絶望(3)
「リーリシアです。自己紹介が遅れましたね。リリでもリリシャでもお好きに及びください。あっ様付け入りませんよ?」
愛らしい表情で女神は微笑む。
とりわけ神と言う者を信じているわけでもなければ無神論者というようなわけではないが普段様付けをするという事のあまりない俺にとっては様付けをするのがどうにも抵抗があったので申し出はありがたく受け取る。
「それならリリって呼ばせてもらいますね。俺は、、、」
「ハジメ、、、田中ハジメですね。そのくらいは存じていますよ」
先ほどの愛らしい笑みとは違い作ったような表情でニコッと笑いながら言葉をつ続ける。
「おっしゃる通り私にも理解できないこと、干渉できないことがいくつかあります。ひとつが異世界召喚等について、ひとつがこの場所について、そしてあなた方の世界の人類の進化についてもいえることです。あなた方の世界は群を抜いて数十年の間に目覚ましい発展を遂げています。そして、わたしがいつから存在しているかなどです。いくつもの世界を管理という形で見ていますがトラブルが起きても干渉できないこと、わからないことも多からずあります。これはわたくし達、、、あなた方の世界でいう神々がこの世界を作っていないということを意味するかと思います。」
参ったな、わからないことだらけじゃないか。
思ってた以上にリーリシアは全知全能ではないらしい。万能といったところだろうか、それでも俺からすれば信じられないような存在には変わりない。
「…話が脱線してしまいましたね。干渉できないものというのがまだあります。」
この流れから察するにおそらくは…
「例えば俺のような存在とか?」
自分がヒーローや主人公だと思ったことは一度もない。
どちらかといえばもぶと呼ばれるようなその他大勢の中でも少し人より不幸なだけで、これっていう特徴もない。
いじめっ子でもなければいじめられっ子でもないしいじめっ子を助け出す主人公のような資質も持ち合わせてはいない。
自分で考えていても悲しくなるが女神が干渉することのできない特別な存在なわけがない。
ただ、この状況やここまでの説明を聞く限りで腑に落ちた答えは限りなく陳腐だ。
「…その通りですが、それだけではないのです。」
ひとつ謎が解決したかのように思うとまた次の謎が出てくる。他人事のように感じているが変にワクワクしてしまう。
「はぁ、やはりハジメは変わっていますね。」
リーリシアの聞こえないようについたであろうため息は、本人が思っていたよりも大きくしっかりと聞こえている。
それに気が付いたのかリーリシアはコホンと咳ばらいをするようなジェスチャーを取ると話を続けた。
「どの世界も正と負とでもいいましょうか?運の良い悪い、善と悪、陰と陽などバランスが取れるように設計されています。これらは親などから受け継いだものなどが大きく作用した先天的なものですが稀に正か負かのどちらかに大きく傾いたイレギュラーな存在も発生します。しかしこれらは起こりえない事ではありません。これが後天的に起こったのです。ハジメの存在は極端に負に傾いていますが過去のあなたは正に向いていたくらいです。」
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