第5話 授業

 1時間目は日本史の授業だった。2年生になると、一宮高校は文系と理系に別れる。優真と菜々子は文系を選択する。その中でも世界史ではなく、日本史を選択する。


 菜々子において、日本史の授業は意味が分からなかった。以前、自身が身を置いていた世界の歴史と大きく異なる。


 全く耳にした経験が無い名称ばかりが、鼓膜を刺激する。


 (一体、何なの? この世界の歴史は……)


 菜々子が抱いた疑問も当然である。


 一方、優真を含めた他のクラスメイト達は、授業の内容を理解しているようだ。皆が教員によって黒板に板書された内容をノートに書き写す。


 見よう見まねで、菜々子もノートに、黒板に記載された内容を映す。教科書やノートは、事前に学生カバンに準備してあった。菜々子はそのまま、自宅から持ってきた形だ、


 ノートに黒板の内容を記入しながら、訳の分からない教員の話が耳を通る。実に忙しい。


 だが、日本史の授業を受けて明らかになったこともある。


 現在、自身が身を世界は、自分の世界ではない。つまり、異世界なのだ。漫画やアニメで頻繁に舞台となる、あの異世界だ。


 日本史の歴史が証明する。


 飛鳥時代など、以前の世界では1度も聞いたことが無い。歴史の授業でも習ったことはない。そんな世界を、菜々子は知らない。


 ―――異世界。


 そう結論付けるしか無いだろう。


 洞察に辿り着いた。そんな菜々子を置いていくように、授業はドンドン進行する。教員も前に板書された内容を黒板消しで消す。


(もう。分からないことばかり)


 必死に追いかける形で、菜々子は45分間の日本史の授業を受けた。終わった頃には多くの体力を消耗していた。

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