第5話

あれから僕は女性医師と看護師さん2人による簡単な検診を受けた。


僕が電極を外して慌てて飛び込んできてくれた1人目の看護師さんは【阿久津 加奈子あくつ かなこ】さん。

22歳だそうだ。去年看護師学校を卒業したばかりの若手さん。


そして2人目の看護師さんは【冨浦 恵美子とみうら えみこ】さん

こちらは29歳と阿久津さんよりもそこそこ経験を積んだ看護師さんだそうだ。


そして最後に白衣を纏った女性医師の人が【重村 里葎子しげむら りつこ】さん。こちらは少し年が行っていて34歳だそうだ。



いずれも美女と言うにふさわしい人たちで、検診中常にドキドキしてしまう相手だった。


家族から渡された情報によれば今の僕は中学3年生の状態だそうだ。

ということは妹の加奈芽が中学2年、姉の芽衣子姉が高校2年生なのだろう。

そんなことを考えていると声を掛けられる。


「瀬田様、落ち着かれましたか?」


様!?なにそれ!?


「あ、あの・・・普通に呼んでください。たとえば『さん』付けとかそんな感じで・・」


「「「無理です」」」


ひえっ!?口を揃えて言われた!?


「話に聞いた世界であればそれもできるのでしょうけど、この世界では男性はとても希少です。種馬・・・といってしまうと聞こえが悪いのですが、女性だけで子孫を残すことはできませんから」


「もしかして僕の家族がショックを受けてたのって・・・」


「はい。前の世界における瀬田様の家族であれば考えられるのかもしれませんが、

この世界の女性として男性に暴言や暴力を振るうのはありえません。

家族であっても重罪で、禁固20年は当たり前です」


「それじゃあ男性が殺されたりなんかしたら・・・」


「殺したのが女性か男性かでも対応が分かれますが、女性の場合は決まって仮釈放なしの懲役1000年が既に常識です。つまり仮釈放はなく事実上の終身刑です。

加えて、男性に性的な暴力を振るった場合や、男性を殺害した場合はその女性から人権が奪われます。」


「えーと・・・具体的にどんな感じに・・」


「男性に性的な暴力を振るったとしてもとても重く仮釈放なしで懲役100年は下りません。つまりこちらも仮釈放なしで終身刑確定です。加えて男性受刑者とほぼ強制的に性行為させられることになります。

男性の方はそれで1人孕ませれば1年減刑といったような減刑措置が取られています。

女性の方もそれで1人産めば通常は5年ほどの減刑が望めます。

そのため性的暴力を行った女性は最低でも15人は産まないと現実的な釈放には至りません。

1年弱で1人産めるかどうかが基本となるため、15年連続で子供を産む必要がでるのです」


「それじゃあ殺害した場合は・・・」


「当然ですが、子供を産んだからと言っても、15歳から生み続けたとして閉経するのが遅くて50歳前後なので35人・・・双子で考えて見ても70人が限界ですから。

350年減刑できても意味が無いのはわかりますよね?」


無言でうなずく。


「そのため女性が男性を殺害した場合は最早人としての扱いを受けることはありません。今までの事例においては、両腕両足を根元から切り落とされて胃ろうのような器具を取り付けられて、苗床扱いです。

ひたすらに子供を産むための道具として使われて、子供を産めなくなると食い扶持を減らすという事で衰弱死させられると言われています」


ひえぇーーー、そんなの死んだ方がマシなんじゃないか!?

そう思っていると、そんな僕の考えを読み取ったのか追加の情報を伝えてきた。


「そういう女性は死ぬことも許されないので、基本的に最初に全身麻酔で手足を切り落とされると同時に舌も切り落とされます。なので舌を噛み切って自殺を図るという行為すらできません。生殺与奪の全てを奪われた女性は文字通り苗床として使われることになります」


「それじゃあ僕の家族たちは・・・」


「幸いなのはこの世界の彼女たちが犯した罪では無いという事です。そのため彼女たちが裁かれるということはありません。ですが別の世界の彼女たちがやったことは男性に対する明確な悪意の元での暴言や暴力なので当然重い罪に該当してしまうことと、加えて別の世界とは言えどもある意味彼女たちがやったこととも取れるので公になればかなり厳しい立場に立たされるでしょう」


!!!!

慌てて僕はお願いをする


「あの!確かに前の世界のあの人たちには酷いことをされました。でもこの世界のあの人たちがそうとは限りません!だからこのことはこの場だけでの内緒の話にしていただけませんか!?」


看護師さんたちは顔を見合わせて、そして安心したように笑った。


「よかったです。そういってくれて。もし瀬田様が告発を望まれた場合私たちにはその義務が生じますから。そうなれば彼女たちに決して良い未来はないでしょう。

ですがこの場だけの話にしていただけるというのであれば、こちらとしてもその方がいいですから」


「あの・・・もし、お礼とは言えないですけど、何か・・・僕にできることはありませんか?」


「よろしいのですか?いえ、本当はこの後依頼させていただこうと思ったのですが・・」


「え?え、ええ。できる範囲であれば構いませんよ?」


「それでしたら精液検査をさせていただけませんか?」


「精液検査?」


「簡単に言うと男性自身の生殖能力を調べるための検査です。精液検査と称しましたが実際には起ったものの長さが持続時間、また射精量を調べたりもします。

加えて射精されたもの・・・すなわち精子を女性の子宮に近い環境に入れて一体どれくらい生きた状態で維持できるのかなどを調べます。

病院の方で検査ができるので、男性自身が望む場合は検査結果よりも低い形であれば虚偽の報告ができます」


「それくらいのことで良ければいくらでも引き受けますが・・・?」


「ありがとうございます。では早速ですが精液検査の準備をさせていただきますね」




そういって看護師さんたちは準備をしに器具を取りに行った。


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