白鳥(2)

 その文字にドキッとしながらもなぜかホッとした。

 何が書いてあるのかと、恐る恐るタップするとそこに書いてある内容を読んでいく。


 『はじめてメールを送ります。わたしの説明をよく聞かないで早々に寝てしまったのでメールにて少しお話をしていきます…』


 「…まず異世界にいきなり放りだされても、あなたの肉体であればなんとかなるはずですが辛く厳しいものになると可能性もあるのでその布団とスマートフォンをサービスでつけます。スマホにはふたつわたしが作ったアプリを入れておきました。ひとつは小さいながら空間収納アプリです。大きさ重量、容量制限付きですがひとまず困ることはないでしょう。当然ですが生物は収納できません。また中の時間は停止しませんが生き物は入れることができないので無菌です。食べ物も腐ったりという事はないと思うので許してください。中には少しの食料とハジメの家にあったサバイバルなナイフと包丁などの調理器具、食器類、食料、調味料などと、衣服と靴も入れておきました。自転車も入れておきましたので機会があれば使ってください…これはサービスとしてはでかすぎじゃないか。」


 途中から声に出して読んでいたが結構とんでもない物をもらってしまった気がする。この小さな箱が小説などで出てくるマジックバッグだという事だ。

容量が少ないと言うが自転車が入るほどだときくと驚く。


「なになに…もう一つはステータスアプリです。ハジメの身体能力を数値化し特徴や特技、特殊技能を確認できるようにしておきました他者の能力なども確認できるはずです。おおきな声で「ステータスオープンっ!!」と言いながらタップして活用してください。最後になりますがプログラミング言語というのはとても難しかったです。追伸:メールというのを送るのは初めてで絵文字などを使ってみたかったのですがいまいち使いどころがわからず不愛想になってしまってすみません。」


 最後のはいったい何だったというのだろう。女神なりのユーモア…女神ジョークだとでもいうのか中々につかみどころのないやつだなと思う。


 「ふぅ、やれやれだな」


 ふぅっと小さくため息をつくと上半身だけ起こし足を延ばした座ったままの状態だった足元に何かがもぞもぞと動いているように感じる。

 ここは大森林と言ってもいいほどの森の中で見たこともないような大きさの巨木がそびえている。布団が敷かれている場所も木の根の上なのか薄くなった布団の上だとわかるほどにでこぼこしている。


 そう考えると途端に恐怖が襲ってくる。もといた世界でもテントもなしに森の中、布団を直で敷いていれば虫や動物の侵入を許していたとしても不思議ではない。ましてやここは異世界だ。

 小動物のような大きさのあるムカデやサイのように大きなイノシシがいても不思議ではない。


 恐る恐る落ち着いてあたりを見回すが、動物などの気配は感じない。集中すると今まで気にならなかった吹く風で木々が揺れガサガサと揺れる葉の擦れあう音に余計に恐怖心を煽られる。


 巨木のせいで遠くまで見えることはないが代わりに背の低い植物などがなく茂みと呼べるようなもないのだけが唯一の救いに感じる。


 足元にはいまだ何かがいる。

 集中し唾を飲み込むと小さくのどが鳴る。その音が足元の何かに届いて襲われるのではないかとすぐに飛び起きれるように身構えると掛け布団に手をかけると一気にまくり上げた。


 その瞬間に何かの影が顔に向かって飛び掛かってきた。

振り払おうとしたがすぐに手を止める


 「んなぁーご」


 それは小さな真っ白の猫だった。


 この猫はあの時…


 あの場所でもう一つ頼んだ。


 「もう一個だけ頼みがあるんだけどいいかな?」


 片目だけ閉じておどけた態度で、リーリシアに手を合わせる。


 「聞くだけなら構いませんがどんな願いを叶えることができるわけではありませんよ。」


 無茶を通したばかりで少し不機嫌にも見えたがどうやら話だけは聞いてくれたるらしい。


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