希望(2)
リーリシアの言葉にうれしいのか悲しいのか、わからない感情があふれだし泣きそうになる。
頭の中も心の中もぐちゃぐちゃだ。
消えてほしくないのは自分の管理するモノのためだと言いながら俺に消えてほしくないと言う。
女神とはひどいものだと怒りと悲しみの混ざったような感情を抱いた俺には深く突き刺さった。
なにより世界や女神にとって都合の悪いことをはっきりと伝えられた上での言葉に嘘臭さがなく心配されたことが上っ面だけの言葉でないように感じてうれしかった。
同級生が進学する中で働き始めた俺は周りの友人も疎遠になり職場ではあまりの過酷さから先輩も後輩も辞めていく人間が多かった。
上司とは飲みに行ったりというコミュニケーションもなく業務命令程度の会話ばかりだった。
長く続けていた同期は体調を崩し自然と出勤しなくなった。
たまにあるプライベートな他人コミュニケーションとも言えない会話はコンビニの店員くらいで交友関係が皆無の自分にとって自分にとって心配をされるというような言動に表現しがたい感情が駆け巡った。
「ゆっくりでかまいませんよ」
リーリシアは俺の感情を察したのかの優しい言葉を投げかけてくれる。
正直これは結構ずるいと思う。
過酷かもしれないが俺はもう一度始めるべきなのかもしれない。
いい人生ですべてが思い通りではないかもしれないが少なくとも前世よりはまだろう。
「転生、、、してみようと思う、、、」
閉じていた口は上唇と下唇が乾燥で張り付いたかのように重く勇気をもって口を開いた。
「辛い決断を迫ってしまい申し訳ありません。ですがわたしはどうしてもハジメ自身に選んでほしかったのです。」
女神にも人と同じように感情があるのだろうか?
ふとそんなことを思うが女神は神妙な面持ちでふよふよと浮きながらこちらを見ている。
「転生するにあたってあなたを別の命の上に乗せる形にはできません。転移と同じ形をとります。わかりやすく言えば別の世界で生き返らせる形…異世界蘇生といってもいいかもしれません。これにはいくつか理由がありますが大きくは完全な転生を行った場合転生した肉体があなたの魂に耐えられるかどうかです。本来起こりえない得ない存在がハジメとして存在していました。そのあなたが別の存在として存在できるかに確証が持てません。本来転生には小さな力しか必要がありません。これは生まれる前からは始まるためです。そして転移には大きな力を必要としますが召喚を行う者たちが複数名で儀式単位の魔力と呼ばれるものを大量に注ぎ込むこと、と元から強い肉体と潜在的な魔力が多くあるものを召喚するので成立します。」
「つまりありえない事がおこり世界のバランスを崩して存在していた存在するはずもない俺は赤ん坊の体では耐えられないし、転移するためには肉体がないからできない。だったら別の世界に生き返らせてしまえばいいということか?」
話していて舌を噛みそうになるがリリの説明を要約するとそういうことだろう。
意外とご都合主義でもない女神パワーとやらはどうやら存在しないようだ。
ありもしない肉体を生成し俺の魂を詰め込むのだろうが一体どうするというのだろう?
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