希望(3)
「お伝えしづらいことではありますが、元の世界でのあなたの肉体をそのまま使います。足りないものは、わたしの管理する世界から影響の出ない範囲で少しずつ集めていきあなたの体を新しい形で構築していきます。それはあなたでありあなたではないものかもしれませんがそこにあなたの魂を入れることにより異世界で生き返らせる形をとります。もともとはあなたの体なので魂との整合性も高く生きるのに不自由はしないはずです。蘇生先の世界に何らかの影響が出ないとは言い切れませんが限りなく影響が少なくわたしができるすべてを考えた結果です。ただこの手段を用いるには1点だけ問題が発生してしまいます。」
俺の死体から新しい体を作り直すと言うのならば特に反対する理由はない。
貴族のに生まれて変に高いハードルを設定され子供からスタートするよりは楽だと思うが一体どんな問題が発生するというのだろう。
「もといた世界でハジメの存在が初めからなかったこととなります。これはハジメの遺体が無くなったと騒ぎにならないための措置でもありますが、いくら天涯孤独の身とはいえあなたにとっては大きなことかと思います。」
俺の存在がイレギュラーだったとするならばそれで世界のバランスが狂っていたのかもしれない。だとするならば、その存在をなかったことにしてしまえばその狂ったバランスを無理やりにでも正せるとでもいうのだろうか。
そう考える少し気に入らない気もするが、確かにリーリシアの言う通り俺は天涯孤独の身ではある。
どこかで生きている父親には何らかの影響があるのかもしれないが正直それはどうでもいい。
ただ母のことは気になる。
もしも俺の存在がなかったことになるのであれば母が過労死するようなこともなかったかもしれない。そう考えると生き返るのではないかという考えがよぎる。
「母さんは、いったいどうなるんだ」
リーリシアは無言で首を振る。
「あなたの周りにいたいた人間にどういった影響があるかは、わかりませんが起こってしまった事に対する改善は、見込めません。何らかの形で亡くなったと言う事実に収束するはずです。」
俺が何をどう選んだところで母さんが生き返ったりはしないようだ。
仕方のないことだがやはりやるせない気持ちになる。
本当は、俺のことを忘れてしまう。いや、なかったことになってしまうのが悲しいのかもしれない。
「いかがでしょうか?」
悩む俺をよそに女神は、ゆっくりでもいいと言いながら急かしてくる。
「いかがでしょうってそれ以外の選択はないんじゃないか?」
リーリシアのことを出し抜いてやったんじゃないかと少し口元が緩んでしまう。
先ほどまで怒りがわいたり泣きそうになったりと複雑だったがもう笑えていることに少し驚き緩んだ口元をばれないように戻す。リリの方をみるとクスクスと笑っているようにも見える。
どうやらこちらの考えなどお見通しらしい。
「ええ、そうですね。すみません。」
いたずらっぽく笑うリーリシアは続ける。
「今回の転生…蘇生にあたってあなたには通常から逸脱した能力を、いわゆるチートスキルを最大で六つまで与えることができます。これらはあなたの肉体とは別に与えることが…」
「ひとつ!!ひとつだけでいい、、、」
半ば喰い気味にリーリシアの言葉をさえぎる。
もしも…もしも能力をもらえるならひとつだけほしいものがあった。
「おれが望むのは…」
それだけがなければとずっと思っていた。
それさえなければ、きっと俺は自分の力だけでなんとかできる。
絶対にできる。ありえないと思っていたが何度も考えていた。考えずにはいられなかった事だが今ならその願いが叶うかもしれない。
気が付けば元の世界で存在が消えてしまうという事実はどうでもよくなってしまった。
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