第2話 私って一体

「大丈夫ですか、ジェシック様」

そう言ってきたのはリリレーナでした。

(え、今なんて言ったの?)

そう思いましたが、とりあえず適当に返事をしておきました。

ですが、その後の二人の会話で驚きました。

何故なら、私が生きている事を知っている口ぶりだったからであります。

(何でこの人たちがその事を知ってるのよ!)

そんな事を思っているとリリレーナが話し始めました。

それは私の名前が出てきたからなのでした。

(嘘よ、私はここに居るもの!)

そう思いながら否定していると今度はアリッサの名前が出てきまして信じられない気持ちで一杯になりましたが、次に聞こえてきた言葉で更に驚く事になるのです。

「もう、心配させないでよ、ジェシック」

と、そう言ってくるのでした。

(私はここに居るわよ!)

そう思ったのですが、二人は話を続けていくのです。

そして、リリレーナが話の続きをし始めたのでありました。

それは私が亡くなった事になっているという内容だったのです。

それを聞いて更に驚きましたし、動揺している自分がいましたが必死に堪えていたのですけれど、

心の中では絶望感でいっぱいになっておりました。

そんな中でも話は続いていきまして、私が亡くなった事にして誰にも言わない様にお願いする為に街に来たという話を聞きました。

当然ですが私は納得出来ませんでしたし、抗議もしました。

でも、二人は聞く耳を持たず、それどころか話を強引に終わらせようとしてきたのです。

そんな二人の態度に腹を立てていたのですが、二人にこれ以上、何を言っても無駄だと思い、諦める事にしたのでありました。

そんな話をしている間、リリレーナは私の方を見てニヤリと笑っていましたが私は何も言いませんでした。

それよりも気になる事があったからです。

それはアリッサの顔が蒼白になっていたという事です。

まるで何かに怯えている様でしたし、何かに怯えるというよりは必死に忘れようとしているように感じました。

しかし、それでも彼女が私を裏切ってまで一緒に居たいと思っていた人がこんな酷い事をする人だと知ったらショックで立ち直れないかもしれませんし、

もしかしたら壊れてしまうかもしれません。

(それは、絶対にダメよ!)

私は心の中でそう叫ぶと、彼女に話し掛ける事にしたのです。

結局、その日はアリッサとは話が出来なかったので次の日に話をする事にしましたが、

その前にリリレーナは用事があると言って何処かへ行ってしまいました。

そして、二人きりになった時に私はアリッサに言いました。

「サラナは貴女の婚約者で花嫁なのでしょ?」

「ええ、そうよ」

その答えを聞いて、私は言いました。

「どうして、私を見捨てたの?」

それを聞いたアリッサは私に謝ってきました。

そして、何故、私が死んだ事になっているのかを説明してくれました。

それを聞いて私は怒りが込み上げてきたのですけれど、何とか我慢して話を聞き続けました。

それから暫くして話が終わると、今度は私から話を切り出したのです。

それは、私の事を愛して欲しいという事ですけれども、どうやら彼女は拒絶するようですし私も無理強いするつもりは

ありませんので諦めようと思ったのですが、彼女の方からキスをしてくれた事で一気にテンションが上がってしまいまして

勢いに任せて押し倒してしまったのですけれど、その時でした。

(えっ?)

「ダメ、サラナ!」

そう言ってきたアリッサの顔が苦痛に歪んだのです。

(どうして、こんな事になったの?)

そう思いながらも私は必死に考えました。

しかし、答えが出ないまま時間が過ぎていき、気が付いた時には朝になっていました。

そして、リリレーナが戻ってきてから数日が経過して体調が良くなってきた頃でありましたが、

その日を境に私の身体はおかしくなったのでした。

最初はちょっとした違和感だったのですが日に日に大きくなっていきまして最終的に症状が出始めた頃には完全に動けなくなってしまっており、

今では指一本動かす事すら出来なくなっていたのでありました。

「サラナ、どうしたの? 最近、元気がないみたいだけど何かあったの?」

そう言って心配してくれるアリッサを見て嬉しくなるのですが、それと同時に罪悪感に苛まれるのです。

(私はこれからどうなるんだろう)

そんな不安に押し潰されそうになりながら日々を過ごしていたある日の事です。

それはリリレーナが街に来た日の事でしたけれど、その日は何故かジェシック様が一緒に居たのでありました。

しかも、その隣には見知らぬ女性がいて二人で仲良く歩いている姿を見た時はショックでしたが、

それでも黙って見過ごす訳にはいきませんし、何よりも気になった事がありましたから話し掛ける事にしました。

「あの、その人は誰なんですか?」

「え、ああ、彼女は私の親友で名前は……」

そこまで言うとジェシック様は口籠もってしまいまして、その代わりに隣にいる女性が答えてくれました。

「私はサラナと言います」

そう言って微笑んできたのですが何故か目が笑っていない様な気がして怖くなりましたが、何とか平静を装って返事をしました。

「そうですか、私の名前はリリレーナと申します」

それに対してジェシック様は何故か沈黙を貫いているのですが、とりあえず気にしない事にしました。

(いつか目を覚まさせてあげるんだから)

そう思いましたし、このままでは不味いと思っていますので何とかしなければと悩んでいたのですけれどどうにもなりません。

結局、私は何も出来ずに日々を過ごしていましたがある日の事です。

その日は少しだけ体調が良くなってきたのでアリッサに会いに行ってから街を散歩する事になりました。

彼女は心配そうな顔で私を見つめていましたが私が笑顔でいると安心してくれたみたいで良かったと思います。

しかし、その時に奇妙な噂を耳にしたのです。

その内容はここ最近、この近辺で行方不明者が出ているというものでした。

しかも、その数は一人や二人ではなく結構な数になっていましたので気になるところではありますが、

私には関係無いだろうと諦めて一日を過ごしておりましたが、そんなある日の事でありました。

今日の出来事を思い出すとある方向へ向かい歩いていたら崖近くまで来ておりましても、

周りを見ても特に変わった様子もなく気のせいかと思っていましたが妙に気になったのです。

しばらく歩き回っていると自分が何処を歩いているのか、分からなくなってしまったのですがふと視線を向けると奥に小さな洞窟が見えたのでありました。

(こんなところに洞窟なんてあったかしら)

そう思いながら周囲を確認すると急に目の前が真っ暗になり意識が途切れてしまったのです。

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