第4話 フォローって急にしても良いのかな?



 その後の練習はどうも集中出来なかった。


ドリブル練やパス練といったところは特にだ。


一方のシュート練は、バシバシと決まっていく。


「おお、日比野今日は一段とエグいシュートだな!俺も負けてられない…!!」


先輩は勝手に闘志を燃やしていた。


そりゃあ最後の大会が近くて、全国が懸かっている。当たり前だ。


みんなの視線は、ただ”全国出場”の一点張りだ。


僕はといえば、美鈴さんの一点張りだ。


もうそれはそれは釘付けである。


さっきからずぅっっと美鈴さんの方に視線が動いてしまう。


バレないようにしないと…!!


トントン


ふと誰かに肩を叩かれた。


「明里、流石に視すぎだろ。」


こいつは同じ中学校の板端快都。ポジションはミッドフィルダーである。


「そんなに視てたかな?」


「そりゃもうガッツリ。穴が空くんじゃないかと思うくらいに。」


「誰視てるのかも?」


「美鈴さんだろ。誰でも分かる。」


嘘だろ…!まだ誰にも言ってないのにバレてしまった!


「快都、しーっな。しー。」


「日本語を使ってくれ。まぁ言いふらしたところで、だしな。」


助かった!快都マジでいいやつだ!


「あ、そうだ。」


「何でしょうかっ⁉」


まだ何かあるのか?怖い怖い。


「美鈴さん狙ってるやつアホみたいに多いから頑張れよ。それじゃ〜」


と言って、一年限定のマークの練習に行った。


いやーそうだろうなぁ。うんうん分かるよ、美鈴さん可愛いもんねー。


負けてられないな!!


今度は僕から話かけてみよう!







 家に着き、風呂も食事も終えて自由時間。


我が家の伝統的なもので、一時間後には筋トレだ。


美鈴さんのインステ欲しいな…


そうだ!


「なあなあ、いきなり男子にインステフォローされるのどう思う?」


アイスを頬張る妹、日比野京姫みやびに聞く。


「急に何よ、お兄。好きな子でもいるの?」


うぐっ、なんて感の鋭い…


「…まぁ、そんなところ。」


「へぇ〜!どんな子?何部なの?」


食い気味に寄ってくる。女子ってこんなもんなのか?


「母さんや父さんに聞かれたくないんだけど…」


「じゃあお兄の部屋で話そっか。」


「おう。」


僕の部屋にぞろぞろと移動した。







 「で、どうなのよ。どれくらい仲いいの?」


「えっと、何回か話したくらいで、今日、外周中に話しかけられたくらい…」


「お兄ちょろくない?」


「うっさい。」


「でも、話しかけられるなら良いじゃん。おんなじクラス?」


「いや、隣のクラス。」


「いよいよなんで好きになったのか分からんぞ。一目惚れか?」


「そんな…ところかな。」


「うわぁ…照れないでくれる?キモイわぁ。」


辛辣な妹の言葉が刺さる。痛い。


「写真とか持ってないのー?気になるんだけど。」


「あいにく一枚も無い。」


「ケッ!使えねえ。」


なんか怖いんですけど…京姫みやびさん。


「で、フォローするのってどうなのって話は?」


今日の妹は凶暴だが、頑張って聞いてみた。


「別になんとも思わないよ。てか、それくらいの関係ならLINA繋いだら良いんじゃないの?」


「僕にその勇気があるとでも。」


「この鶏ブラザーが。」


そう言うと、京姫みやびは部屋を出ていった。







 京姫みやびが言ったことがホントなら良いなと思う。


僕は、インステのフォローをする決意をした。


なんとかなれ、なんとかなれ。なんとかな~れ!


ポチッ{フォローリクエストが送信されました}


うおおおおおおおお!!やりきったぞ妹よ!!!


後は承認されるのを待つだけだ。


デレレンッ♪


通知音が鳴る。恐る恐るスマホを開く。


残念すぎることに、快都からのLINAだった。



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