変わらないヤンデレ配信者

 ――ごめん怜くん。ママから、怜くんとはあまり遊ばないでって言われて……――


 ――え、どうして? まだあのゲーム途中だよ? あんなに楽しかったのに……――



 あのとき・・・・から、俺は完全に人から遠ざかるようになった。


 友達を作ろうともせず、そしてもちろん、恋人が欲しいとも思わず。社会の隅っこで、ひたすら凡人に徹していようと考えていた。


 だからもちろん、こうやって女から積極的に求められたことは一度もない。


「怜君……」


「お、おい、やめろ……!」


 そのまま今度は抱き着いてこようとしたので、俺は思わず彼女の両肩を掴み、自身から引き離した。


「なに考えてんだ。いくらなんでも急すぎるだろ」


「え……でも」


 不満そうに唇を尖らせる詩織。


「怜君はそういう欲求ないの? だって青春真っ盛りでしょ?」


「お、おまえな……」


 もちろん、まったくその気持ちがないわけじゃない。


 詩織が有名配信者として名を連ねているのは、その圧倒的な可愛らしさにも理由があるからな。しかもスタイルも抜群ときたら、年頃の男が気にならないほうがおかしいだろう。


 ――だが。


「安心しろ。別に無理やりこういうことをしなくても、離れるつもりはねえよ」


「え……? それって、どういう……」


「――こういうことだ」


 言ってから、今度は俺から詩織と唇を重ね合わせる。


「あ……」


「おまえにばっかり主導権を握られるのは性に合わないんでね。挑発してきたのはそっちだ……覚悟しておけよ」


「あ、怜君……!」


 そう言って俺に抱かれる詩織の顔は、めちゃめちゃ火照っていた。



  ★



 ということで、気づいたら朝になっていた。


 これが俗にいう朝チュンというやつか。

 人から遠ざかることを決めた俺が――まさかこんなことになるとはな。


「ん……?」


 しかしベッドの横に詩織の姿はない。


 いったいどこにいったのかと思ったら、なんと早くも台所で料理を始めているではないか。


 卵に火が通っている時のうまそうな音が、室内中に響きわたる。


詩織・・……もう起きたのか」


「あ、怜君おはよ! 朝ごはんなら作っておくから、そこに座ってて!」


「……なにか手伝うか?」


 手伝えることなんて全然ないけどな。


「いいのいいの! 私はね、怜君の傍にいれるだけで幸せなんだ♪」


「そ、そうか……」


 言っていることの意味はよくわからないが、まあ、これが詩織の通常運転だ。


 さして気にすることもなく、俺は言われるがままに食卓に座る。


 朝食は卵焼きとベーコンと白米、オーソドックスなレシピだった。だがやはり、人の手が入った料理はうまいもので……平らげるまであっという間だった。


「ふふ……怜君、食べるの早いね」


「……悪いかよ」


「ううん、ただ幸せだなって思っただけ」


 詩織もそう言って最後の米を口に入れると、その後はなぜか、やや心配そうな表情で俺を見つめた。


「……どうした?」


「怜君。また何かトラブルに巻き込まれてる?」


「…………」


「隠さなくたっていいよ。昨日刃馬さんと話してたのは、きっと暴力団の件がまだ片付いてないからだよね」


 ほんとに鋭い女だ。

 俺からは何も言ってないのに、ここまで嗅ぎつけるとは。


「……その通りだが、俺は別に暴力団の組員じゃない。この問題に積極的に介入するつもりはねえぞ」


「……だったらさ!」


 バン! とテーブルに身を乗り出し、詩織は目を輝かせながらとんでもない提案をした。


「私のチャンネルを使おうよ! 怜君が登場してくれる動画はめちゃバズってるし、最近ちょっと伸び悩んできたし……。社会の闇に突っ込む配信者、かっこよくない?」


「お、おまえな……」


 危ないからダメだ、と最初は言おうとしたものの。


 ダンジョン調査庁がもし本当に危険な薬物実験をしていたのだとしたら、詩織はたしかに頼りになる。鬼塚の一件を見ても、マスコミが完全に掌握されているのは想像に難くないからな。


 マスコミを上回る最強のインフルエンサーときたら……たしかに詩織がうってつけだろう。


「よし、じゃあそれで決定ね!」


 俺の沈黙をどう捉えたか、詩織は親指を突き出し、笑みとともに言い放つのだった。



「……臨時ニュースです、臨時ニュースです。東京の霞が関において、複数の不審者がいたとの情報が入っています。不審者はいずれもうつろな目をしており……」



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