いかにも敵っぽい

「「地獄の狭間」へようこそお越しくださいました」


礼儀良く挨拶をして、こちらに向かってくる。

そして、唇を動かした。


「あなたのお陰で誤算が入りました。どうしてくれるんですか?」


不敵に笑う笑みから、妙な威圧を感じる笑みに差し替えた。

しかし、私には天使という勤めがあった。今まで何人から「死神だ」と言われ続けてきたか。

それに比べれば、大したことはない。


「何を言ってるのかさっぱりですね?詳しく、とことん説明して頂いても?」


いま、この中で一番冷静だと思っている。

周りは驚きであふれているし、何より驚くほど自分がクールだ。


相手だって私が反論することを予想しなかったのか、一瞬だけ瞳が揺らいだ。すぐに動揺は見えなくなってしまったが。


「まぁ、いいでしょう。私たちを脅かした罰として、代償をいただくとします」


「代償とは何です?」


「あなたの聴覚です。私たち悪魔族も進化によって耳が聞こえづらくなってしまいましたから」


「いやですね。絶対あげないんだから!」


聴覚を狙ってきた……なんでだ。わざわざ私にやらなくたって……。

その一人に私が選ばれた?

……偶然でも嫌だなぁ。


「じゃあ、そうですね……。あなたを、悪魔族の仲間として迎え入れましょう」


「無理だと思いますが。見えません?私の頭の上に、天使の輪があるんですよ。悪魔と天使は分かち合えないのでは」


「そんなことはないですよ。やろうと思えば……」


「私は気が向かないので。さようなら」


そういうと、元の世界に戻っていた。

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