事実と女神と絶望と希望と

女神(1)


 ≪ピピピピ≫


 「…んんー」



 いつもと変わらないスマホのアラームの音で目覚て上半身を起こして伸びをする。

 いつのまにか眠ってしまったようだ。


 寝ぼけ眼をこすりながアラームを止めようとあたりを見回すと思考が停止する。


 

「あはは、なんだここ…」

 わけのわかるないことが起きると人間は笑ってしまうらしい。

 そこに見慣れた小さな部屋の光景など何一つなく家ではない。

 会社に寝泊まりすることもあるがここは会社ではない。

 それどころか見たこともない場所だ電気もなければ太陽や何かがあるわけでもないのになぜか明るい。


 そこは一面真っ白で何もない世界…空間だ。


 ふと我にかえる。


 「ふとんっ」


 目覚めたとき、感触や肌触りでそれが自分の布団だとすぐにわかった。そこに寝ていたのだからこんな見たこともない場所で自分の布団などあるわけがないと思い足元に目をやるがそこには確かに俺の布団があった。


 一瞬ほっとする。


 「夢じゃ、、、ないよな?」


 明晰夢という奴だろうか?と思うがこの状況が夢だとは思えないほど意識ははっきりしている。


 明晰夢というのは自分でこれが夢だと認識する夢だとか何かで読んだと思うが明晰夢というのを見たことはない。


 少なくとも起きた後にそれを覚えていたことがない。


 ベタだと思うが頬をつねってみる。しっかりと痛い。


 どうやら夢ではないらしいがそもそも夢の中で痛みを感じるような状況では痛くないというのも本当かどうかはわからない。


 悪い癖かもしれないがどんな事でもすぐに疑ってしまう癖がある。


 『夢ではありませんよ』


 頭の中に声が響く妙な感じだ。


 イヤホンから聞こえるようでもあり自分の声の反響のようでもあるがそれは自分の声ではないそして女性の声のように聞こえる。


 「働きすぎで気でも触れちまったか?」


 『ふふふっそんなことはありませんよ』


 また頭の中で声が響く。

 本当に夢ではないのだろうか?

 頭の中に靄がかかったかのようにいまいち前後の記憶がはっきりとしない。

 そのまま布団から出て立ち上がる。


 『今姿を表します。』


 あたり一面が光に包まれあまりの眩しさに目を閉じる。


 目を開けると目の前には何もなかった。


 奇異な状況を受け入れていたがやはり気が触れ幻覚を見ていて幻聴が聞こえていたのかと冷静になる。


 「後ろですよ」


 先ほどまでと同じ声だとわかったが今度は頭の中で響いているわけではない。


 声の方を振り返ると驚きのあまりに腰を抜かしたように尻餅を着いてしまう。


 そこには女性が宙に浮いていた。


 薄く光っているように見え顔立ちが整った美しい女性だ。

 小説や漫画で見るような女神がいたらこんな姿ではないかと思うほど、美しく白く光る金色の髪は宙でふわふわと揺れていて到底自分と同じ生き物であるとは思えない。



 「ふふふ、最近ここにいらっしゃる方々はみなさん状況を受け入れすぎているのでちょっと驚かせてみました」



 あまりにも受け入れがたい状況のそれに絶句し反応ができない。


 「“それ”ではありませんよ?先ほど考えていた“女神”のようなものと思っていてください。」


 考えていたことへの返答にはっととする。


 「今のってもしかして…」


 心を読んだのだろうか?女神のようなものであればそれも可能なのかもしれない。


 「心を読んだ訳ではありません。似たような事ではありますが…言語化するのがむつかしいですね。」




 考えた事が伝わっているということだろうか?

 状況がいまいち飲みこめないない。



 「そのままではなんですから立ち上がっていただけますか?」


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