出会い(3)
目の前で揺らされた銃身を見て恐怖を感じる。
あきおは片手で持っていて軽そうだがとんでいく銃弾もそれに撃たれ倒れたイノシシを見ている。
それにこの大男だ手をあげればいいのかと考えるが妙な動きをしたと撃たれては元も子もない。
「ふん。俺の脅威にはなりそうには、ないがさっきの弾丸を避けたのが気になる。…お前名前は?」
相変わらず表情の見えない男の言葉にハッとする。
ここは、異世界だ。田中一と言う名前に違和感を持たれる可能性もある。
どう答えたものだろうかと考える。
「口がきけないわけじゃないだろ?」
「ター…ナーです。」
ターナーと言うのは事前に考えてた名前を伝える。
「いい度胸だな。この状況で、堂々とニックネームを名乗るのか?」
ターナーと言うのはそこまで変わった名前なのか、怒っている様子ではないが片手で構えていた銃を両手で構える。
「たっ田中一だ。すまない。とっさの事で…ふざけたわけじゃないんだ。」
苦しいが適当に発言をする。
「…まあいいだろう。今時苗字まで名乗るのは珍しいが嘘はないらしい。」
あきおは構えた銃を下げた。
とあきおは俺の横を通り過ぎてそのまま歩いて行く。
ひょろりとした男もそれを追った。
俺はと言うと、その場で固まるしかできない。
「何をしている?手が多い方が、ハジメ…お前も手伝うんだ。」
あきおはイノシシの場所へと移動して何かをしているひょろりとした男もそれに続いた。
「かずや、ワイヤーを張れ。」
言われるが否やひょろりとした男…かずやは背負ったリュックから50センチほどの棒状のものを取り出し真上に掲げるとそれを回転させるようにひねった。
すると勢いよく両端からアンカーのようなものが射出される。いったい何に使うというのかアンカーは大木へと刺さり二つの大木の間にワイヤーが張られた。
かずやはそれを強くひいてシッカリと確実にそれが張られているかを確認しているようだ。
一方のあきおはと、言うとイノシシの後ろ脚にロープを括り付けている。おそらくこのままつるして解体するという事だろう。
「この辺は太いでかい木ばっかで解体に困りますね。このアンカーもそんな在庫ないですし、昔みたいに色々とあればいいんですけどね。」
ひょろりとしたかずやはひょうひょうとしながらあきおの作業が終わるのを待っている。
「くだらないことを言っているんじゃない。よし。ハジメこっちにきて左を持つんだ。」
「あっはい。」
我ながら素っ頓狂な声を上げたと思うが指示されたままかずやと反対側に回り込む。
そのまま三人でせーのと持ちあきおが後ろ脚をしばりつけて吊るし、ほぼあきおが一人で解体を終わらせた。
死んだイノシシから肉へと変わる様子を見ていたが臓器や、大量の血を見ても思ったよりも精神的ショックを受けたりはなかった。
「水場が近くないからとっとと運ばなければならないが少し休憩をしよう。」
臓器を埋めおわるとあきおは手を拭いてその場に座る。
あきおは年齢はどのくらいだろう?グレーになた口ひげを生やしている。髪は真っ白であるが体格がよく若々しい。
それにあきおを見てもかずやをみてもどう考えても日本人にしか見えない。
言葉もリーリシアから与えられた言語理解などのスキルで通じているのかと思ったがどうしても日本語をしゃべっているようにしか感じない。
あきおの持つライフルも映画などで見たものとほとんど変わらないように見えた。
しかし元の世界にの日本にはこんな場所や先ほどのワイヤーを張る道具も見たこともなければ聞いたこともない。
「それでハジメ、お前はこんな場所で何をしている?」
「いや、それが、その記憶喪失で、俺も何が何だが…」
苦しい言い訳だが名前と一緒に考えておいた苦しい言い訳をする。
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