女神(2)

 尻餅をついたままだったので促されるままに立ち上がる。



 「痛っ…」


 頭に激痛が走り頭に手を当てる。

 最近どこかで同じような事をした。

 既視感のある行動に頭の中に記憶が一気に流れ込んできた。


 「思い出したようですね。」


 そうだ俺はきっとあの時に、


 「…残念ではありますがあの時、あなたは亡くなりました」


 そうか、俺はあの時刺されてそのまま。


 思考を巡らせるが何もわからない。目の前の女神は黙ってこちらを見つめている。


 「あのっあの、、、」


 無言に耐えられずこちらを見つめ沈黙する女神に何も考えずに口を開く。


 「はい?なんでしょうか?」



 俺の考えがわかるはずの女神は凡そ女神らしくない愛らしい笑顔でこちらの問いかけに首を傾げる。


 なんでここに?これからどうなる?天国?地獄?もしかして生き返れる?異世界転生?


 頭の中に様々な疑問が駆け巡る。


 女神はというと笑顔のままこちらを見つめている。


 こちらの考えがわからないのだろうか?


 「えーっと、あっ、あの生き物!あのいじめられてた動物は、、、」




 咄嗟に出てきた質問はあの動物のことだった。


 「…彼女はあなたが助けに入る前に亡くなっていました。」




 女神は表情を少し曇らせて語ってくれた。

 あの生き物が猫であった事、

 その猫がメスであった事、

 猫が野良でゴミ漁りの最中に捕まえられいじめられていた事、


 そして俺があの場に割り込んだ時にはすでに亡くなっていた事、


 「そうですか、、、」


 他に言葉が出てこない。下唇をかみしめるといたたまれない気持ちになる。


 それだけはしてたまるかと意地になって頑張っていたというのに、結局無駄死にをしてしまったようで、猫を助けられなかったことに無力さを感じどうしようもないくらいに悔しくなり、猫を助けられなかったことよりも無駄死にしたということに悔しさを感じた自分に自己嫌悪する。


 「やはりこれまでここにきた方々と比べるとあなたは変わっていますね」


 「えっ?」


 これまでにきた?方々?

 唐突な女神の発言に驚き、自分でも間抜けな声を出す。

 さっきも言っていたがどういう事だろう?


 「いえ、ここに来る方は様々ですがみなさん自分のことばかりで他を気にする者はあまりいないのです」


 確かにその通りかもしれない俺が死んでここにいるというのなら他のここに来る方々とやらもまず自分がこの先どうなるのかが気になるはずだ


 「それは多分俺がというか…僕が猫を助けようとしたからであって、僕が特別変わっているとかではなくて、何かを助けようとして死んだのなら少なくともその何かが助かったのかは気になるんじゃないですかね?」


 確かに自分がどうなるかも気になるが素直にそう思った。そうであってほしいと思う。



 ここはきっと死んだ人間が来る場所で女神は死んだ人間に対して何かをしているんだと思った。



 「確かにおっしゃる通りですね。ちなみに亡くなった方以外もここにはいらっしゃいます。」



 死んだ人間以外も来るというのならここは一体なんなのだろう。


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