「やっぱりラブコメは嫌いだ」

GARAHIくホ心京ハeu(がらひくほみ

プロローグ

どうも高校三年生の山田幸輝です。処女作が完結して新作の企画書を担当に見せにやってきたのだが。

「次の新作はラブコメを書いてもらいまーす」

目の前に偉そうに足を組みながらタバコを吸っている俺の担当編集者は、俺の嫌いな単語を口から吐いた。

「え? ラララブコメ?」

久しぶりに嫌いな単語を吐くと、噛んでしまうものだな。

「今、ラブコメの人気が急上昇してるんですよー」

なんでこう女って人と話すときに爪をいじりながらじゃないと話せないのだろうか。

「俺、ラブコメ嫌いなんですけど……」

机に置いた新作の異世界モノ作品の企画をじっと見つめる。

「嫌いなら、好きになってくださーい」

……は? 何言ってんのこの人?

「異世界バトルものじゃダメですか?」

いつも見たく、引き攣った笑顔でお願いする。

「ダメです。それに、異世界ものは私好きじゃないですし」

この人なんで俺の担当してるの? 俺今まで異世界バトルものしか書いてないよ?

「ラブコメ書けな……」

担当は俺の声を遮り、スマホをいじりながらミーティングの終了を告げる。

「まぁーとりあえず、恋愛してくださーい」

担当はタバコを吸い終わると、すぐさまどっかに行ってしまった。

「恋愛とかしねーよ死ねよ」

ぼそっと呟いて、少しストレスを減らす。


* * *


蝉が泣き叫ぶ真夏。エアコンが効いた職員室で国語教師の吉田拓海は、俺から没収したエロ本を右手に持ち、ぶらぶらさせていた。

「どんだけエロ本好きなんだよ。この時代エロ本読むやつなんかあんまいないぞ?」

吉田先生は俺から没収したエロ本を読みながら、俺に説教を始める。

「しかも、毎回マニアックな性癖な本ばかり……」

吉田先生とは少し仲がいいと思っているので、俺は先生に過去話を少しする。

「流石に小三からシコってたら、普通のエロじゃ抜けませんよ」

どうだ、すごいだろ的な感じで少し自慢げに話す。

「山田、あんまり人前でそういうこと話すなよ」

そういうと吉田先生はため息を吐きながらも、エロ本を返してくれた。

少しの静寂が訪れたあと、吉田先生は俺の方に椅子をくるりと回転させる。

「聞いたぞ、新作の件」

吉田先生と俺の担当は仲が良いらしく、俺の新作の件は担当から聞いたのだろう。

「恋愛モノが書けないらしな」

『恋愛』俺が世界で二番目に嫌いな単語である。ちなみに一番は『優しい人』だ。

「恋愛は嫌いです」

思わず明後日の方を向いてしまった。

「恋愛はいいもんだぞ」

吉田先生は腕を組みうんうんと頷く。

「先生って奥さんとか彼女さんいるんですか?」

「バツイチだけどな」

うん、なんかすみません。

「きっと恋愛なんて単語があるだけで、意味はない。

男は可愛い人が好きなんじゃなくて、可愛い人の体が好きなだけ。どうせ男はやり目で付き合っているだけ。女は承認欲求を満たすために男と付き合っているだけ」

「ひねくれてんなー」

声に出てた……。

「実は、山田の担当から連絡があってな。『恋愛をさせてあげて』と」

あのクソアマが。と苛立ちを見せることなく、心で叫ぶ。

「ちょうど、山田にピッタリな部活があるんだ」

そういうと、180㎝ある吉田先生は席を立ち、ついてこいと手招きする。

何も分からないが、先生の後をついて行くことにした。

「お前は恋愛が嫌いと言っていたが、どうして嫌いなんだ?」

吉田先生は振り返ることなく、歩いている。その後ろをついていく俺は吉田先生のデカイ背中を向いて話す。

「恋愛が嫌いの前に、女が嫌いなんですよ。三次元の」

吉田先生は少し微笑みながら、優しい声で話す。

「どうして女が嫌いなんだ?」

「女という生き物はひどく残酷な生き物で、親切をしたら仇で返してくるんです」

三次元の女はそういう生き物なんだ。

「それは、山田が本当に素敵な女性と出会ったことがないからだろ」

さも、先生は素敵な女性と出会ったみたいな言い方だな。

そうこうしているうちに、先生の足が止まり、廊下の端っこにある教室にたどり着いた。

「ここだ」

俺も足を止め、教室のドアの前に立つ。

『恋愛相談部』と書かれた紙がドアに貼ってあり、俺は首を傾げていると、吉田先生は、教室のドアを開ける。

教室に入ると、中に机と椅子が少し置いてあるだけで、これといった者は無くただ机が少ない教室って感じだった。

だが、その少ない机の上にiPadが置いてあり、そのiPadにペンで何かを描いている少女がいた。

その少女は長い髪を耳に掛け、汗を拭きながらiPadに向かっている。

認めたくないが、汗をかいている美少女いう俺好みの性癖に刺さったことは誰にも言わないでおこう。

「あの、そちらの私のことを意味深な目でみている、気持ち悪い有名人は何しにきたんですか?」

こちらに気づいた少女はペンを机に置き、つけていた手袋を外す。

こっちを見る少女の瞳はとても冷めていて、真夏なのに少し寒さを感じてしまう。初めて美しいと思える顔立ちで、裏でまな板と呼ばれていそうな少女は黒髪ロングがとても似合っている。

「こちらは冬咲夜雨(ふゆさき よあ)だ、でこっちが……」

「知ってます」

予想だにしない冬咲さんの言葉に少し戸惑ってしまった。

「……え? てか、俺って有名なの?」

ふと、少し前の言葉が気になってしまった。

「有名よ。女子にキツく当たって、平然と下ネタを叫ぶ変態。ってね」

「お褒めに預かり光栄です」

なぜか、この少女は今までの女達とは違う気がする。そのせいか、この少女と会話している時に苛立ちは感じない。

「まぁ、二人は同じ問題を抱えてる訳だし、これからは仲良くね」

「同じ問題?」

俺は一度、冬咲の方を見てから吉田先生の顔に視線を送る。

「そうだ。冬咲は新人の漫画家で、山田と同じ恋愛モノが描けないんだ」

なんとなく分かる気がする。

「あなた今、失礼なこと考えたでしょ?」

心が読まれた⁉︎

「まぁ。て事でここでいっぱ恋愛を勉強してください! あ、あと、その内もう一人新入部員が入る予定だから、よろしく」

話が終わると、吉田先生は教室に背を向け、じゃあなとてを振って帰っていった。

「ま、まじか……」

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「やっぱりラブコメは嫌いだ」 GARAHIくホ心京ハeu(がらひくほみ @such

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