第13話 ジェシックとサラナ③
しかも皆うっとりとした表情を浮かべてたもんだからびっくりしたよ。
だから慌てて止めたんだけど、その時になって初めて気付いたんだ。
もしかして彼女達は、ウィルトに一目惚れしちゃったんじゃないかってさ。
いや、別にね、それでも構わないんだけどさ、
だからっていきなり襲うってのはどうなのかなって思っちゃったんだよねぇ。
それに、もし仮にそうだとしても、それを受け入れちゃうって事はさ、
もう、自分が女性だっていう事を認めたようなものじゃん?
それだったら最初から女性だって言えば良いじゃん。
なのに何で言わないんだろう。
って思ってさぁ、思わず聞いちゃったんだよね、
そしたら彼女、何て答えたと思う。
何と、実は私って男だったんだってさ、えぇぇええ!?
いやいやいや、嘘でしょ!どう見ても女にしか見えないよ!?
というか寧ろ羨ましいくらいだわなぁって思うんだが。
すると、それを聞いた他の連中も口々に言い出したんだよな、
それが本当に事実だとしたら凄く興奮するんですけど、
「はぁ、それにしても暑いな」
と言いながら制服を脱いで下着姿になり始める少女に対して、彼女は焦ってしまうもののどうする事も出来ずにいた。
何故なら、ここは密室であり出口は一つしかないからだ。
つまり、彼女が逃げ出そうとしてもすぐに捕まってしまうだろうと考えたからである。
そんな彼女をよそに少女は平然としたまま彼女に近付いてくると、おもむろに手を伸ばしてきて彼女の体を触り始めたではないか。
突然の事に驚きつつも、何とか堪えようとする彼女であったが、
少女の手は止まらずに次々と伸びてきて遂には服の中にまで入り込んできたため堪らず声を上げてしまったのだ。
その瞬間、ハッとした表情を浮かべた少女は急いで手を離したかと思うと顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ご、ごめんなさい……」
消え入るような声で謝罪の言葉を口にしながら俯く少女を見て、彼女もまた恥ずかしくなり顔を背けてしまう。
そしてしばらくの間気まずい沈黙が流れる中で先に口を開いたのは彼女の方だった。
「……えっと、その、とりあえず服を直してくれるかしら?」
そう問い掛けられてハッと我に返った彼女はすぐさま行動に移すことにした。
というのも、少女がまだ目の前にいる以上、このままというわけにも行かないと思ったからだ。
幸い、脱がされかけただけで、ボタンは全て留められた状態だった為、あとはチャックを上げるだけで済んだ。
そして、改めて彼女に向き直ると深々と頭を下げてから謝罪の言葉を口にした。
それに対して、
「ううん、気にしないでいいのよ。私の方こそごめんなさいね、つい興奮しちゃってしまって……」
と恥ずかしそうに答える姿を見て、やはりこの子も一人の女性なんだなと思った彼女は、
先程まで感じていた恐怖心が薄れていくのを感じた。
そしてそれと同時に彼女に対する愛おしさも増していくのを感じていたのだが、その一方で、未だに彼女が何者なのかが分からずにいる現状に苛立ちを
感じずにはいられなかった。
そこで、意を決して彼女に質問を投げかけてみる事にした。
まずは名前を聞く事から始めようと思った彼女は早速話し掛けてみる事にしたんだ。
しかし、そんな彼女を遮って先に話しかけてきたのは彼女の方からだったのだった。
「あら、そういえば自己紹介がまだでしたね、失礼しました、私はサラナと言います、よろしくね」
と言って握手を求めてきたのでそれに応えるように握り返すとニッコリと笑ってくれたので、つられてこっちも笑顔になってしまった。
それからお互いに軽い挨拶を済ませたところで、本題に入る事にしたんだ。
まず最初に、ここはどこなのかという事について聞いてみたところ、
どうやらこの場所はサラナさんが所有する別荘の一つらしい事が分かった。
それを聞いて驚いたものの、冷静に考えてみると当然と言えば当然だとも思ったので納得できた部分もあったりするのだが、
それ以上に気になった点があったのでそれについて聞いてみる事にしたんだ。
それは、どうして自分をここに連れて来たのかという疑問についてなんだが、これに対して彼女はこう答えてくれた。
「そうですね、一言で言えば一目惚れしたからでしょうか」
と照れ笑いを浮かべながら話す様子はとても可愛らしく見えた。
続けてこんな事を言われた時、彼女は完全に思考が停止してしまった。
なぜなら、それはあまりにも予想外の言葉だったからだ。
まさかそんな事を言われるとは夢にも思っていなかったので動揺を隠しきれないまま呆然としていると、
その様子を見たサラナさんが心配そうに声を掛けてくると同時に顔を近づけてきたものだから、
心臓の鼓動が激しくなるのを感じながら何とか平静を装っていると、やがて安心した様子を見せた彼女に対して心の中で感謝の気持ちを述べていた。
その後、少ししてから落ち着いたところで話を戻す事になったのだが、先程の言葉の意味を理解する為にもう一度聞き直す事にしたのだが、
「何度でも言いますよ、私は貴方に恋をしたのです!」
彼女は微笑みながら答えると、そのまま抱きついてきたかと思えば、耳元で囁くように語りかけてきた。
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になってしまった彼女だったが、どうにか気を取り直して聞き返す事にした。
というのも、さすがにここまで来て冗談ですとか言われたら洒落にならないからね。
だけど、そんな心配はすぐに吹き飛んだんだ。
何故なら、彼女は真剣な眼差しを向けていたからで、その表情を見た瞬間、本気なんだと理解したからである。
「あの、サラナさん?それって本気で言ってるんですか?」
思わずそう尋ねてしまったが、彼女は首を横に振って否定する仕草を見せた後で言葉を続けた。
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