり。その日の夜には、五族連合軍は王都を占領しました。


 この王太子の死を持って、サウス王国の滅亡、婚約破棄をしたら、1日にして、滅びたと言う人もいます。


サウス王国は、その後、民は全て、五族連合軍により殺害されました。

当時の魔道では、魅了とはどのようなものか分からなかったのです。


聖女の一族だったルイーサと、公爵家一族郎党は女神様の加護があり。魅了にかからなかったのです。


ルイーサ様は、当時の転移聖女、オサヨにより、パーフェクトヒールを掛けられ、全快しましたが、生涯、亡きサウス王国国民のために、元王国に一人残り、祈り続けたと言います。


100年間は、サウス王国は禁足地とされましたが、魅了反応が無いと確認されてから


50年前にノース王国の王族に割譲され、開拓民と共に、ファミル王国が誕生しました。


さて、これほど、魅了とは危険なのです。


魔族ですら、即座に人族と和平をして、討伐するものなのです。


親の敵でも、手をつなぎ。

魅了持ちの抹殺に協力するのがこの世界の常識です。


魅了持ちは年老いた老婆でも、何もしなくても、美青年が言い寄ってきます。

どのような醜男でも美女が傅きます。


リリムの首は、研究の後に、山奥に結界を張られ封印されました。

王太子の目は、黄色く光り。瞳に大きな六芒星が浮かび上がり、その隙間に六芒星が大小多数浮かび上がっていたと云います。


「さて、今世の転生聖女セイコ様、また、魅了持ちが現われたら、魅了がかからない転生者殿に、先頭に立って討伐して頂きます」


「わかりました。法王様」


彼女は転移前、平民、商会で事務方をしていたと言うが、魔力は歴代随一、オサヨ様よりも数段上だ。


運命の年に転生された。

これが、女神様の思し召しか?だったら、ボーア公爵家は正しかったのか・・・


・・・さて、どうなるのかのう。


☆ファミール王国ルイーサ女神教会併設孤児院


以上が、サウス王国魅了大災害です。

 そして、この教会こそが、ルイーサ様が建立された教会です。ルイーサ教会です。名前から分かっていた子もいたかな?


 もっとも、開拓民が来た時は、教会は朽ち果てていたので、教会を新たに建立し、修道院、孤児院を併設しましたから、当時の面影は、中庭にある庵跡ぐらいしか残っていません。

 そこで、ルイーサ様は、寝起きをされました。


 さて、

 今日は、女神詣での日です。

 5歳になった孤児院のお友達も、このお話を胸に秘めて、この平穏な世界には犠牲者があって成り立っていることを忘れないでね。


「・・・怖いよ。そう言えば、マリちゃん。可愛くないのに皆に好かれているよ」

「馬鹿トム。マリちゃん可愛いよ。器量よしって言うんだよ」


「さあ、皆様、旧サウス王国民のために祈りましょう。黙祷ですわ。黙祷~~」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」


 ・・・フフフフフフ、伝わっている話は、ここまでか。ボーア公爵家の生き残りもいない。人族の寿命だと、あの勇者どもも死んでおろう。


 これで、また、王道楽土の建設が出来る。今度は、一気呵成に、中央国家の宮廷に現われるぞ。


 人族の幸福になりたい願いで、誕生した我であるが、人族は、傲慢だ。

 せっかく、金持ちにしてやったのに、家族がバラバラになったりする。

 素晴らしい伴侶をめあわせてやっても、もっと、良い異性を探し出す。


 だから、我は考えたのだ。全ての者が感じられる幸福とは如何に?


 導かれた答えは、狂信だ。


 老いも若きも、人族も魔族もドワーフもエルフも、同じ神を狂信的に崇拝すれば、幸せになれる。それは、我では無くても良いのだ。いや、人でも良い。神で無くても良いのだ。


 サウス王国の実験では、末期、民は、骨と皮ばかりだったが、それでも、リリムに宝石を贈る事ばかり、考えていたではないか?確かに、幸せを感じていた。

 リリムは失敗だった。あの女は強欲すぎた。

次は上手くやれる。


「はい、黙祷やめ・・・それでは、ここから、次のお話をします。では、魔導師様。お願いします」


「「はい、聖女様」」

「防音魔法展開終了!これで、この部屋の話は外に聞こえません」

「有難うございます」


「防音魔法・・・」

「????何でカギをかけるの」

「フフフフフ、大事な話だからよ。悪い奴に聞かれてはいけない話なの」


 ・・・何だ。まだ、話の続きがあるのか?まあ、聞くか。


「実は、この話、まだ、続きがあります」


 ・・・実は、女コジキ、リリムの後ろに、黒幕がいたのです。

 その名は、「便所の桶にたかって汚物をすする神」です。


「ええ、何それ!汚い!」

「こら、男子、聖女様のお話を聞く!」


 ・・・何だと!


 ☆


「いたよ!山姥の死体を回収に来たね!逃げても無駄!音曲、マーキング・・じゃない。目印!」

「ギャア!」


 テケテケ~と音曲の音に、××××神〇▲●の足跡がくっきり地面に現われたの。オサヨ様のユニークスキルね。


 ××××神〇▲●は、女神教公会議で、名前抹消、廃神の決議を採択された神なので、名前は伝わっていません。

 惨めで、矮小で、卑怯で、弱くて、頭が悪い神だったと云われています。


 ××××神〇▲●は、夜中、認識阻害魔法で、こっそり、リリムに受け付けた魅了の種を回収にきたの。とても、弱い神だったから、仕方ないわね。


 法王様、魔王、勇者ヘイゾウ様、聖女オサヨ様と大勢の魔導師、兵に取り囲まれたの。

 そしたら、××××神〇▲●は、泣き叫んで命乞いを始めましたわ。

 犬のように、這いつくばって、法王様の靴をなめだしたの。


 ペロペロペロ~~

「助けて下さい!もうしません。私は矮小な存在です。どうか、靴をなめて綺麗にできます。その役目で生かして下さい!」


「ええい。信徒の献金で買った大事な靴、貴様の舌だと汚れるわ!」


 エイ!と法王様が蹴り上げて、××××神〇▲●は、カエルのように、伸びましたわ。

 そして、今度は、裸になって、踊りましたの。


「ホラ~、ホラ~面白いだろ。だから、存在を消さないでくれよ!何なら、やってもいいからよ。ホラ、神とやれるんだよ。チャンスだよ」


 とお尻を振り出しました。


「「「????????」」」

「やるって何を?」


「フフフフ、大きくなったら、分かるわよ」


 皆に呆れられて、同性のオサヨ様は、喝破します。


「最低ね。王子は、最後は、お姫様の治療と、民の命乞いをしたさね。神なのに、人以下!」


 法王様は呆れます。魔王は、提案します。


「なあ、どうする。こうも惨めだとな。今日から廃神、貴様は、「便所の桶にたかって汚物をすする神」だ!その名で、封印するのと存在を消す。どっちがいい」


「はい、それで、結構です。お願いします。私は、「便所の桶にたかって汚物をすする神」です」


「「「浅ましい」」」

「「「プ~クスクスクス」」」

 皆に、笑われ、「便所の桶にたかって汚物をすする神」は・・・


【違う!そうじゃないだろ。嘘もいい加減にしろ!】


「メアリーちゃん・・・」

「どうしたの。聖女様のお話を聞こうよ」


 一人の、赤毛で、2つ編みにしている少女が突然、大声を出した。孤児メアリーだ。

 集団の中では目立たないが、一人になると、目立つ。そんな子だ。


「はあ、はあ、はあ、はあ、お前ら、人族と魔族が、神を消す方法なんてありゃしない。封印だって、原初の女神の力を借りて、やっとじゃなかったか?」


 孤児メアリーは、如何に、自分は偉大であって、かろうじて、女神と魔神によって、封じられたかを話す。オサヨの三味線には少し苦戦したと話す。

 この話も誇張されている。


しかし、人族、メアリーの話に共通して、オサヨの三味線の話が出てくる。


 実際は、メアリーは、リリムに植え込んだ魅了の種を回収に、堂々と、空から、降りてきたのだ。

 彼女の名前は、現世利益神ハピアだ。


 リリムの死体は、旧サウス王国王城前広場に置かれた。周りには、魔法遮断の結界を張られ、勇者、聖女、法王、魔王と、

魅了の耐性のある者だけで、迎え撃った。




 ☆150年前、王都占領した日、深夜、旧サウス王国王城前広場


「・・・まさか、1日で、実験場が台無しにされるとは・・・救援が、間に合わなかったじゃないか?貴様ら、幸せになりたくないのか?」


「まさか!」

「神・・・」

「アンデット化した賢者ではなかったのか??それか、天才魔法士・・」

「どうする。神を屠る手段はないぞ・・」


王城広場上空、数十メートルに、白い貫頭衣と、オレンジ色の肩までの縮れ髪、10代後半の女子が浮かんでいた。



「フフフフ、まあ、いいわ。私が植え込んだ魅了の種を回収しなければね。あれには10万人分の熱狂が詰まっている。今度はうまくやれそうだ」


 一応、4人は、攻撃をするが、


「俺の抜刀をはねのける!」

「あたしの音曲が染みこまない!」

「フン、闇魔法が効かない。ありゃ・・・やっぱり、神じゃないか?」



「フォフォフォ、あれは、神だからな。そもそも、ワシの聖魔法も効かないぞな。

 こうなったら、祈るしかあるまいて・・・」


「「「法王様!」」」

「じいさんよ。そりゃ無いぜ」

「魔王よ。ワシも神とはおもわなんだ。アンデット化した大魔導師が長年の研究でたどりついたものと思っておったぞ。さあ、祈るぞ。祈るから、時間を稼げ」



「フ、人間どもよ。何故、幸せになるのを拒む?全く、贅沢よ。金持ちにしたら、したで、足りる事を知らぬ。

 我が、幸せを与えてやろうぞ。次は、大国の宮廷のど真ん中で、行うぞ。

 試算だと、数千万人が亡くなるが、それ以降は、争いのない平和な世界を約束しようぞ・・・新世界には、、お前達、魅了が効かない者は必要ないから、殺してやろうぞ」


「あれ・・・」

 お小夜が何かに気が付きます。


「もしかして、あんた。あれかね~」


 お小夜は、意を決し、


 三味線を弾きます。


 ペケペケペケペン!


「ナンマンダー、ナンマンダー、ナンマンダーーー」


「何じゃ。そりゃ、異世界の経文なんか効かないぞ?」


 ハピアは理解に苦しみが・・・


 お小夜は、念仏を唱え続けました。

「・・・・おい、お小夜!」

「いいから、あたしと平三さんしか出来ないよ!邪よ鎮まれ!」


「「ナンマンダー、ナンマンダー、ナンマンダーーーー」」


・・・何だ。妙に気が静まる・・・私のしていたことは正しかったのか?いや・・・そうじゃないだろう・・・


「効いてる?」


「邪神よ!鎮まれ!鎮まれ!南無阿弥陀仏!」

「ナンマンダーナンマンダーーー」


お小夜が念仏を唱えている間、何か葛藤しているようで、ハピアは攻撃をしません。


 プツン


 しかし、お小夜の三味線の弦が切れます。


「ありゃ、張り直すまで、お待ちくだらんせ?」


「待つかよ。人のくせに・・・後でゆっくり、その呪いの意味を聞こうぞ!」


 しかし、


「あれ、動けない」


「ふう~良く来て下さった」

「魔神様、有難う存じます」


 ・・・お小夜が時間を稼いだおかげで、女神と、魔神の召喚が間に合った。

法王と魔王が、祈ったのだ。戦いの最中に祈る愚行をあえてした。


 ハピアは、空間から、手が出て、肩に手で押さえつけられていた。

 女性の手と、褐色の肌の色の手だ。それぞれ、光の空間と、闇がにじり出ている空間から、手が出ている。

 原初の女神と、魔神だ。


「二柱も?貴方方は、地上に降りてはいけなかったじゃないのか?手助けだけ許される協定だろう?」


「そちに言われる筋合いはありません」

「お前が言うな」


「「だから」」

「手助けをしているの」

「手だけなら、協定違反じゃない」


「何じゃそりゃ」

「「封印!」」


 女神と魔神が、女魔導師を封印した。


「「「「ハハー、女神様!」」」

「ハハー魔神様!」


光の空間から声がします。


「聞け。我が忠実な僕達よ。現世利益神は、封印した。150年は封印されるであろう。

 その間に、改心して、善神になるのなら、崇めるのも。うち捨てるのも好きにせい。

 しかし、150年経っても、悪神のままなら、汝、人族に討伐できるようにしようぞ」


「「「畏まりました。女神様」」」


「魔神様。魔族にも言葉を」


「あ、ダークエルフの奉納舞よろしく」


「え、それだけなのかよ」


 手と空間は消えて行った。



「ところで、お小夜どん。あれ、何で念仏を唱えた?」


「いや、日の本では、神が妖怪化して、悪さをしてね~。それを鎮める一族がいるのさ。私の家はその一族の呪術師で、妖怪を鎮める家系だよ。

何か、あの神様、安定しないね。

もしかして、妖怪化した神と思って、術をかけたのさ。

私の姉さんは、般若心経でそりゃ、見事に、妖怪から神に戻したけど・・」


「後で詳しく教えて下され」

 

その後、人族と魔族は協定を結ぶことになる。


「フォフォフォ、何だか争うのは馬鹿らしくなりましたの」

(ドラゴンを味方につける調整力、魔族は更に強力になったわい)


「そうだな。じゃなきゃ、サウスの奴らも浮かばれないな」

(チ、あの布陣、絶対に、魔王ぶっ殺し作戦じゃねか。分かっていても対処出来ない)






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