なにかが始まる―――!

「地獄の狭間」、再び。

じゅわーとわめき溶けていくフレイアドッグ。

おお。2時間の戦いが幕を閉じた―――。


「アカネちゃん、おめでとう」

「よく頑張ったね~!」


にっこり笑ってくれるアイちゃんとセナさん。一方ライトくんはジト目でこちらを睨む。


「遅っ。もう見飽きたわ」


セナさんに聞こえないくらいで呟くと、またセナさんに聞こえないように舌打ちした。

怖ぇぇぇ

あかね、ライト君をライトさんって呼ぶように誓います。


と、会話を一通りしたら、

目の前がいつかのように暗くなった。


「なっ」


気が付いて周りを見渡しても、そこには私一人だ。


するとコツンコツン、と、ハイヒールの音。


「またあなたですか……」


前回の暗闇がフラッシュバックする。


「また、とは少々辛口ですね。まだ二回目ですよ。お互いの性格も全く分からないのに」


「そんなこと言ったって……。聴覚を奪いに来たんですか?そんな人たちはろくな性格じゃありません」


「偏見ですね。まあ、そのくらい冷静な判断が出来る人こそ、私たちと仲間になっていただきたいのです」


「そんな善人ぶったって、私、天使なので」


「そうですか、残念です。しかしあなたは、ここから抜け出す方法を知らないでしょう?」


「あの時と違って、さすがに習いましたよ。設定文字でしょう?」


「人類はそこまでたどり着いているのですね……。とても都合がいい」


「え?」


「あなたにいくつか知識を授けましょう」


そういって、彼女は私の耳元に口を近づけた。

よけようとするも、身体が動かない。魔法をかけられたんだ。


「ひとつ。「誤算」なんて嘘ですよ。すべてはこちらの手のひら」


「ちょ……」


「ふたつ。地獄の狭間は、一つの設定文字だけでは作れない。約100語も必要。そして地獄の狭間で光魔法をかければ……ふふ」


「―――‼」


「みっつ。私の名前はユイ。アイの姉。よく覚えておくといいですよ」


ユイと名乗る彼女が顔を遠ざける。

そして、視界がぼやける。

にやりとした口元が頭に残っていた。

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