第6話 下校

 優真と菜々子は学校から帰路に就く。学校の正門を通過し、朝に降りた駅に向かう。その間、本日に関する他愛のない会話を交わす。


「今日は一緒に帰れるけど、明日は部活があるから不可能だよ」


「部活? 分かった」


 部活の意味は分からなかった。だが、優真に怪しまれないために、知ってるふりをした。部活など想像もつかない。どんな物なのかも定かではない。


「うん。そう。だから明日の帰宅は1人でお願いね! 」


 申し訳なさそうに、優真は両手を合わせる。謝るようなポーズを取る。


「了解」


 明日、1人で帰宅する。そう思うと、自然と憂鬱な気分になる。全く知らない世界で、単独で自宅まで帰る。それは不安だ。学校から自宅までの道も正確には覚えていない。このままでは、迷子確定だろう。


「部活ってことは。何かやってるの? 」


 率直な疑問を口にする菜々子。何かの活動であることだけは予想できた。だが、部活がどんな活動かまでは分からない。


「あれ? 菜々子は知らないのか? 何回も言わなかったけ? 」


 不思議そうに、優真は首を傾げる。


「…ごめん。忘れちゃった」


 その場凌ぎで、菜々子は意図的に小首を傾げる。完全に記憶にないフリだ。


「まあいいけど。バスケットボールをプレイしてるんだ。週に3回しか練習がない緩い部活だけどね」


 優真は部活の内容も付け加えて、説明する。


(バスケ? 何それ? )


 1つの疑問が菜々子の脳内に浮かぶ。バスケはスポーツだが。異世界の人間には馴染みが無い。


「ふ~ん。そうなんだ。今思い出したよ」


 話を合わせるために、コクコク頭を縦に振る。これ以上、怪しまれないためだ。

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