第2話 神への献上物
「
時刻は夜8時を回った頃だった。外は既に暗く、若い
「開いてるよ」
小屋の中から穏やかで優しい声が聞こえてくる。
「
「あぁ、いつもありがとう」
そう言うと
「お。今日は猪鍋なんて、豪勢だね」
「えぇ、叔父さまが猪を狩ってきたので。
少しはにかみながら料理を取り分ける。
本当は叔父の
「うん、うまい。この味付けは日本酒にも合いそうだね」
「
「そうだね。そういえば、今年の原酒のできはどうなんだい?」
「まぁまぁじゃないかしら? 兄が自慢気に話してましたから」
「
もぐもぐしている
そんな
それは蒼い釉薬をまとった奇麗なぐい飲みだった。海の様に透明感のある透き通ったツヤのある色合い。
「
「これはね。
「本当に綺麗な青ですね。奇麗な水のような海のような色合いで」
「ありがとう。これで
「これを今年の献上品に?」
「うん。でもね…なかなかここまで綺麗な色を出すのは難しいんだ。今夜の窯でうまく出ればいいんだけど」
「きっと大丈夫!
あははは、と
子どものころから憧れの兄のような存在の
「もうすぐ村から、
「えぇ。うちのバカ兄貴も今最後の仕込みに追われているの」
「相変わらず棘のある言い方を…くすっ」
「
「まぁ、仕方ないよ。酒造りは代々長男が守ってきたのだから、
「
「また、その話ですか? もううんざりです」
「
「本当に面白みのない殿方でした。剣道も弓も、薪割すらしたことがないのですよ。そんな殿方は願い下げです!」
「あははは。
そろそろ家に帰らなければならない時刻なのだが、
そんな時、人が走ってくるような音が工房の外から聞こえてきた。
ガラガラっ。バンっ! 扉が物凄い音を立て、勢い良く開いた。
「はぁはぁ…はぁはぁ…」
扉を開けたその人物は肩で息をしている。そうとう全速力で走って来たようだ。
「お、お兄さま?」
「
「はぁはぁ…み…、水」
「
「えっ? ど、どうゆうこと? わざわざ迎えに?」
整った顔立ちの、穏やかな顔をした
「
「そうだ…」
「兄さま?」
「
「…?」
「お前が、
「えっ? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
その頃
「
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