白鳥(3)
この願いは何とかして通してやりたいが、こう不機嫌では聞いてもらえないかもしれない。
人にお願いをするときは、まず大きな願いを訴えあとから聞いてほしいという願いを言った方が良い。
だがリーリシアは俺の考えを読んだりできる。
おそらくだがリーリシアは俺の考えを読もうとした時にリーリシア自身か俺かのどちらかが複雑な考え事をせず単純なことを考えていれば読めるのだろうとあたりをつけていた。
リーリシアは俺を異世界で蘇生させる準備をしているので考えを読んだりはできないだろうが無茶を言ってへそを曲げられても困る。
できるだけ気取られないようにまずは俺が願いそうなことで叶えられないであろう事を言ったうえでさらに同情を引ければなおさらいい。
心理的ハードルをさげて多少の無茶も通せるかもしれない。
「できればで構わないんだが、俺の存在がなかったことになるなら母さんを生き返らせるというか…死ななかったことにするのはできないだろうか?」
母の死を利用するようで申し訳ない気持ちになったが実際に考えていない事ではない。ただこれは無理だと口には出さなかったことだ。
「ですから、先ほど申し上げた通り、それはできないことです。ハジメは定められた寿命を迎える前に亡くなっているのでこういった措置をとりますがお母様は寿命で亡くなっているのです。残念ですがあなたの存在や例えお父様の存在がなかったとしても過労死や事故や病気、最悪は貴方と同じように殺されてしまった可能性さえあります。」
リーリシアの言葉は思った以上に胸にグサリと突き刺さる。
自分で始めたことながら罪悪感で押しつぶされそうだ。
「やっぱりそうなのか…」
演技としてこんな落ち込んだ態度を取ろうと思っていたが実際に落ち込んでしまう。
「いえ、わたしこそ強く言ってしまい申し訳ありません。」
申し訳なさそうにする謝罪をするリーリシアに申し訳な気持ちになる。
「そうか…それならあの時の猫を助けてもらうことはできないだろうか?あの時殺されなかったでも構わないし、異世界に転生という形でも構わない。」
この願いは自分が無駄死にではなかったと思いたいという気持ちが大きかったが素直にあんなむごい殺されたというしかも野良の子猫だ。
そのことを忘れたり、なかった事にはしたくなかった。
同じ時に同じ奴に殺されたという妙な仲間意識もあった。
「…やはりハジメは変わっていますね。わたしはまた他の者たちと同じようにこれ以上の無茶な能力の要求をされるかと思いましたが、そうですね。」
うんうんと何かを考えてリーリシアはうなずく。
「さっきも言ったが俺はあの願いだけかなえてもらえればそれでわがままかもしれないがなんとかならないか。」
そうだ特殊な能力などはいらない。楽観的とい笑われるかもしれないが何とかなる気でいる。
「これは他者のことを思えるあなたに対するご褒美とします。しかしあの場で殺されなかったことにすれば別の者が巻き込まれる可能性もありますので転生させましょう」
リーリシアは快く受け入れてくれたように感じだ。
ニャーニャーと小さな鳴き声を聞かせながらざらざらの下で顔をなめてくる真っ白の子猫こいつはあの時の猫の転生体に違いない。
しかし黒かった気がしたが転生したために色が変わってしまったのだろうか。顔に張り付いていた飛びつかれて布団に倒れて横になっていたが顔に張り付いていた猫を両手で捕まえると腕をまっすぐ伸ばして顔からなるべく離してその大きさを見る。
見れば見るほど真っ白でとても綺麗だ。それにこれはヘテロクロミアというやつだろうか。瞳の色が右が青、左が金と左右で色が違っている。目の周りはアイラインを引いたように黒くパッチリしている。
こういったドワーフホトというウサギを見たことがあるがそのウサギのようにパッチリしている。
手足はま小さく短い。ぽてぽてっとしていて丸くてかなりかわいいと思う。
頭を撫でてやろうとすると耳が折れ曲がっていることに気が付いた。
そんなに動物、とりわけ猫に詳しいわけでもないが猫の折れ曲がった耳は先天性遺伝子異常で関節の疾患などが出ると本で読んだことがあった。
よくよく考えてみればこの白く美しい毛並みもアルビノという色素の遺伝子疾患だと聞いたこともある。オッドアイにしても遺伝子異常かもしれない。
アルビノは色素を作る遺伝子の働きがないため皮膚が弱かったり雪のない地域では特に目立ってしまうため中々生き残れないと聞いたことがある。
だとするならばリーリシアもひどいことをするものだと思う。
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