陰キャはいつでも陰キャでありたい
久々の更新なので、軽くあらすじを記載しておきます!!
※ネタバレあるので気をつけてください。
高校生にしてレベルカンストの領域に達している主人公、大桃怜。
彼の人生は、有名配信者たるユリア――本名・佐倉詩織――との出会いによって大きく変わることとなる。
怜はもともと平凡な人生を好む陰キャ。
いじめっ子からの乱暴を受け続けてもなお、それでも「平凡な男子高校生」でいたかった。
危機から救ってもらったことで、詩織は怜にベタぼれ。
平凡を好む怜とは裏腹に、しつこく怜に絡んでいくこととなる(詩織にもヤンデレ気質あり)。
それがいじめっ子である鬼塚の怒りに触れた。
鬼塚も詩織のことが大好きであり、そんな詩織と親しくしている怜を許せないと。
バックには暴力団が控えていることもちらつかせるが、しかし怜はそれさえどこ吹く風。
頭に血が上った鬼塚は、暴力団に呼びかけ、大勢で怜を始末しようとする。
ダンジョン外ならステータスが適用されないので、ダンジョン外で始末しようとしたのだ。
しかし怜はその暴力団さえ返り討ちにする。
なぜならば、怜は日本でトップクラスの暴力団組長の息子。
異常なまでに平凡を追い求めていたのは、自分の出自ゆえに、多くの友達が離れていったから。
だから平凡であり続けることで、普通の人間のように生きていきたかった。
その暴力団たちを始末したあと、かつて怜の面倒を見ていた暴力団員――刃馬が登場。
そこで怜は不思議なことを知る。
鬼塚のために組員が押しかけるのは謎だが、そもそも最近、組全体がおかしな空気に包まれていること。
もとより組そのものは、鬼塚に加担するのが本意ではなかったこと。
これから原因追及にあたるので、それまで少し待ってほしいことなど。
しかしいずれにせよ、これにて怜の正体は詩織にバレてしまった。
怜は今まで通り、詩織に別れを告げられることを覚悟したが――しかし詩織は、そんな怜さえ受け止めた。
二人で支え合って生きていくことを誓ったのである。
それから怜は、ダンジョン管理省の事務次官――飯島に会ったり、オリハルコンスライムを倒しまくってレアアイテムを手に入れ続けた。
※また、ここでいつの間にか怜のアイテムボックスに入っていた「世界終末の剣」
についての言及もある。最後の素材である【???】だけ回収できず、飯島に相談したが、飯島さえこの剣は心当たりがないとのこと。
かくして運命の日は訪れる。
いつも通り登校しようとした怜を、再び錯乱した暴力団員たちが襲い掛かってきたのだ。
しかも今度は警察さえも錯乱状態に陥っており、暴力団と警察が手を組んで、怜を始末しようとしてくる状態。
※電話をかけてきた飯島いわく、警察全体がおかしくなっているという。事態を詳しく説明したいので、政府専用ダンジョンに来てほしいとのこと。
怜はなんとかその緊急事態を突破し、駆けつけてくれた刃馬とともに、飯島のもとへ向かうのだった。
↓以下、本編です↓
――――――――――
それから刃馬は、詩織の家へと車を走らせた。
俺からそう頼んだわけではないのだが、彼女もまた、ずっと俺と行動をともにしてきたからな。警察や暴力団員に狙われる可能性が高いと判断し、念のため迎えにいった形である。
結果、やはり詩織の家には数名の暴力団員が押しかけており――。
「おらよ……っと!」
俺が駆け付けたことで、間一髪、救出することができたのだった。
「れ、怜君……!」
さすがに怖かったのか、即座に俺に抱き着いてくる詩織。
「ありがとう……! この人たち、急に窓を叩き割ってきて……私もさすがにびっくりしちゃって……!」
「気にするな。こんな事態になったら、誰だって困惑するさ」
「怜君、怜君……!」
いつもは朗らかな彼女も、さすがに恐怖を禁じえなかっただろうな。滂沱の涙を流しながら抱き着いてくる彼女を、俺はなにも言わず受け止める。
「ありがとう。怜君がいなかったら、私、私……」
「…………」
しかし、本当に信じられない事態だな。
ざっと気配を探るだけでも、新たな刺客がこちらへ向かってきているのが感じられる。まずは詩織を落ち着かせたいところだが、おそらくそれほどの余裕はないだろう。
いや。
それどころか――。
「ちっ…………!」
俺は詩織をきつく抱きかかえると、そのまま前方に倒れ込む。
ドドドドドドドドドドド!
なんとそのコンマ数秒後には、割れた窓の外から、銃弾が絶え間なく襲い掛かってくるではないか。
この連射性能、明らかに拳銃のそれではない。
おそらくは特殊部隊たるSATが使用する小型の機関銃――サブマシンガンだ。
「えっ……⁉ こ、これは……!」
「話はあとだ! 外で刃馬が待ってる! ひとまず車に乗り込むぞ‼」
そうして俺は、詩織を抱きかかえながらSATの攻撃を掻い潜り、なんとか刃馬の車へと舞い戻るのだった。
それから数十分後。
詩織に状況の説明をしつつ、俺たちは無事に飯島の指定した場所へと到着した。国会議事堂の両サイドに広がる庭園にて、飯島が待ち受けていたのである。
ちなみにこれは余談だが、警察のすべてが洗脳されたわけではないそうだな。
飯島を護衛しているSPも正常な意識を保っているようで、今のところ異常行動は見られない。
また霞が関周辺では警察同士が銃撃を繰り広げていたので、せめてここだけは死守すべしと、警察も必死になっているのだろう。
「おお……! 無事に辿り着いたか、三人とも」
「へっ、こっちには怜様がいるんです。万に一つもありませんよ」
出迎えてくれた飯島に対し、刃馬が笑顔とともに応じる。
さすがは今まで修羅場を潜り抜けてきただけあって、この状況でも取り乱している様子はないな。
「それで、どこなんですか? 政府専用ダンジョンっていうのは」
「うむ」
詩織の問いかけに対し、飯島がこくりと頷く。
「実は警察たちが暴れ出す直前に、このダンジョン内部でも異変が起きていてね。まあ……実際に見てもらったほうが早いだろう」
そう言って、飯島は懐から宝石のようなものを取り出す。
ほのかな紫色に輝くそれは、徐々に光を帯び始め――。
そして数秒たった頃には、俺たちの目の前に漆黒のゲートが出現していた。考えるまでもなく、政府専用ダンジョンへと通じているのだろう。
と。
「…………っ‼」
ふいに胸部に強烈な痛みが走り、俺はその場に屈みこんだ。
「れ、怜君……! どうしたの?」
「いや……気にするな。なんでもない」
「な、なんでもないって……」
心配そうに見つめてくる詩織だが、俺としても、今自分に何が起こったのかわかっていない。
強いていうなら、一瞬だけなんらかの映像が脳裏に浮かんできた気がしたが……。
それがいったいなんの映像なのか、俺とどう関わりがあるのか、まるでわからなかった。
「…………」
飯島はそんな俺を数秒だけ見つめたあと、ゲートに視線を戻して言った。
「報告によると、ついさっき、このダンジョンから妙な瘴気が漂ってきたようでね……。その直後、暴力団たちの異変が引き起こされたんだよ」
「なに……⁉」
飯島の言葉を受けて、刃馬がぎょっと目を見開く。
「つまり今回の事件は、このダンジョンがきっかけで引き起こされているわけですか?」
「ええ、そう見ています。ですが瘴気が発生した時点で、私のほうでいったんゲートを閉じましたからね。ゆえにまだ確証はありませんが、その可能性が高いと考えています」
なるほど。
俺をここへ呼び出したのは、政府専用ダンジョンが安全だからというわけではなく――俺にこの異変を解決してもらうためか。
飯島には先日、俺のカンストステータスを見せたばかりだからな。
たしかに理に適ってはいるだろう。
「……はあ、仕方ねえな」
正直、こんなのは柄じゃない。
世界を救うなんてのは〝正義の味方〟の役割だ。
組長の息子として生まれ、今まで日陰者として生きてきた俺は――こんなふうに脚光を浴びる資格すらないのだ。
ただただこれまで通り、平凡な高校生として生きていければそれでいい。
けれど――俺は見てきた。
みずからの行いを反省し、危険を承知で暴力団や警察官に突っ込んでいった生徒たちを。
俺が組長の息子だと知ってもなお、俺を受け入れてくれた女性を。
こんなクズな俺でも戦う理由ができたのなら……全力を尽くしてやるだけのことだ。
「……飯島さん。このダンジョンを攻略する前に、ひとつだけお願いがあります」
「ふむ。なんだね?」
「ダンジョン攻略の立役者は、あくまで俺ではなく
「…………ふ」
俺の言葉を聞いて、飯島がふっと笑みを浮かべる。
彼だけじゃない。
刃馬も詩織も、みな俺に優しげな視線を向けてきていた。
「いいだろう、その要望聞き入れた。――どうか頼む怜君、この危機を救ってくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます