怠惰な陰キャ、レアアイテムを手に入れまくる



「さて、次は報酬だな……」


 ダンジョン内でモンスターを倒すと、敵の強さに応じた報酬を貰うことができる。


 具体的には、各種モンスターの素材と、報酬金の二種類といったところか。


 報酬金を貰える意図としては、脅威的なモンスターを倒すことができれば、単に他の探索者の安全が担保されるから。


 ダンジョン内にある資源、あるいはモンスターの素材は、ほとんどダンジョン外では手に入らないものばかり。

 そしてその資源を用いて、日本は近年、急激な成長を遂げてきたわけだ。


 つまり探索者の安全を確保することは、すなわち国力の増強と同義であり――国もまた、大盤振る舞いで報酬金を払ってくれている。これが事の経緯だ。


 そして今回、ステータス画面に追加されていた金額は。


「ふむ……六千万ゴールドか」


 ちなみにこのゴールドは、一ゴールドあたり一円で取り換えることが可能だ。

 つまり俺は、この数時間で六千万円を得たことになるな。


 オリハルコンスライムを沢山倒したにしては少なく感じるが、まあ詩織と半分になっているからな。実際の数値は一億二千万だ。


 鬼塚に取られた50万なんて、ここまでくるとあってないようなものである。


「う~ん……」


 同じくステータス画面を眺めていた詩織が、なにやら難しい表情を浮かべている。


「なんだ、どうした?」


「だってさ、オリハルコンスライムを倒したのは怜くんの功績じゃん。私が貰うのもどうかな~って」


「なんだよ。そんなつまんねえこと気にしてたのか」


 俺は口元を緩め、ステータス画面をいじりつつ次の言葉を紡いだ。


「気にすんな。金ならもう正直かなり持ってるし、おまえがいなきゃこんなにオリハルコンスライムを倒せなかった。その金は自由に使え」


「で、でも……」


「いいんだよ。素直に受け取れ」


「れ、怜くん……」

 詩織がうるうるした瞳でこちらを見上げてきた。

「ほんと、かっこよすぎ……。強いだけじゃなくて器も広いなんて……」


「言ってろ」


 俺はため息をつくと、引き続きステータス画面を操作する。


 報酬金のあとは、手に入れた素材の確認だな。

 これも気になることなので、いまのうちに目を通してしまおう。


――――


・オリハルコンスライムの硬膜  ×213

・オリハルコンスライムの外殻  ×131

・オリハルコンスライムの魔力袋 ×183

・オリハルコンスライムの至宝玉 ×17

・オリハルコン         ×360


――――


 まあ、こんなところか。


 至宝玉はかなりドロップ率の低い素材だったはずなので、これを17個も入手しているのはなかなかの僥倖だな。


 ……となると、あれ・・の作成にもう一歩近づいたということになるか。



――――


世界終末の魔剣


 ・血染龍の魔眼         ×100(999)

 ・死魔導士の杖         ×100(999)

 ・神縁龍の逆鱗         ×100(999)

 ・オリハルコンスライムの至宝玉 ×100(107)

 ・???            ×1(0)


――――




 括弧かっこで記されているところが俺の所持数で、その手前にある数字が、武器作成時に求められる数字だ。


 つまりこの魔剣は、かなりレアな素材を100も集めてようやく作成できる武器であり――。

 今回オリハルコンスライムを倒しまくったことで、その完成に一歩近づいたことになる。


 肝心の“???”がいったいどんな素材なのか、それはいまだわからないけどな。


 でもオリハルコンスライムを倒したおかげで、このやばい武器の完成に一歩近づいたのは事実だろう。


 ……さて、ステータスの確認はこんなもんか。

 晴れて新能力も確認できたし、今日はもう帰るか。もう22時をまわってしまったので、そろそろ眠くなってきたところだ。


 ――と。


「あ、あれ……、こっちのオリハルコンスライムも死んでる……?」

「おかしいな。我々が一番先に最下層に来たはずだが……」

「リポップしているから狩りに支障はないとはいえ……いったい誰がこんな荒業を……?」

「オリハルコンスライムなんて、我らSランク探索者でさえ一体二十分ほどかかるはずだが……」


 おっと、やばいやばい。

 詩織ユリアもいる手前、同業者とかちあいたくはないので、探索者のいないフロアでのみ戦ってきたんだけどな。


 ステータス画面を確認しているうちに、いつの間にか探索者が近辺まで戻ってきていたらしい。


「それじゃあ帰るぞ詩織。掴まれ」


 そう言って、俺たちは《西桜のダンジョン》から抜け出すのだった。

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