第4話 教室

「焦ったよ。まさか購入してない、焼きそばパンを店内で食べるなんて」


 自然と顔に流れる汗を、優真はタオルで拭き取る。


 未だにコンビニでの出来事が、衝撃的で頭から離れない。


「ごめん…迷惑かけて」


 申し訳なさそうに、静かに菜々子は頭を下げる。


 優真と菜々子は隣同士の席だ。


「いや。そんなに畏まって謝らなくていいから。それぐらい腹がすいてたんだよね? 」


 菜々子の態度に焦り、優真は早口になる。菜々子の表情から反省していることが理解できた。


「…うん」


 恥ずかしそうに、俯きながら、菜々子は頷く。空腹を認知され、恥ずかしい思いを抱いたのだろう。


「本当は知らなかった。食べてはいけないルールを」


 ボソッと、消え入りそうな声で、菜々子は呟く。


「うん? 何か言った? 」


 菜々子の言葉を聞き取れず、優真は聞き返す。手を耳に添え、菜々子との距離を縮める。


「…何でもない」


 俯いたまま、菜々子は苦笑いを浮かべた。居心地が悪そうだ。


「そうなんだ。何か困ったことがあったら、いつでも聞いてね」


 深く追求せず、優真は笑顔を見せた。

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