花嫁は貴女で皇帝は私~二人は永遠の愛を誓う~

一ノ瀬 彩音

第1話 ジェシックとサラナ

愛を成就させる神殿で永遠の愛を誓ったジェシックとサラナは

微笑み満足そうに神殿から出て来ると外は晴れておりまして

心地が良い風が吹いていまして、本当に清々しい気分なのです。

それにサラナがジェシックの傍に居る事で誰しもが近寄る事はしないし、

近寄れば、サラナによってどうにかされるのですからそんな事はしないのです。

そんな時でした。

ジェシックがサラナの方を見ながら微笑みこう言うのです。

「サラナは私としたい事はないの?」

そう言われるとサラナも微笑みながら

「ジェシック様とは一緒に居れるだけで満足でございます」

そう言うのでした。

そうするとジェシックが頬を膨らませて不機嫌になるとこう言うのでした。

「サラナは私と永遠の愛を誓った仲なのに何もしないの?」

そう言われてしまうとサラナは申し訳なさそうな顔をしながら

「決してそういうわけじゃありません」

「じゃあどうして私と何もしてくれないの? 教えなさいよっ!!!」

「いやっ、それはですね……ごめんなさいっ、本当はジェシック様と何かしたいです」

「素直で宜しい、それじゃあ何がしたいの?」

「特にございません」

そう言いますとジェシックはサラナに詰め寄りこう言うのです。

「何もしたくないですってっ!!! どういう事なの?」

そう言われるとサラナはそっぽ向きながら

「あれですよ、ジェシック様、今はいいって事です」

「そういう事ね……じゃないでしょっ!!」

「どうしてそこまで何かをしたいのですか?」

「永遠の愛を誓ったのよ、何かしたいじゃないの」

「ジェシック様の仰る通りですけど、今はいいじゃないですか」

「もうっ、知りませんっ!!」

そう言い残してジェシックはサラナの事を放置して先に歩き出すと

ぶつぶつと独り言を言っているのでした。

そんなサラナは心の中で

『本当にジェシック様には困ったものですね』

と思っているのです。

サラナは早足でジェシックに追い付きますとニッコリと笑顔で

「ジェシック様、この近くに泉があるので行きませんか?」

ジェシックは足を止めて振り返ると嬉しそうな顔で

「行きましょうっ!! ぜひ行きたいですっ!!」

二人は泉へ行く為に横並びに並んで歩き出しているのです。

ジェシックとサラナは一緒に歩いていると二人は本当に仲睦まじく

楽しそうに会話しながら移動しているのです。

泉へ行く為には森の中を歩いているのですが

動物や小鳥、自然の音が聞こえて本当に良い雰囲気なのです。

そんな事をしているうちに泉へ到着するとジェシックがこう言うのです。

「わぁ~、綺麗な泉ね、本当に綺麗~、泉の中に入ってもいいの?」

「ジェシック様、泉の中へ入ってもいいですが……お着替えはあるのですか?」

「ないわね、どうしましょう、サラナどうにかしなさい」

「どうにかしなさいと言われても何も出来ません」

「精霊を呼び出して水着でも貰えば?」

「精霊はそんなの為にいるわけではございません」

「泉の中に入りたいよ~」

「そんな事を言わないで下さい」

泉は本当に透き通っておりまして、綺麗なのですがお着替えがないジェシックは

泉の中へ入る事が出来ないのでどうにかしたいって気持ちです。

泉の周りには木々がございまして、もちろん緑に囲まれているのです。

「ねぇ、サラナ、目を瞑ってて頂戴」

「どうして目を瞑るのですか?」

「いいから目を瞑って」

「わ、わかりました」

サラナはジェシックが言う通りに目を瞑るとジェシックは着ているモノを脱いでいるのですが

サラナには着ているモノを脱いでいる音しか聞こえないのです。

ジェシックは着ているモノを脱ぐとショーツ姿となり、そのまま泉の中へ足を入れて

入ると水音がして、サラナにはバレないようにしているのです。

「サラナ、目を開けてもいいよ」

そう言われるとサラナはゆっくりと目を開けていくとそこには

ショーツ姿のジェシックが泉の中に入っているのです。

「ジェ、ジェシック様、ショーツ姿で……早く泉の中からあがって下さいっ」

「嫌よっ、いいじゃない、別に」

「いいじゃないって……ダメですっ、誰かが来たらどうするのですかっ!!」

「そんなの知りませんよ、それにサラナが対処してくれるのでしょ?」

「それはそうですが……はぁ、ジェシック様ったら……」

「このまま入っててもいいの?」

「はい、宜しいです」

「それに今は二人きりなんだし、そういうお時間を大切にしたいの」

「ジェ、ジェシック様…………」

確かに今、二人きりのお時間でもあったのです。

ジェシックは今、泉の中で水浴びをしながら楽しんでいるのですが

サラナは誰も近づけないように辺りを見回りしているのです。

見回りをしていると言っても泉の周りを警戒しているだけですので

特に特別な事をしていないのです。

そんな最中でジェシックがサラナの事を見つけると少し離れているので

「サラナも一緒に泉の中に入らない~~~?」

と叫んでいるのです。

ジェシックの声に気付いたサラナは大きな声で

「遠慮しておきます~」

と聞こえるように言うのでした。

そうするとショーツ姿であるジェシックが泉からあがって

そのままサラナがいる所まで駆け足で行くのです。

サラナもジェシックがこちらへ向かっているのがわかると

立ち止まって待っているのです。

しばらくしてジェシックがサラナの元へ辿り着くとこう言うのです。

「遠慮しておきます~ってどういう事なの? 私のお誘いを断るの?」

「そう言うわけじゃないですけど、ジェシック様が楽しめるように

警戒しておかないといけないのです」

「それはそうだけど……楽しめる時に楽しまないと損じゃないの」

「そうですね……でも今はやめておきます」

「あっ、そう言う事を言うのね」

今のジェシックはショーツ姿ではありますが、さっきまで泉の中に

いたのですから身体から水滴がポタポタとまだ垂れているのです。

「ごめんなさいっ、ジェシック様」

「ねぇ、お詫びにキスしなさいよ」

「キ、キスですか?」

「そうよ、キスしなさい」

「わかりました、ジェシック様」

サラナはジェシックの事を抱き寄せるとそのまま見つめていまして

ジェシックの唇に唇を重ねてキスしているのでした。

「サラナ、キスしてくれてありがとうね」

「いえっ、私もキスしたいなって思っていたので」

「やっぱり私とサラナは愛という絆で結ばれているのねっ!!」

「そうですね……」

「どうしたの? サラナ」

そう言われるとサラナは頭の中である事を考えているのです。

そうそれはジェシックと永遠の愛を誓ったけれど、裏切ろうかどうかを

悩んでいるのです。

そうするとサラナは不敵な笑みを浮かべながら

「あっははははっ、ジェシック様、貴女の事を裏切りますっ!!」

「裏切りってどういう事?」

「そのままの意味ですっ!!」

そうすると詠唱を始めるサラナの真下には魔法陣が描かれて

おりまして、そこから1つの妖精剣フェアリーソード

出てくるとそれを手にしたサラナがジェシックににじり寄ると

こう言うのです。

「ジェシック様、永遠の愛を誓いましたがごめんなさいっ!!」

そう言いながらサラナはジェシックに妖精剣フェアリーソード

振り下ろすとジェシックは斬られ致命傷を負い、この世から他界して

あの世へと行くのです。

「私はジェシック様を亡き者にしたよっ!! したんだよ!! あっははははっ」

今のサラナは正常ではないし、何処か可笑しい感じではあるのですが

それでもジェシックに手をかけたのは事実です。

しかし、サラナ自身は青い瞳を潤ませて涙が頬を伝って落ちると

何故か泣いているのです。

「ジェシック様……ごめんなさいっ……本当にごめんなさいっ……」

ジェシックの亡骸を見てサラナは泣いているのでした。

サラナは四大精霊を操れるのに何故ジェシックの事を蘇生しないのか?

蘇生すればなかった事には出来ませんがジェシックは戻って来るというのに……。

「さぁ、起きなさいよ、ジェシック様」

そう言いますとジェシックの身体がピクリと動いて

ゆっくりと起き上がり、立ち上がると息絶えたジェシックがサラナの目の前にいるのです。

「これで妾も表舞台に立てるというのか」

「はい、そうでございます」

「サラナではないか、久しいな」

「お久しぶりです、ジェシック様」

「そう呼ばれると嬉しいのじゃ」

そう、ジェシックの心の中には二つの魂がございまして

その中の1つの魂を息絶えさせてもう1つの魂を呼び出しただけなのです。

「ジェシック様、私と永遠の愛を誓い合っておりますので

私の事を存分に愛して可愛がって下さい」

「ふむ、そうするとしようかな」

そう言ってジェシックはサラナの身体を抱きしめるとサラナの耳元で

こう囁くのです。

「愛しているよ、サラナ」

「はい、私もジェシック様の事は愛しています」

そう言うとサラナもジェシックの背中に両腕を回して

抱きしめているのです。

「あぁっ、ジェシック様の温かい温もりが感じられます、幸せです」

「妾もサラナとこうする事が出来て幸せじゃ」

そして、二人はお互いの顔を見つめ合うと惹かれ合い、

自然と唇と唇が重なり合い、深いキスをしているのでした。

何度も何度も深いキスをしている二人は本当に幸せそうにしているのですので

至福のお時間を味わっているのでしょう。

深いキスが終わると二人は離れジェシックがこう言ってくるのです。

「そういえば、何故ショーツ姿なのじゃ?」

「それはですね、私がそうさせたのです」

「随分とエッチな事をするのじゃな、サラナは」

「エッチでごめんなさいっ、ジェシック様」

「いやっ、そういう所のサラナも大好きじゃ」

「は……はい……」

ジェシックとサラナは二人して笑っているのです。

「サラナ、これからもよろしく頼むぞ」

「はいっ、こちらこそ、よろしくお願い致します」

こうして、ジェシックとサラナの二人のお時間は過ぎていき、これから一緒に歩んでいくのでした。

「ねぇ、サラナ、あやつが妾の元へやって来たみたいじゃ」

そう言いジェシックは不安そうな顔をしているのです。

そんなジェシックの事をギュット抱きしめるとこういうのです。

「大丈夫ですよ、ジェシック様は心配なさらず私にお任せ下さいっ!」

そう、サラナはジェシックの事を安心させる為に言ったのですが、もちろん本心は不安で仕方なかったのです。

何故なら、あの夢で見た事が現実に起こるかもしれないからなのです。

そして、とうとう運命の日がやってきました。

サラナの目の前には、あの夢で見た黒いローブを身に纏った者が現れたのです。

その者は、ジェシックの元へ行くと跪きこう言うのです。

「私は貴女様に仕える為に来たのでございます」

と、それを聞いたジェシックは驚きますし、恐怖を感じているのか身体が震えているのがわかるので、

そんな不安そうなジェシックを見たサラナはこう言います。

「大丈夫ですよっ! 私が居ますから安心して下さいっ!」

そう言うと、黒いローブを纏った者はゆっくりと立ち上がってからお辞儀をするのですが、

この時に気づいた事があるとすれば顔に包帯を巻いているので素顔が見えない事なのです。

でも、そんな事はサラナにとってどうでもいい事なのです。

「貴女様が、ジェシック・パラミレル様で間違いないでしょうか?」

と、そう黒いローブを纏った者は言うのですが、ジェシックは頷いてからこう言うのです。

「妾が、ジェシック・パラミレルじゃ」

そう言うと黒いローブを纏った者は、包帯を取って素顔を現すとその姿は夢で見た通りの姿でした。

そして、名前を言いますとそれはリリレーナだったのです。

(私が見た夢の通りだわ……)

そう思っているのも束の間でして、リリレーナがジェシックの頬に手を当てて、

それから、ゆっくりと唇と唇を重ねるのです。

(ど、どうしてキスしてるのよっ!)

そして、リリレーナは唇を離すとこう言うのです。

そうするとサラナを見てからこう言います。

少し不機嫌な感じで言うのでありました。

(何よ、私が居るっていうのに……)

そんな嫉妬をしているのも束の間でして、今度はジェシックが顔を近づけると、そのままキスをし始めました。

(あぁ~っ! もうダメェッ!)

ジェシックがリリレーナにキスをされているのを見ている事しか出来ないサラナは、

このどうしようもない感情に支配されていて、頭も心も真っ白になっていたのです。

ですが、そんな中でも一つの疑問だけはありました。

それはどうしてあの夢で会ったリリレーナと目の前にいる者が同じなのか? という疑問でした。

そんな時でもキスは続いていて、まるで愛し合っているかの如く唇を重ねている二人の事を見ていて、

嫉妬している自分がいる事に気付くと複雑な気持ちになるのでございました。

「ジェシック様、どうしてサラナがいるのに、この人とキスをしているのですか!?」

「それは、妾が愛しているからじゃ」

「そんな……私という人が居ながら……」

ジェシックはリリレーナの事を抱きしめると、そのまま押し倒してまた唇を重ねると

今度は舌を入れて濃厚なキスをし始めるのでありました。

「うっ……んっ、んんっ……」

そうやってキスをしている二人を見ているとサラナも何だか変な気分になってきて、身体が火照ってくるのを感じていました。

「お願いだから、やめて下さいっ!」

そう言って私はジェシックとリリレーナの事を引き離そうと必死になったのでありました。

しかし、二人の激しいディープキスを見てしまって引き離せなくなってしまいましたが、

何とかして離れたい一心で叫んでいるうちに冷静さを取り戻していきました。

「な、何するのよ! ちょっと離れなさいよっ!」

ジェシックは、リリレーナの舌から離すと唇を離しましてから、こう言ったのです。

「すまぬ、サラナよ。妾にとって二人は大切で……その……」

そういって二人の前でもじもじしていますが突然、ジェシックの身体にある変化が起きたのです。

身体の節々が痛くて仕方がない状況に陥っており、心臓の鼓動も早くなっているし、息切れもかなり激しくなりつつあったのです。

そんな姿を見守るように見つめる二人が居る中、急に身体全体を襲う激痛に襲われて咳き込み始めましたので、

慌てている二人の姿を見て、申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうになりますが、

今のジェシックは満足に動ける状況ではなかったのでそれを見ていた二人はどうしていいのかわかりません。

ひとまず、落ち着くまで横になった方がいいのではないか? と思ったのか、

二人に支えられながらベッドへ移動するとそのままベッドに仰向けになって目を閉じました。

(妾の身体がどうなっておるのじゃ?)

そんな事を考えていますと不意に強い睡魔に襲われたのです。

ですが、何故か心地の良い気持ちになりましたので目を開けて上半身を起き上がらせるのですが、

やはり身体の節々が激しく痛んで動けなくなるのでありました。

「ジェシック様、どうか無理をなさらないで下さいっ!」

と、そう心配そうに言ったのはリリレーナでありました。

そのリリレーナの顔を見た時に何処か不思議な感覚がしたのでした。

それは何故かというと、今こうしてリリレーナが助けに来てくれて側にいてくれているのですけれど、

初めて会った気がしなかったからです。

「サラナ、今はジェシック様を休ませてあげて」

そうリリレーナは言うと、サラナは頷きます。

それから、二人の女性は仲良く一緒にお話をしているのですけれど、その光景を見ていた私は嫉妬しているのでありました。

(私だってジェシック様と一緒にお話をしたいっ!)

そんな気持ちで一杯になっていたのでございましたが、二人が楽しそうに会話しているのが目に入ってしまうのですけれど、

それが余計に私の心を苦しめていくのであります。

(どうして私じゃなくて、あの泥棒猫なんかと話をするのよ!)

そんな事を思っていますと急に頭痛に襲われてしまいまして、痛みに耐えられずに頭を手で押さえたのですが、

それでも痛みは治まらず、更に酷くなる一方でありました。

(痛いっ!)

そう心の中で叫びながらも我慢をしているのですが、痛みが尋常ではない程に強くなっていきますと遂に私は意識を失くしてしまったのです。

そして、意識が戻った時には診療所に運ばれておりました。

そこで診察を受けてみますと特に異常はないと診断されたので一安心したのですが、

暫くの間は安静にしている様にと言われてしまったので大人しく従っている事にしたのでありました。

あれから数日が経過しても私の体調に変化はなく、相変わらずベッドの上から動けない状態でいたのでしたが、そんなある日の事です。

いつも通り、ベッドで寝ているだけの退屈な日々を過ごしていたある日の出来事なのでありますが、

ふと窓の外を眺めていると誰かが歩いている姿が見えたので、その方向をじっと見ていると見覚えのある姿が目に止まったのです。

それは、何とリリレーナだったのであります。

しかも、彼女は一人ではなく隣には女性が一緒でした。

それも、よく見てみるとその人は私も知っている人物でした。

それは、私の親友であるアリッサだったからです。

二人は手を繋ぎながら仲良さそうに歩いておりましたが、私には信じられない光景だったのです。

だって、あんなに優しくて良い子だったのに、私の親友を裏切って、

その上、その人の恋人を奪った挙句の果てに捨てたのですから許せる事ではありませんし、今でも許すつもりはありません。

そんな二人を睨みつけながら見ていると、隣にいるリリレーナと目が合った気がしたのです。

目が合った瞬間に背筋が凍り付いた様な感覚に陥りましたが、その時はまだ気のせいだと思い込んで気にしない事にしました。

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