ざまぁ回 鬼塚、燃えまくる
「くそっ……! くそ……‼」
一方その頃、
本来であれば、今日はサッカー部の活動があった日。
しかし鬼塚は部活に顔を出すこともなく、今日はまっすぐに家に帰ってくることになった。いや……そうせざるをえなかった。
――あ~あwwww 人生終わったねぇww 残念でちゅねぇwwww――
――今時いじめとかダッサw やってて恥ずかしくなかったの?――
――学校にも鬼電がかかってるってさww おまえの人生、ジ・エンドwwww――
――ねぇねぇ、順調だった学校生活が転落してどんな気持ち? ねぇねぇww 教えてくれよ、どんな気持ち? ねぇねぇねぇwwwwww――
そう。
先ほどから連続して届いてくるDMに、鬼塚は精神的に追い込まれていた。
各種SNSは途端に拡散され、まるで鳴りやむことのない通知の嵐。焦ってSNSを退会しても、どこかで晒していたであろうメールアドレスも簡単に特定され、そっちにも罵詈雑言が飛んできている。
「ひぃ……。な、なんでだよ……。俺はなにも悪いことしてねぇだろ……」
今日の放課後、なぜだか有名配信者たるユリアが現れ。
自分が大桃怜に対して行っていた暴行が、そっくりそのまま世界中に配信されてしまった。しかもあろうことか……彼女が大桃を庇うような形で。
そしておそらく、それが引き金になったんだろう。
各SNSへひっきりなしにDMが届くようになり、もはや部活に勤しんでいる場合ではなくなった。根暗な帰宅部と同じ時刻に帰るのは本当に屈辱的だったが、もうそれを考えていられる余裕もなくなったのだ。
そして……それだけではない。
――なにも言えませんか、情けないですね。そもそも理由なくして人を傷つけるなんてゴミ以下の最低野郎です。私の大事な怜くんを傷つけたあなたにはそれ相応の説明責任が生じますが、まあ私は優しいので許して差し上げましょう感謝しなさい――
突如学校に現れた有名配信者ユリア。
詳しい理由は不明なものの、彼女はなぜか、異常なまでに大桃に肩入れしていた。観衆の前で情けない姿を晒している大桃に対し、なんの躊躇もなく手を差し伸べたのである。
それもまた……鬼塚にとっては大きなストレスになっていた。
ユリアといえば、日本中の男が憧れてもおかしくないくらいの美少女。
長い黒髪に卵型の可愛らしい顔、うっとりするほどの透き通った肌。それでいて男性の夢をすべて詰め込んでいるかのようなスタイルをしており、特に胸は……めっちゃでかい。
それでいて常に明るくて天真爛漫、そしてちょっぴりドジっ子。
そんな魅力的な彼女に対し、鬼塚が熱い思いを抱くまでそう時間はかからなかった。
ユリアに気に入られる男になるために、コーリアスともコラボをして少しずつ知名度を上げていった。
より魅力的になるために、大桃から巻き上げた金でお洒落に徹し続けた。
なのに――。
彼女のあの冷え切った態度を見るに、取り返しがつかないレベルにまで嫌われたことは明らか。
しかもあろうことか、いままでずっと見下していた大桃なんかと手を繋いで帰っていったではないか。
このこともまた、鬼塚のストレスに拍車をかけていた。
――まさかいま被害者ヅラとかしてねぇよなあww おまえは立派な加・害・者だからなwwwww――
――せっかく名門学校に入ったのに、その努力が全部無駄になっちゃったねぇwww 悔しいねぇwwww――
「く、くっそ……!」
しかしユリアのことを考える間もなく、厳しい言葉の綴られたDMが次々と押し寄せてくる。
これもまた、鬼塚にとって最も耐えがたいことの一つだった。
学校ではそんなことをしてくる奴は一人もいなかったし、学校中が自分に従うのが当然だと思っていた。
それなのにこんなことになるなんて……まるで理解ができなかった。
自分はただ、大桃を苛めていただけ。
苛めなんて学校ではよくあることだろうし、そんなに深刻に考えるようなものでもない。実際に鬼塚は憂さ晴らしに大桃をいたぶっていただけだから、ここまで炎上する意味が正直わからなかった。
そう……自分はいっさい悪くないはずなのだ。
悪いのはただただ一人、大桃怜だけ。
あいつがダサい風貌をしていて、サンドバッグに最適な外見をしているのが全部悪い。自分はただ、心の赴くままにあいつを殴っただけだ。それのいったいどこが悪いというのか。
ピロン♪ ピロン♪
「ひっ……!」
開き直ったのも束の間、またDMが届いてきて、鬼塚はまたぶるぶると身を震わせる。
――おまえ、ちょっとは反省できてる?wwww できるわけねぇよなあ、脳みそチンパンジーみてえな顔してるしwww――
――ねぇねぇ、なんでSNS消したの? ねぇねぇねぇwwwww――
「もういいじゃねぇか……やめてくれよ……」
こう呟くながら、ひとり涙を流す鬼塚。
「そうだ、全部あいつが悪い……。大桃さえ、この手でとっちめてやれば……」
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