第2話
「2人とも!なにしてるの!?早く処置を・・・」
苦笑いしていると、さらに女性が駆け込んできた。
見たところ薄手ではあるが、長袖の白衣を着ている。
恐らく女医という物だろうか・・
女性が社会進出をしていく世の中で女性医師もかなり増えてきたものの、
割合的にまだ男性医師が多い世の中だ。
それゆえに初めてみる女医・・
何に興奮しているのか自分でも分からないが、なぜか若干興奮している僕を見て固まる3人・・・
いや、僕も固まっているわけだし4人か・・・
こうしていても埒が明かないので話しかけてみることにする。
「あのー、これってどういう状況なんですか?
なんで病院に・・・・」
「君!意識はどう!?頭が痛くなったりは無い!?」
「え?え?えっと・・・?
えーと、会話できる時点でわかると思いますが、意識はしっかりありますし、
頭も痛くは・・・」
と言いかけたところでズキッと頭が痛む。
それと同時にフラッシュバックのようによみがえる光景。
涎をたらしながら縄を手に持ち狂った目をしながら追いかけてくる女性達・・
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い助けて助けて助けて助けて助けて助けて――
息を切らしながら走り、橋まで逃げるが息が続かず追いかけられて・・
そして捕まるくらいならばと川に飛び込んだあと意識が薄れてなくなっていく光景
「うぐっ!?あ・・・ああああ・・・・・ああああああああ!?」
僕は直前に起こったことを思い出し頭が真っ白になる。
知らない間に大粒の涙を流しながら、頭を抱え込んで叫びをあげる。
「お、落ち着いて!ここはもう大丈夫よ!!」
最初に飛び込んできてくれた看護師さんに抱きしめられる。
女性が怖いと思ったのに女性に抱きしめられて・・
でもなぜか安心してしまう。
ゆっくりと顔を上げて、恐る恐る目を開けると・・・
本気で心配そうな目をした彼女の顔がそこにあった。
あの狂った目をした女性達とは違う・・・
知らない
冷静な思考回路が残っていたならば失礼にあたることを理解できただろうけど、
そんな物が一切残っていなかった僕は思わず、ゆっくりとではあるが抱き着いてしまう。
「うぇ!?え!?な・・・なに!?」
そうして数十秒なのか1分くらいなのか、時間の経過具合が全く分からずに抱きしめていたが、ゆっくりと落ち着いてきて、
同時に自分がとんでもないことをやらかしたことに気づいた僕は、瞬間移動でもするかのようなスピードで離れてベッドの上で動きにくい足を必死に動かし正座。
そして土下座する・・
「す、すいませんでしたーーーー!!!!」
考えてみればあり得ない・・・
いくら錯乱状態にあったとはいえ、見知らぬ女性に抱き着いたのだ。
これは立派なセクハラなのでは!?
たしかハラスメントはやった本人がどういう意図でやったのかなどは関係なく、
やられた側がハラスメントだと認識したらハラスメントだったはずだ!?
「え・・・・えっと・・・・・・・?」
「そ、その。怖くて何が何だか分からなくて・・・
でも、知らない女性に抱き着くなんて普通に考えたら性犯罪レベルですよね!?
ごめんなさい!ゆ・・許してください!!!!」
????????????
完全に困惑顔の看護師さん達と女性医師。
そうしていると再び勢いよく扉が開け放たれて人が入ってくる。
「寛治!・・・・ってあれ?起き上がってる!?」
「お兄ちゃん!・・・って普通に座ってる?」
「寛治!・・・・・・・・・・いや座ってるというより、土下座してるのかしら?」
ふと顔だけ上げてみるとよく見知った顔だ。
母の智子に、妹の加奈芽、そして僕を嫌って大学生になると同時に家を出ていった姉の芽衣子だ。
どうしたものか・・・・と思っていると、怪訝な表情だった芽衣子姉が一転して、視線だけで人を殺しそうな目つきをして看護師達を睨んだ!?
「これは・・どういうことかしら?なぜ寛治が土下座しているのかしら?
まさかこの女たちも何かしたのかしら!?」
「「「ち、違います!!私たちは何も・・・・!!」」」
慌てて叫び返す看護師さん達だが、芽衣子姉の憶測を聞いて妹の加奈芽と母も凄まじい視線を浴びせている。
や、ヤバイ・・・
このままじゃ無実の罪で彼女たちが責められてしまう!!
たしかにこの親や姉妹に逆らうのは怖いけど・・
それでも僕のせいでこの人たちが責められるのは我慢できない!
「ち、違うんだ!
この人たちは僕が勝手に心電図を外したから何かあったんじゃないかって心配してきてくれたんだ!
それで僕を追いかけて来た女の人たちのことを思い出して、怖くなってしまった・・・
でもこの人たちは安心させようとしてくれたんだけど・・・
僕が思わず抱き着いちゃったから、そのことを謝ってただけなんだ!!!」
「「「抱き着いた!?!?!?」」」
僕の説明を聞いていた3人は最初は厳しい目をしながら、しかし事情を聴いて徐々に穏やかになり、しかし最後の言葉で途端に人を殺しそうな目を再度し始めた。
な・・・なぜだ!?僕が睨まれるならわかるが、なぜ彼女たちが睨まれるんだ!?
そうして僕は再び混乱してしまうのであった。
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