旅立ち
第5話 みんなへの挨拶
夜明けから、
離れに入れば、嫁入りの当日まで一部の限られた者としか交流ができず、離れは男子禁制となる。
今回の嫁入りで、一番心を痛めているのは
「
「なぜ
「それは…」
「本来なら私が…」
「何を言っているの? これからは
「えっ?」
鏡越しの
もう
「叔父さまは狩りがお好きで、その辺の草とか平気で食べちゃうちょっと変わったところがあるけれど、すごく優しくて素敵な人よ」
「
「あ…」
「
「そ、そんな私に務まりますでしょうか?」
「大丈夫!
「
さぁ行きましょう! と
今日から引き籠りの生活が始まる。その前に長老や祖父の
一緒に遊んだ友人やご近所のおじちゃん、おばちゃんなど今まで
―― 大丈夫。私は大丈夫。決して泣かない。
「おはようございます」
「おはよう。
「えぇ。お爺さま、ありがとうございます。今日は改めてご挨拶をさせてください」
「お爺さま、叔父さま。今まで大切に育てていただき、本当にありがとうございました。心から感謝しています」
大広間にいる者たちから鼻をすする音が聞こえてくる。
「
「お爺さま…」
「あぁ…
「お爺さま。私…、私立派に努めを果たしてまいります。皆が幸せに暮らせるように。神さまからの恩恵を受けられるように、これからもお爺さまたちが美味しいお酒が造れるように」
「
「お爺さま…」
泣かないと誓ったはずなのに、
「もう、行きなさい。わしが
「
「
広場に設置された舞台のような場所で、村人の行列が出来ていた。一人あたり1分。グループであれば、かけるその人数と時間が割り振られていた。
懐かしい顔ぶれや、神の国に持って行きなされと、様々なものが
「
「ありがとう、お兄さま。みなさんお優しくて…離れるのが寂しいな」
「だよな」
行列の波が落ち着き、桜の花びらが庭にヒラヒラ舞うのを、ボーッと眺めていた二人だったが、二人は気付いていた。まだ
「
「そうですね。昨日は窯の火をいれたばかり…今夜までは火を弱めることなく焚かなければ…。お忙しいのですよ」
「何だよ、あいつ」
「お兄さま」
「何だよ改まって…」
「えへ。」
「気持ち悪いな」
「あのね、これからもおいしいお酒造ってね。私、神さまと一緒に見守ってるから」
「やめてくれ。死んじゃうみたいな言い方するなよ」
「それと…、私がいなくても、
「なんだよそれ」
「えへへ」
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、もうすぐ嫁入りの儀式の時間が近づいていた。
少し遠くから
「そろそろですね」
「そうか…そんな時間か」
とうとう
入口には
みなからの贈り物は一旦離れに届けられたのだ。牛は…残念ではあるが、
「
「叔父さま…」
「用意しておく」
別れの時、そして
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